私は聖女じゃありません!![短編]
お久しぶりです。初めまして。風雲です。せっかく書いたので、載せてみました。サクサク読めるをモットーに書きました。初めての形式なので、矛盾があったらごめんなさい。
ある日。
異世界に召喚された。
意味がわからん。
は?聖女様?
私が?
んなわけあるか!!
は?ステータス?何ソレ?
念じるの?
え?何これ・・・。
職業?薬術魔導師・・・?
なんじゃそりゃ?
混乱している間に、何故か私は暫定で『聖女様』ってのにさせられた。
なんか、この国には奇怪な病があってそれを治せる?のが私だけだからだと。
いや、なんで自分を異世界拉致した連中に協力せなならんの?と関西人でもないのに関西弁モドキでツッコミ入れちゃったよ。
ただなー。
どこに行こうと文化的に生きるには金が掛かる。
それに、実際苦しんでる人見ると、まぁ放っておけないのが人情だよね。
だから、助けました。
奇怪な病。
それにかかった人間は、段々と食欲がなくなり、夜眠らなくなり、やがて太陽が駄目になり、発狂、死亡するらしい。
なんか、吸血鬼みたいだなー、と思ってたら、案の定。
吸血王の呪いによる病らしい。
なんでも、初代の王様が勇者だったらしく、その吸血王をやっつけた御礼にこの辺の土地を貰って王様になったらしい。
でも、この辺は元々その吸血王の土地だったから、吸血王の魔力に染まってて、それで呪われた。
あったりまえだろ!!
なんで別の土地貰わなかったんだ初代の王様・・・。
しかもこの病、ある限られた人間しかかからない。
それは、美しい乙女。
だいたい、14〜18歳の未婚の美女、美少女ばっかりがかかる。
なんつーテンプレ。
んで、今の王様の愛娘、つまり王女様が14歳になった途端病にかかったので慌てて私を召喚したらしい。
ただ、驚いた事に、今の王様になって10年。一度も聖女を召喚してなかったらしい。
おいおいおい!
今までは放置しといて、自分とこの娘ちゃんがかかったからって今更私を招んだら、絶対民衆が黙ってないでしょ。
案の定、王家が私事で聖女の召喚をした事は民衆の支持をごそっと低下させた。ってかマイナスまでエグれた。
今まで大した対策もなく、娘が、姉が、妹が、婚約者が、病にかかり死んでいった多くの家が、散々聖女の召喚や、聖女に代わる人材を探してくれと頼んでいたにも関わらず!
その筆頭が侯爵家当主。
おいおいおいおい!
侯爵家からも頼まれてたのにも関わらず、今までテキトーに流してたわけ?!
そのせいで、侯爵の娘は発狂して苦しんで死んだ。
マジ王家○ソ!!
これはガチ。
というわけで、私は聖女という強権を行使!
幸い?王家の姫はあの親にしてこの子アリと言わしめるク○高ビーヒステリックのイヤーな奴だったので、進行度が低めな今、優先順位は底辺(私の中で)
最優先は現在一番重度な人達。当たり前である!
王家の姫がギャーギャー言ってるらしいが、私は最初の一回以外会ってないから直接は聞いてないし、姫の周りは姫の八つ当たりに負けない人員を私の強権と宰相さんの推薦で付けておいたから大丈夫。姫も身体“は”弱ってるしね。笑。
そうそう。さらっと強権強権言ってますが、これも一筋縄ではなかった。
私が聖女の強権発動出来るのは、つまり慰謝料&報酬の一部の代わり。
だって病の人の命を確実に救えるんだよ?私。
しかも拉致されたわけで。
普通、手を貸すわけない。
そこでコレ。
莫大な慰謝料と報酬を請求した。
国家予算の半分くらい。
それに私、薬術魔導師って言ったよね?
実は、かなり強いんです(ドヤ)
この国を焦土に出来るくらい。いや、しないけど。
って事で、ダブルの意味で滅びたくないなら、治療に関する裁量権ちょーだい。
と言ったらくれた。宰相さんが。
王サマは生意気だなんだ言ってたが、宰相さんが口八丁で黙らせてた。
宰相さんコワイけどマジイケオジ!!
ってなわけで、病にかかった人達が収容されてる治療院にやって来ました。
ここにいるのは重度の患者が主で、発狂しかけてる人が多数。ほぼ発狂してる人も少し。
こういう治療院が症状別にあるらしい。
こりゃウカウカしてられません!
1人1人やってたんじゃ埒があかないので、大量の治療薬を魔法で広範囲に散布。
この治療薬も私の魔力で生成した魔法薬。
ただ、一気には治らないのがこの病の怖いとこ。
重度の患者には、2時間置きの薬の散布が必須で、毎日続けて全快に5日は掛かる。
私は寝る間も惜しんで薬を生成、散布と繰り返した。
もちろん、治療院の人達も手伝ってくれた。
これが普通のはずなのに、あのク○親娘見たあとだから、マジ天使に見えた!
そのおかげで、国の大半の患者は約1ヶ月半で元の生活に戻れた。
一回全快した患者は二回目にかかるまで何年か掛かるらしく、その頃には乙女ではなくなる。つまり、二度とかからないって事。
やったね!
まぁ、小さい女の子はまだまだいるからイタチごっこになりそうだが。
重症者のとこから順番に4つの治療院を同時進行で周って、終わったら1日休んでまた次ってやってったので、皆が治った頃には私は疲労でボロボロになってた。
治療院の人達もいたけど、薬は私が作らないといけないし、なんせ人数が多かったから。
でもまぁ後は、次の患者が出るまでのんびりさせて貰おう。
あ?姫?
あー、まぁ、一応治したよ。発狂ギリギリで。
ただ、私にとっても良くしてくれた私の侍女を何回も殴ってくれたので、とっておきのおまじないをしておきました♪
え?何したのかって?
姫ご自慢のかわゆーい顔を、ボッコボコのシッワシワにしました!薬で!(とてもイイ笑顔)
今まで姫が虐めて、ノイローゼや中には自殺しちゃった子もいたらしいから、殺されないだけマシでしょ??
私ってやっさしー♪
あ、もちろん私が犯人とはわからないようにしました。イーヒッヒッヒッヒ!
おかげで姫は人に会うことが出来なくなり、父である王様もあまりの醜さに辺境の寂れた別荘に幽閉する事にしたそうです。
あらら。
都合が悪くなると見捨てるのねー。
おーこわ!
って事で、病の根本治癒をしていきます!
と言っても、100年以上出来なかったものが早々出来るわけもなく、とりあえず私が一日一回主神殿で祈りを捧げてこの土地を浄化していく事に。
私、聖女じゃないんだけどなー。
まぁ、効果があるならやるけど。
あー。めんどい。
そんな日が続き半年が経った頃、事件が起きた。
「は?本物の聖女、ですか?」
「左様。つまり貴様は用済みだ!」
とドヤ顔したのは、何を隠そう、あの私を召喚した○ソ王サマ。
その後ろにはニヤニヤ笑ってる王サマそっくりの第二王子と王サマ派の大臣やらなんやら。
おいおい。
今、あんたの嫁、つまり王妃様とお茶会中なんだが。
ちらりと横目で見た王妃様は、血管切れそうな顔してマス。
ひぇ!
「・・・あなた。どういうおつもり?」
王妃様の怒りを抑え込んだ声。
それに気付かないバカ王。
「どうもこうもない!こんな生意気で王である儂の言う事を聞かず、儂の娘を馬鹿にし、さらに莫大な慰謝料など請求してくる偽聖女など、用済みとなった今、即刻国外追放にしてくれる!処刑されないだけ有難いと思え!」
ほほう?
「・・・つまり、我が国を助けて下さった大恩人を偽物呼ばわりして、更に国外追放にしようと?」
ここで漸く王サマ一派は王妃様が自分達の味方じゃないと気付いた。
「お、王妃よ。何故怒っているのだ?その女は偽物だぞ?」
「偽物って言うか、私、薬術魔導師ですから。厳密に言うと聖女ではないですが、聖女にしたのはそっちでしょ?」
「な、なんと生意気な女だ!我が王に向かってそのような!陛下!此奴を即刻処刑に!」
「ふざけるのも大概になさいませ!彼女がいなければ我が国は滅んでいたかもしれないのですよ!」
「王妃様」
「だから、我が国の危機を救った功績を加味して、国外追放で済ませてやると言っておる」
「・・・お話しになりませんわ。わたくし、あなたに愛想が尽きました。国に帰らせて頂きます」
「は?」
王妃様、王サマ達が驚いてる間に私を促して退室。
私と王妃様の荷物は王妃様直属の侍女達に任せて、とっとと王妃様の出身国、隣の隣の国へ出立。
ちなみに、王妃様が産んだ第一王子、つまり王太子と宰相さんも一緒。
え?!
だ、大丈夫なの?!
「私はもう王太子ではないし、あの国の王族でもない。ちゃんと廃嫡の手続きをしてきた」
とニコニコの元・王太子。
「私も、引き継ぎ手続きをして、宰相の座を降りまして、今は王妃様の秘書文官です」
と、こっちもニコニコの元・宰相さん。
「フロランド?」
「おや。もう王妃様ではございませんでしたな。これは失礼致しました」
「そうよ。間違えないで頂戴。ふふ」
とうふふ、あははと笑い合う3人に、緊張していた私も、肩の力が抜けた。
その後はもう、元・王妃様の独壇場。
元の国に対して、私がこの世界に召喚された後の面倒を見る義務を放棄した事に対する慰謝料、私がこの半年どれだけ元の国の為に貢献したかに対する報酬、その他諸々を、現宰相と交渉の上、もぎ取ってしまわれました。
それに、私の国籍も作って下さいました。
なんと、あのバカ王、私に国籍を作ってくれてなくて、しかもほとんど最初から国外追放にするつもりだったらしい。
おいおいおい!
そうなったら私は、街にも入れず、まともに仕事も出来ず、のたれ死んでた。
知ってはいたが、本当にク○だな!!!!
「久しぶりに本気で殺意が湧いたわ」
とは、元・王妃様の談。
こえーーーーー!!!
「ミヤコ。そろそろ私達を名前で呼んで頂戴。寂しいわ」
「あー、あ・・・アンネリーゼ様」
「うふふ。嬉しいわ」
「ジークネイト様」
「はは。照れるね」
「フロランド様」
「私に様は不要ですよ、ミヤコ殿」
ニコニコと嬉しそうにされて照れていたら、アンネリーゼ様がプチ爆弾を落とした。
「ついでに、いつもアルケンスをなんて呼んでるか知りたいわ」
「あ!俺も知りたい!」
「ジークネイト様。俺になっていますよ?ですが、私も気になります」
アルケンスとは、私の旦那様の事である。
私タジタジ。
「妻を困らせるのはやめて下さい。御三方」
「あら、御本人の登場だわ」
「アルケンスはミヤコをなんて呼んでるんだ?」
「私ですか?普通にミヤコと」
「ミヤコは?」
「あ、えと、あ、アルスって呼んでますぅ」
私真っ赤。
皆は、そんな私を見てほのぼの笑ってる。
あー、恥ずかしかったけど、やっぱり平穏が一番だよね!
その後、元の国はと言うと、多大な貢献をした聖女と、国民に寄り添ってくれていた王妃と、国を豊かにしてくれていた王太子と宰相を追い出したとしてクーデターが起こり、王家の人間は国を出た元・王妃、王太子以外の人間は全員処刑された。
そして、元の国に勇者の子孫がいなくなった事で、あの奇怪な病にかかる人間はいなくなったそうな。
いやー!良かった良かった!
ちなみに件の聖女は、普通に神殿勤めしてただけの綺麗な女性の神官さんで、勝手に王サマ一派の人達が目を付けてただけで、なーんにも知らなかったらしい。
なんじゃそりゃ!!
お読み頂きありがとうございました!