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序章 ある魔法少女の記録

(ローファンタジーは)初投稿です。

『ただいま当地区に災獣警報が発令されました。魔法少女の指示に従い、落ち着いて避難してください』


 してください――


 してください――


 意図的な不協和音(サイレン)と共に、真夜中の街中へ避難勧告の放送がやまびこのように何度もこだまする。


「こわいようお姉ちゃん……」


「大丈夫、ここで静かにしていればきっと助けが来るから……」


 軒先の塀の陰に身を潜める幼い姉弟は、息を殺して『それ』に見つからないようやり過ごそうとしていた。


 ズシン――


 ズシン――


 大地が一定のリズムで揺れ響く。

 真っ黒で民家より大きな影が、ゆっくりと姉弟の隠れる塀の後ろを過ぎて行く。



 ――災獣



 人を食べる異形の化け物。


 姉弟のような普通の人間にとっては、ただ逃げ隠れることしかできない。


 もし見つかってしまえば――




「おぉーい! 助けに来たよー!!!」


「……!」


 女の子の声だ。魔法少女(・・・・)が助けが来たんだ。

 姉は弟の手を引いて、声のする方へと駆けてゆく。



「助けに来たよー!」




 十字路を曲がった先には、洞穴があった。

 続いているはずの道路は途切れ、道は丸い暗闇へと続いている。

 助けに来たとの声は、その洞穴の奥から聞こえてくるのであった。


 いや、違う。これは洞穴じゃなくて――




「たすケに来たヨ」




 ――大きな大きな、開かれた口だった。



 それに気づいたのと同時だった。

 アスファルトに埋まっていた下顎が舗装を破って『口』は閉じられようとしていた。


 人間をおびき寄せて食らうために、人間の声を模倣する『災獣』。


 迫る乱杭歯を前に、姉は――


「お姉ちゃんっ……!」


「リョウタっ……走って――!!」


 弟を少しでも遠くへ突き飛ばす事で精一杯であった。


 自分を犠牲にしてでも、どうか弟だけは。


 もう間に合わない。このまま自分は怪物に咀嚼され、飲み込まれてしまうのだろう。


 姉はすぐそこまで迫る死に備え、瞼をぎゅっと瞑った。












「させないよ」









「……?」




 しかし、いつまで待っても姉の身には何も起こらなかった。恐る恐る瞼を開く。


 そこには星の意匠の施された大きな盾が口を押し返すように彼女を守っていたのであった。


「たスケニき、きき、ぎぎぎぎぎ」




 バツンッ――


 どこからか鈍い音が聞こえた。

 すると『口』は喉の奥から奇声を発し、次の瞬間には黒い塵となって跡形もなく消えていったのであった。



「大丈夫? 頑張ったね、弟くんも無事だよ」


 夜空より純白の少女が舞い降りる。

 星のように煌めくその少女は、腰の抜けた姉へと手を差し伸べた。


「あ、貴女は……」


 彼女の姿は、テレビで見たことがある。


 彼女はどんな災獣(バケモノ)も倒してしまうという、最強の魔法少女――


「わたしは〝薄明の聖騎士(アルバ)〟! 魔法少女(わたしたち)が来たからにはもう大丈夫だからね!」




 ――魔法少女


 それは、人類にとって災獣に唯一対抗可能な戦力の総称。

 災獣は同じ災獣の力か、魔法少女の魔法でなければ倒せない。


 故に無力な人類は魔法少女の力に頼らざるを得ない。


  しかし、魔法少女とて人だ。

 人として悩み、人として苦しみ、人として死ぬ(・・)


 これは、そんなとある魔法少女たちに起こった出来事を綴った記録である。





二部構成のシリーズモノになる予定。みんな大好きTS要素は第二部から……

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― 新着の感想 ―
[良い点] まず一言!!  アルバちゃん来たァァァー!!!!  へいへいこれからの事が楽しみだぜぇ!! [気になる点] 楽しみだとは言ったけど、これからあぁなるんですよね(´・ω・`)  なんか………
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