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40.二人でひとりー

「モニカ、どうするこれ……」

「ソウシ様にお任せいたします」


 そう言いつつも、モニカは脱力した様子で苦笑いを浮かべていた。

 俺も彼女と同じで、さっきまで戦うぞおおと熱くなっていた気持ちが急速にしぼみどうしたもんかと後ろ頭をポリポリするほどだ。

 彼女と同じように微妙な表情をしながら。

 

 奥にいたのはモニカの探知通りグリフォンだった。カエルを盗み取ったふてえ野郎で間違いない。

 奴は俺たちを迎撃しに外へ出て来なかった。いや、来れなかったというのが正確なところだ。

 グリフォンの後ろには奴のサイズを10分の一ほどにした小柄なグリフォン二体がカエルをもしゃもしゃしていた。

 きっとあれはあのグリフォンの子供だろう。

 親グリフォンは後ろの子供たちを護るように前に出てこちらに向けグルルルルと威嚇するだけで、何もしてこようとはしない。

 

「よっぽど後ろの子供たちが大事なんだな、あいつ」

「はい。そう見えます。外に出て、空中からわたしたちに襲い掛かれば優位に戦えたでしょうに」

「それくらいの頭脳は持ち合わせているよな。グリフォンの奴は」

「はい。ですが、少し判断力が不味かったと言わざるを得ないでしょう」

「そうだな」


 モニカの手厳しい指摘に確かに尤もだと俺も同意する。

 奴は俺たちがここを目指していたことに気が付いていた。

 最善は俺たちが氷の上を移動している間……狙うなら木の枝から崖の棚までに登っている時が一番だ。

 狙いすまし、空から強襲する。そこが最大にして唯一のチャンスであろう。

 だが、グリフォンはそうしなかった。

 

「わたしは嫌いじゃありません。このグリフォンの考えは」


 グリフォンは万が一を考えたんだ。

 こちらは二人。

 自分が急襲している間に俺かモニカが巣に入り、中の子供たちをやっちまうことを。

 愚直だと思う。

 こんな洞穴の中で子供を背にしてまともに戦えるわけがない。

 だけど、こいつは自分の知らないうちに子供がどうにかされるなら、子供の傍にいることを選んだ。

 

「そうだな。俺もだ」

 

 お互いに頷き合い、しゃあないなと首を傾げる。


「じゃあな。今度俺の獲物をとったらたたじゃあおかないからな」


 くるりとグリフォンから背を向け、モニカと並んで洞穴を後にする。

 隙だらけで背を向けたというのに、思った通りグリフォンはこちらに手を出して来ようとはしなかった。

 

 棚の上まで戻ったところでモニカに顔を向ける。

 

「獲物を探しに行かないとだな」

「風の精霊魔法で探索いたしますか?」

「魔力はどれくらい残っている?」

「まだまだ大丈夫です。ソウシ様も結構な魔力をお使いになられたのでは?」

「いや、そんなことはないさ。ヒールの連射に比べれば大したことはないよ」

「そうでしたか。さすがはソウシ様ですね」


 モニカが彼女らしくない満面の笑みで褒めてくれたんだけど、実のところヒールに消費する魔力は尋常じゃないんだよな。

 さっき、ここに来るまで「アイスフォーメーション」を使ったけど、あれ、ヒール一発分の魔力も使っていない。

 俺がどれだけヒールに魔力を注ぎ込まないといけないのか分かってもらえただろうか?


「モニカに探ってもらうにしても、せっかくだし見晴らしのいいところまで行こうか」

「良いお考えだと思います」


 ここは崖の上部にある棚である。

 このまま崖を登って行けば遠くまで見渡せると思うんだ。何せ、この位置でも木々より高い位置にいるのだから。

 

 ゾク――。

 その時、俺の背筋がささくれ立つ。

 

 おいおい。この森……どんだけなんだよ。

 野放しになっていた理由ってまさかこういうことなのか?

 

「モニカ。ワニやトカゲって鶏肉に似た味なんだっけ」

「そうですね。今日は鶏肉にばかり出会いますね」


 俺の危険スイッチを押したのは飛竜だった。

 空を雄大に翔ける巨大な体躯は頭から尻尾の先までおよそ15メートルを超える。

 ワニのような顔に固い灰色がかった緑の鱗で覆われた胴体。5メートルほどある鞭のような尻尾の先にはトゲトゲがついている。

 あの尾の攻撃をくらうと、結界魔法で一撃耐えれるかどうかといったところ。

 たった一日で、空で出会いたくないモンスタートップ3のうち二体まで遭遇するとはどうなってんだ。


「縄張り争いでもしてんのかな?」

「グリフォンとですか?」

「生息地域が被っているって話をベルンハルトからは聞かなかったんだよなあ。でも、龍虎相対すと言うし。巨大モンスターは『俺が王者』だとやりあうのかもしれないな」

「迷惑なお話ですね」

「そうでもないさ」


 グリフォンの気配が隠れ蓑となっているのか、飛竜の奴は矮小な存在たる俺たちのことが目に入っていないらしい。

 真っ直ぐこちらに向かって来てはいるものの、あれは威嚇だな。グリフォンに対する。

 このまま遠巻きに威嚇して、巣に返るなり餌を獲りに行くなりしようとしているのだろうが、そうはいかない。

 

「ってええ。おい」


 つい変な声が出てしまったよ。

 あの野郎。空中でホバリングしたかと思ったら、その場で翼をはためかせ始めやがった。

 ワニのような大きな口元から炎がチラチラと見え隠れしている。

 

「この巣ごと、でしょうか」

「退避している暇はない」


 どうする? 先手必勝と行きたいが、間に合わないかもしれない。

 魔力量は充分残っている。

 ここは安全策で行くか。

 

「モニカ、俺の後ろに」


 彼女の声をかけてから、目を瞑り頭の中でイメージを構築していく。

 

「総士の名において依頼する。水の精霊よ。我が前に姿を現せ。アイスシールド」


 呪文を唱え終わるや否や、飛竜の口から炎のブレスが吐き出された。

 その刹那、俺の身長の二倍ほどある巨大な氷の盾がブレスを阻む。

 ぐ、ぐうう。

 分厚い氷の盾が中央から溶けていっている。このままだとブレスが盾を突き抜けてしまう。

 や、やっぱり、飛竜のブレスの威力は強烈だ。

 ぐいっと右腕に力を込め、氷の盾に魔力を注ぎ込む。

 キイイインという高い音を立て、氷の盾とブレスが同時に光を放って消し飛んだ。

 しかし、飛竜は自身のブレスが凌がれたことなど意にも介さず、再び口元に炎をため始める。

 

 このままじゃあジリ貧だ。

 しかし、先ほどのブレスで間合いは分かった。

 次のブレスが来る前に仕留めてやる。

 

「モニカ、螺旋を頼めるか」

「承知しました」


 俺一人だと射程距離に不安があるが、モニカがいるとなれば話は別だ。

 彼女とほぼ時を同じくして目を閉じ、呪文を紡ぐ。


「モニカの名においてお願いいたします。風の精霊さん。ウィンドブレイク・トルネード」

「総士の名において依頼する。水の精霊よ。刃となりて切り裂け、ウォーターカッター」


 俺たちの前方に渦を巻いた暴風が出現し、水の刃が暴風に吸い込まれて行く。

 モニカがぐぐぐっと手を前に振ると、暴風が一直線に飛竜に襲い掛かった。

 

 その距離百メートル近く。

 的がでかいから狙いは問題ない。モニカの風の精霊魔法は見た目の割に威力はないんだ。

 というのは、彼女は飛距離重視で精霊魔法を構築している。

 その代わりといってはなんだが、俺のウォーターカッターは威力重視になっていた。

 

 ――スパアアアアアン。ガリガリガリガリ。

 風の渦が飛竜の横腹に喰い込み、ドリルのように切り裂いて飛竜の体を突き抜けていく。

 哀れ飛竜はバラバラに切り裂かれ、地に落ちて行った。

 

「……しまった……」

「少々、細かくなり過ぎたかもしれません」


 思ってもみない結果に唖然とする俺とモニカ。

 ここまで破壊力を増すなんて想定外だよ。

 

「尻尾くらいなら回収できるかなあ……」

「尻尾は太さも抱えるほどありますし、しばらく食べるに困らなくなりますよ!」

「だな。今夜は鳥鍋だ」

「はい!」


 尻尾はどの辺に落ちたのかなあ……。

よろしくお願いします!

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こちらも間もなく完結となります。

ぜひぜひチラ見していってください!

・タイトル

最強ハウジングアプリで快適異世界生活

・あらすじ

異世界の戦場に転移してしまった主人公がど真ん中にハウジングアプリというチートを使って誰も侵入できない無敵の家を作って戦争を止めたり、村作りをしていくお話しです。

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