#10
翔視点
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優に頼まれ俺は今いかにもボス部屋のような感じのする扉の前に来ていた。ここに来るまで魔物の襲撃もなく、快適にこれた。まぁ、音速を超えるスピードで移動すれば当然魔物が認識した時にはもう既にその場にいないからである。近くにいた魔物は大体が衝撃波で文字通りぐちゃぐちゃになっている。まさに「サラマンダーよりはっやーい」である。
「まったく雑魚処理とかめんどくさいだけどっと!」
そんな愚痴を言いつつも飛んできた毒針をたたき落とし、仕返しと言わんばかりに素早く片方の剣に雷の魔法を付与し、飛んできたであろう方向に電撃を飛ばした。
「奇襲力が売りのただの雑魚か…えーとあの魔物は…」
翔とミオは、優のユニークスキルの効果により詳細窓の1部能力が使用可能となっていた。
《Ninjaスパイダー:全身が棘で出来た蜘蛛。何故この名前になったかは神のみぞ知る。また、奇襲力に長けており強力な毒針による一撃で大体の生物は即死する。》
「うおっ、あぶね……叩き落とせて良かった…後で優にも知らせておかないとな…」
《称号【速さこそ最大の武器!】を取得しました。》
「なにこの称号…もう訳分からんよ。」
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通常視点
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優とミオも扉の前に着き翔と合流しNinjaスパイダーのことについて聞かされ、素材を収納したところである。
「いやーさっすが俺の翔!ここまで来る間ほとんどの魔物が死んでたよ!」
そんなことを言いながら翔の背中をバシバシ叩く優である。
「痛いっ!てか俺はいつからお前のものになったんだよ?」
「一万年と二千年前から?」
このセリフ言いたかったんだよね!
「あ、ハイ…」
「あの、2人で話してるところ悪いんだけどさ、この先800階層のボスだよ?もう少し緊張感とかないの?」
やれやれといった感じで、ここがボス部屋前だと伝えるミオである。
「「そんなものないっ!」」
即答であった……
「二人ともここを抜けたらお説教ね!」
満面の笑みでそう言うミオであるが、目が笑ってない。
「え……?ヤシャ〜シラユリ〜助けて!」
いやマジで助けて!お説教とか嫌なんだけど!だって、少しよそ見しただけで水系統の魔法を俺たちに問答無用で撃ち込んでくるからね!収納しちゃうけど!でも最近普通に第7階級魔法を普通にぶっぱなしてくるから!第7階級魔法なんて王宮魔法師でもそう易々と発動出来ないんだけど……そこんとこどう思ってるんだ!?ひゃっそんなに睨まないで怖いから!
『『無理だな(ですねぇ)』』
まさかの即答!?
「さて、ヤシャ殿とシラユリ殿の承諾も貰えたことだから……ね!?」
「「すんませんでしたっ!!」」
空中で縦に7回転して土下座する2人である。完全にステータスの無駄遣いである。俗に言うジャンピングスピン土下座だ。
「さーて、誰が扉を開ける?やっぱりここは……翔があけ…」
「ジャンケンで!」
うおっ、反応はやっ!
「それじゃあ、ジャンケン・ポン」
《結果:優チョキ・翔:グー・ミオ:グー・龍2匹そもそもジャンケン出来ない》
「よーし優開けるんだ!」
「え、ちょっ…」
「男にはやらねばいけない時があるんだよ…」
「……」
「やらないなら私のテールアタックね!」
「はい!やらせて頂きます!」
「よろしい」
やはり、ミオには敵わない優であった……
「開けるよ…」
そう言いゆっくりと扉を押す手に力を入れていく…
「ん?かってぇなこの扉!」
さらに力を入れる
「………くっ」
優がほぼ全力で扉を押してもまったく微動だにしない。
「ちっ、開かねぇんだけど…いっその事斬るか」
そう言い腰に下げてある愛刀【夜桜】に手をかけ4回ほど振るう。4回振るうのにかかった時間約1.2秒、到底人間技ではないが、そもそもステータスが人間レベルでは無いのと、優が日本で幼少期からやっていた抜刀術の稽古の産物でもある。
そして穴が空いた所を手早く収納する優である。
「「『『………』』」」
ただ呆然と言葉を発することも出来ず突っ立っている(滞空している)2人と2匹であった。
「なにやってんの?早く行くよ?」
「う、うん…」
刀を持っている時に優を怒らせては行けないと心に誓った翔とミオであったが、そんなことを優が知るよしもなかった……。
「行くぞー!」
「了解…」
「私はいつでもいいわよ」
多少テンションは異なるがこれからボス戦と張り切っている3人と2匹である。
優がノリノリで掛け声をかける。
「では……お国のために〜〜〜突撃ぃぃぃぃ!!」
「やめろぉぉぉ俺はまだ死にたくねぇぇぇぇ!!神風特攻隊じゃねぇんだからぁぁぁぁ!」
「神風特攻隊ってなに?」
「あ、俺達が住んでいた場所の特殊な戦法だよ。」
「何がいけないの?」
「あー、えっとー簡単に言うと敵に乗り物で自分ごと突っ込んで命と引き換えに敵を殺す戦法のこと」
「悪趣味……」
そう言いつつも優の後を追う翔とミオがである。