旅の相棒2
「ちなみにどんな風に調整するんだ?」
近くにあった岩に腰を下ろして、ジュノに話しかける。
「んっとねぇ、たとえばお水なら…」
ジュノが後ろ足で立ち上がり短い前足を器用に動かしてジェスチャーを交えて説明してくれた。
簡単に言ってしまえばイメージ次第だそうだ。丸なら丸、流れるなら流れる、イメージが鮮明なほど魔法の威力や精度が上がるらしい。とりあえず丸く球体の水を出してみることにする。
「ジュノお願い」
指輪に魔力を流してお願いする。魔力を流す方法はジュノが簡単に説明してくれたので、早速やってみると体に染み付いていたように自然に出来た。難しい呪文も必要ない、とても便利だ。
ジュノが小さくニャンと鳴くと、目の前にイメージ通りの20cmほどの球体の水が発生した。
すごい!俺はそれを両手ですくい取りゴクゴクと飲み干す。
「…!おいしい!!」
以前山奥の水源で飲んだような冷たくて澄んだ水。変な味や臭いもない普通と言ってしまえばそれまでだが…歩き疲れて更には泥だらけになってしまって体力も限界の自分には最高においしい水だった。
「ジュノ、ありがとう。とっても美味しかったよ」
そう言って撫でてやるとジュノは気持ちよさそうに目を細め擦り寄ってくる。
もう少し飲もうと思い、また同じように水球を作り手を伸ばしたとき、ふと水球の表面にぼんやり映る自分の姿が見えた。
「ん、もしかして…ジュノ、お願い」
ゴクゴクと水を飲み干し、ジュノに願う。
ジュノのニャンという鳴き声とともに1メートル四方の水の板が現れた。
「よしよし、イメージ通り!」
俺はその水の板を覗き込む。少し風で揺れてしまっているが歪が、ほぼ思い通りにうまく自分の姿が映っている。
黒髪に黒っぽいの瞳、どことなく見覚えがある…ってこれ俺の小さい頃まんまの顔じゃねーーか!!!実家のアルバムで同じ顔をゴマンと見た。なんだかすごくガッカリである。もっと鼻の高いヨーロッパ系の美少年が良かったぜ。そんなことを思いながらジュノに更に願う。
ニャンという鳴き声とともに俺の全身に着いていた草や泥が全て落ちてキレイになった。水と風の魔法を組み合わせて出来るんじゃないかと思ってやってみたがうまく行った。洗濯乾燥機みたいな感じだ。
ジュノは嬉しそうにニコニコしている。気がする。猫の顔だし。
ちなみにジュノが使える魔法は水と風で、周りに火や土などの小妖精がいれば炎や土の魔法も使えるらしい。
ジュノのように実体があり言語が理解できる妖精は大妖精と呼ばれ、自分より格下の妖精の力を使えるという。更に上に高等妖精なる妖精がいるそう。
ジュノは力が高等妖精に近いほど強く生まれてしまったため他の妖精達によって神への供物にされ、オパール様に保護してもらったんだとか。神様側からこちらに干渉できないような事言っていたが、こちらからなら手段があるのだろうか?要実験だな。
そして話を戻すと、この力は厳密には魔法ではなく妖精の力を使う術なので精霊術、人間が自身の魔力を消費して使う術は魔術と呼ばれる。しかしこの世界に住む人間の殆どは大きな魔力を持たないそうだ。そして精霊術も魔術も引っ括めて魔法と呼ぶんだと。ふーん。
そして俺も魔術を使えるはずなのだが、何を試してもうんともすんとも言わない。なぜ???ジュノも「よくわかんにゃい」と首を傾げた。
まぁそのうち何とかなるだろ。うん。
「さて行きますか!」
喉も潤い、体もキレイになったので気を取り直して街道を目指す。ちょっと腹が減った気もするがまだ平気そうだ。
ジュノは指輪の中に帰るのかと思ったら俺の頭の上に乗っている。たまに肩に降りてきたり、腕の中に収まったり、俺の周りをちょこちょこ走ったりして自由だ。久しぶりに外に出れたのが嬉しいらしい。
どのくらい歩いたか、だいぶ日が落ちて辺りが夕焼けに染まる頃やっと街道に出たのだった。