表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/75

69.そんなことないもん

「どうされましたの?」

「寝てるなら寝てるでちょっとな」


 コアラの前にしゃがみ込んでいたフェリシアが顔だけをこちに向けて訪ねて来る。

 いい機会だ。

 起きぬなら、やってしまうぞ。このコアラ。

 目を閉じ、水の精霊に呼び掛ける。

 

「総士の名において依頼する。水の精霊よ。この者の身を清めよ。ウォッシャー」


 コアラが水の膜に包まれ、綺麗に洗い流されて行く。

 お、おお。

 くすんだ灰色が少し明るくなった気がする。

 水の膜が消え、コアラの腹の上にバラバラになったユーカリの葉が乗っていた。


「結構な量を溜め込んでやがったな。こいつ」

「葉っぱが粉々になっちゃってます」

「ん、あ、そうだ」


 葉っぱを小皿に集め、布を被せてキッチン脇に保管しておく。

 後ですり鉢ですり潰して抹茶のようにすれば、葉ごと全部食べられるだろ。

 起きた時、懐にユーカリが無くて騒ぎそうだけど。それはそれだ。

 

「変な生物さんに葉っぱをお持ちになりますか?」

「夕飯前にでも取りに行こう。ユーカリが無くて半狂乱になってしまったら困るしさ」


 ユーカリが無いとアリシアの診断をするどころじゃない、とかになりそうで怖い。

 不安が頭をよぎる俺とは対称的にフェリシアときたら、指先でコアラの腹をツンツンして、指先がどこまで沈み込むのか試して嬉しそうにほほ笑んでいる。


「モニカとベルンハルトはどこに行ったんだろ」

「……今は二人っきり、ですの?」

「そうなるな」

「でしたら」


 ぴょーんと膝を伸ばし、俺の懐に飛び込んでくるフェリシア。

 勢いが強すぎて転びそうになってしまった。


「コアラの毛皮で遊んでたんじゃなかったのか」

「変な生物さんも魅力的ですが、ソウシお兄さまはもっとなんですもの」


 フェリシアはすりすりーと俺のお腹に頬をすりつけてくる。

 彼女は確か俺の三つか四つ下なんだけど、保護欲を誘う妹みたいな子なんだ。

 俺には子供がいないけど、小さな子ってこんな感じで微笑ましく思えるのかなあ。


「ソウシ兄さま」

「ん?」

「モニカと毎日一緒に寝ているんですの?」

「うん」

「可愛くて素敵な兄さまと毎日一緒なんて……シアの目的が終わったら……絶対兄さまと一緒におやすみするんだから……」

「目的って」

聖女(アリシア)様をお目覚めに……酷いです! 秘密って言ったじゃないですかあ」

「大丈夫。聞いてない、聞いてないから」

「えへへ」


 フェリシアの頭を撫で、犬にやるように「よーしよーし」ってやったら誤魔化されてくれた。

 直接聞かずとも、彼女の目的なんて既に察していたけどね。ふふん。

 フェリシアは俺の願いを聞いてくれて聖女になってくれた。だけど彼女は、聖女たらんとする意識が希薄だ。むしろ、自分は臨時で聖女をやってますと言った感じに見える。

 彼女が聖女になったのは、彼女曰く「聖女パワー」を使ってアリシア復活の手がかりを探すため。

 聖女の社会的地位はかなり高い。上位貴族にも匹敵するほどなのだ。王さえも神官長と聖女には一目を置いている。

 国民からの支持は絶大だし。

 俺も聖女をやっていたから、どれだけ聖女が国民から慕われているのかを体感している。

 そんなわけで、聖女は情報を集めることに適しているんだ。

 ……といっても、顔が売れまくるわけで……どこに行っても聖女という役柄を演じなきゃならない。

 聖女に使命感を持ってなきゃ続けることが苦痛になって来ると思う。

 噂に聞く限りだけど、アリシアは聖女が天職と言えるほど聖女然とした少女とのこと。

 フェリシアの最終的な目的は、アリシアを目覚めさせ彼女を聖女に復帰させることで間違いない。

 その後、自分は引退しアリシアの侍女に戻りたいってことじゃないかな。

 

「二人が戻ってこないな」

「じゃあ、もっと撫でてくださいー」


 じゃあって何だよ。

 フェリシアに尻尾があったら、これでもかと振っている姿が想像できる。

 再び手を伸ばし、彼女の髪の毛を撫でていたら、「んー」と首を伸ばしたフェリシアの唇に指先が触れてしまう。

 

「ん」

 

 かぷっとフェリシアが小さな口で指先を挟む。

 ガッシャーン――!

 やれやれと指を離そうとした時、とんでもない音が響き渡る。

 見ると、入り口の扉の前にモニカが立っていて、何か大きな物を落としてしまったようだった。

 何だろうあれ、金属のパイプ? や板が床に散乱している。


「あら、モニカじゃない」


 俺に張り付いたままフェリシアが得意気に呟く。

 

「な、な、ソウシ様。これは?」


 怖い、怖い。目線が怖い。

 目線だけで凍り付きそうだよ。

 

「誤魔化すためにだな」

「何を隠されているのです。お二人でここで一体何を」


 や、やべえ。言い方をミスった。

 モニカが両手をギュッと握りしめ、背伸びして眉間に皺が行きそうなほど眉をひそめているじゃないか。


「ちょ、ちょっと、いいかな」

「ソウシ兄さまー」


 フェリシアを引きはがしたことで、彼女から抗議の声があがる。

 

 <しばらくお待ちください>

 

「……というわけなんだよ」

「そうでしたか。単純なフェリシアらしいです。ですが、わたしにはして下さらないのに……」

「モニカも何か誤魔化されたいの?」

「そ、そうではありませんが……」

「シアは『褒めてー』って来るからさ、余程撫でられるのが好きなのかと思って。ほんと子供だよなあ」

「そ、そうでしょうか」

「いや、でも、撫でられると心地よくなって幸せな気分になるのは分かる」

「ソウシ様も撫でて欲しいのですか?」

「そ、そんなことないもん!」

「か、可愛いです……」


 し、しまった。

 フェリシアの真似をして気恥ずかしい気持ちを誤魔化そうとしたが、裏目に出た。

 

「え、ええっと。さっき持っていた金属のパイプやら板は何に使うものなの?」

「ベルンハルト様がお持ちになってくださったんです。組み合わせれば、家具なりに使えるからと」

「なるほど。彼の差し入れか。それで、ベルンハルトはどこに?」

聖女(アリシア)様とソウシ様のベッドを作ってくださるとおっしゃってましたので、木材を取りに行かれているのではないでしょうか」

「そ、そいつはとてもありがたいけど、ほら、モニカ。昨日の襲撃で」

「そうでした!」


 お互いに顔を見合わせて口元に手を当てる。

 木材はところどころ酸で焼けているだろうし、地面には蟻とアリクイもどきが転がったままだ。


「シア。コアラとアリシアの様子を見ていてくれ。ちょっと、掃除に行ってくる」


 フェリシアを屋敷に残し、モニカと共に現場に向かう。

 モニカも連れて行くのは、ほら、木材とか持ち上げるのに彼女の力を借りたいからだよ。

 俺じゃあ、持ち上がらないしさ。

 

 ◇◇◇

 

 現場に行くと、ベルンハルトがお片付けをしている真っ最中だった。


「ごめん、ベルンハルト。昨日、こいつらが地中から出て来てさ」

「そうでしたか。一体何事かと思いましたぞ。ご無事で何よりです」

「コアラと協力して撃退したんだ。夜中のことだったから、そのまま寝ちゃってさ」

「なるほど。して、ソウシ殿。タームの死骸はそのまま捨てるに勿体ないですぞ」

「ターム?」

「こやつらです」


 ベルンハルトのゴツゴツした手から伸びる鋭い爪が、蟻を指し示す。

 蟻はタームという名称だったのか。

新作はじめました。ぷにぷにスライムと錬金術屋のほのぼのしたものになります。

ぜひぜひチラ見していってください!(リンクは画面下にあります)


・タイトル

錬金術屋の魔改造スライムは最強らしいですよ~異世界で拾ったJKの現代知識と超レア素材で、底辺からお店を立て直しちゃいます


・あらすじ

ぷにぷに可愛いスライムでつええしたり、ヒロインと100均などの商品を参考に便利アイテムを開発して売ったりするのんびりしたお話しです。


※リンクは画面下にあります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こちらも間もなく完結となります。

ぜひぜひチラ見していってください!

・タイトル

最強ハウジングアプリで快適異世界生活

・あらすじ

異世界の戦場に転移してしまった主人公がど真ん中にハウジングアプリというチートを使って誰も侵入できない無敵の家を作って戦争を止めたり、村作りをしていくお話しです。

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ