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ショタで人生やり直し!  作者: ミヨコ
異世界に来ちゃいました。
8/11

旅の相棒4

 

 白ローブさんと、荷台に乗り込もうとしていた赤鎧さんが息を呑んだのが分かった。


 おっと…これはマズッたパターンか?チート晒して怖がられるとか、下手すると切り捨てられてしまうのでは?



「あ…え〜っと…」



 やばい…何も言い訳が思いつかない!

 背中に冷や汗が伝う、どうしようどうしよう…





 よし、逃げよう




 スッと立ち上がろうとした瞬間、ガタンっと馬車が動き出した。


「うわぁ!」


 グラッとよろけて倒れそうになったが無事だった。腕を白ローブさんに掴まれ、背中を赤鎧さんに支えられていたのだ。


 3人揃ってホッと息を吐く。それにしても赤鎧さんはスゴかった、視界の端で見えたがサッと勢い良く荷台に乗り込んで俺の背中を支えてくれた。以前の俺でもあんな動きはできない。


「あ、ありがとうございます…」


「怪我しなくてよかったわぁ」


 白ローブさんの柔らかな声と優しい手が頭上に降ってきてやんわり撫でられる。


「さて…」


 ニッコリと微笑む赤鎧さん、笑顔がちょっと怖い。

 荷台の入り口を塞ぐように座っているので逃げられない、そもそもあの身体能力の脇をすり抜けられる自信などこれっぽっちもない。


 背後の白ローブさんも逃してくれるとは思えない、むしろ下手に動くと殺されそうな気配がする。


 無意識に正座をしている自分がいる。その膝の上に丸くなって寝ようとしているジュノだけがこの場の緊張感を感じていないようだ。うう…助けて。


 なんとなく実家の母に叱られるような心地でいる俺。

 多分某実写版映画の黄色いネズミのようにシオシオのショボショボした顔になっていることだろう。


 小さい頃庭でおもちゃのフライパンに沢山のミミズを入れて母に絶叫からの説教されたこと、姉ちゃんのお気に入りのポシェットの中いっぱいにダンゴムシやカタツムリを集めて大泣きされ、父にゲンコツ食らったことなど諸々思い出してしまった。


 走馬灯のように蘇る幼い頃の思い出…。つらい。


「さっきの、どうやったんだ?!」


「はへ?」


 予想していたセリフと大違いすぎて変な声が出てしまった…。もっとこう、殺伐とした感じで責められるかと思ったが、顔を上げた先にあったのは、好奇心に満ちた声音、ワクワクと弾んだ声を出す満面の笑顔の赤鎧さんだった。


「さっきのだよ!水がブワッと出てきて汚れが落ちただろ?魔法にしては詠唱や魔法陣もなかったがようだが、いったい何だ?!」


 ぐっと身を乗り出してワクワクしている様子だ。


「あ〜、えっと、それはこの子の能力です」


 俺は膝の上で丸くなっているジュノを撫でる。ゴロッとお腹を出してグルグルと喉を鳴らしている、最高に可愛い。


「猫、ではないのか?」


「可愛い猫ちゃんねぇ」


 赤鎧さんはまじまじとジュノを見つめ、白ローブさんも俺の肩越しに覗き込むようにジュノを見ている。


「この子はケットシーという妖精だそうです」


 私も詳しくはわかりませんが、と付け加えておく。



「それが本当なら凄いな!妖精は滅多に人前に出ないどころかここ数百年ほど目撃例すら無いというのに…君にはこんなに懐いているなんて…その…私も少しで良いので触れさせてもらっても良いだろうか?」


「わたくしも!」


 妖精は普段見えないのか?実態があっても姿を隠しているのだろうか?そんな疑問も浮かんだがまぁ後にしよう。


「ジュノ、2人に撫でさせてあげてね」


 にゃぁんと可愛い声を出してジュノが膝から飛び降り、赤鎧さんと白ローブさんのそばにトコトコと歩いていった。


「「かわいい〜〜〜〜!!」」



 猫カフェのお客さんのようだな。2人は最初こそ恐る恐る手を伸ばしていたが、すぐに抱っこしたり揉んだり吸ったりしながら妖精について話している。猫吸いは異世界でも共通の猫好きの証明なのだろうか?


 妖精は大昔、世界中にいて普通に見えていたそうだが、当時の偉い人が妖精の力を悪用しようとして妖精王の怒りを買い妖精は姿を隠してしまった…と。


 ジュノは撫でられるのに飽きたのか俺の方に戻ってきた。膝と肩を踏み台にして頭の上に乗ると器用に丸くなってしまった。



 あぁ…と残念そうな声が2つした。



「さて、遅くなってしまったが君のことを教えてくれるかな?暴きの輪で君が魔物の類いではないのは分かったけれど、あの場所に君のような幼い子どもが居るというのは不可解すぎるからね」


 赤鎧さんは真面目な顔をして俺に話しかけている、ように見えるが目線は間違いなく頭上のジュノへ向かっていた。



「私の名前はミツオミです、この子はジュノ。あの場所にいた理由は…はっきり言うとわかりません、気づいたら草原の中にいました。ここはどこでしょうか?とりあえず道が見えたので…そこまで歩いてきたのですが、街がどちらの方向かわからずに困っていたら貴方方が通りかかり、同じ方向へ進めば街があるかと…」


 なるほど、と2人は頷いてくれたが、納得はしてなさそうだ。



「まぁ、暗くなる前に出会えたのは僥倖だった。私はニア、こっちの白いのはカエラだ。よろしくミツオミ、ジュノ」


 赤鎧さん改めニアさんはそう言って握った拳を向ける、なんだろうと首を傾げると、拳を合わせるのが冒険者の挨拶だと教えてくれた。なるほどと思い拳を合わせる。ジュノも腕の上をトコトコ歩いてニアの拳をペシッと叩いた。


 その瞬間赤と白は悶絶とともに崩れ落ちたのであった。

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