表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
市民課葬祭係  作者: JUN
8/26

遺産(1)揉める遺族たち

 通夜が行われ、枕教をあげた僧侶が帰って行くと、通夜振る舞いの寿司桶を運んで来た契約している仕出し屋「おても」の主人を通す。

 遺族はギスギスとした雰囲気で、搬入に立ち会っているだけでもその空気に落ち着かなくなる。

 そして寿司桶を遺族控え室に運び終え、ビールを並べ、穂高と大場はそそくさと廊下に逃げ出して事務所に入った。

「ありゃあ、揉めそうだなあ」

 おてもの主人、表田がつるりと頭を撫でる。

「嫌だなあ。せめて故人が焼かれるまでは、悲しんで送ってくれればいいのに」

 穂高が言うと、表田は笑って、

「足立君は、ピュアってやつだね」

と言った。

 それに向里は、冷笑を浮かべた。

「現実を知らないだけですよ」

「あ、酷い」

 穂高が口を尖らせて文句を言った時、遺族控え室の方から大きな音がして、皆飛び上がった。

「うわ、早速おいでなすった!」

 大場がウキウキとして廊下に飛び出して行くと、

「何!?刃傷沙汰は困るわよ!定時で帰れなくなっちゃうじゃない!」

と言いながら川口がうんざりとした顔で続く。

「ええっ。そんな場合じゃないでしょ?」

 穂高も言いながら後を追い、

「面倒はごめんだ」

と言いながら向里も嘆息混じりに廊下に出る。

 騒ぎの元は、今しがた話題になっていた、西沢家の遺族控え室だった。

「それだけしか残ってないなんておかしいだろ!使い込んだんじゃねえのか!?」

「介護を押し付けておいてよく言う!その分を遺産相続で多く欲しいくらいだよ!」

 ギャアギャアと怒鳴り合い、今にも殴ろうとする息子2人を、各々の妻が止めていた。

「ちょっと、落ち着いて下さい」

 なだめようと割って入り、片方が振り上げている重い灰皿を取り上げる。

「お前の所、経営が苦しくて給料がかなり下がったって聞いてるぞ」

「そっちこそ、投資で損を出したんだってな!かなり!親父からこっそりと通帳を貰ってるんじゃねえのかよ!?」

 それでお互いを睨み、掴みかかろうとせんばかりに怒鳴り合う。

「落ち着きましょう、ね?」

 大場が割って入るが、

「うるさいんだよ、おばさんは黙っててくれ!」

「関係ないのはすっこんでてくれよな、おばさん!」

と言われ、

「私はオオバ!おばさんじゃない!」

と大場は怒鳴り返す。

 そんな揉める親族達を穂高と向里と倉持はどうにか引き離し、川口は大場をなだめる。

「ああ、もう嫌だ……」

 穂高は嘆息した。




 

お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ