おっぱい様はオパール様4
「何か大きな役目があるとかじゃないんですか?」
「特に無いぞ?」
魔王を倒す勇者とか、帝国に侵略されそうな小国を救うとか、そういう王道ファンタジー世界に行けるのでは?と期待していたがそういうゴールや目的などは一切ないらしい。
ニコニコしながら俺の頭をなで続けるおっぱい女神。
「魔王と言うたが、正体は不明なのじゃ。妾も神とは言え万能ではない…手の届かぬ場所に畑を作り種を蒔くようにして世界を作り、ただ見守るのが我ら神々の役目。その畑で害虫や疫病が発生しても基本的には見ているだけしか出来ぬ」
悲しげに目を伏せてしまったオパール様に向き直り、ふと疑問に思ったことを聞いてみる
「基本的にてことは、例外があるってことですか?」
キョトンとした顔で俺を見る彼女はなんだか幼く見える。まぁ今の俺はもっと幼いのだが…。
「あ、あぁそうじゃ、例えばお主を妾の世界に導くことも例外じゃな、それぞれの世界には必要な魂の数があって、それがそれぞれの世界で巡っている。足りなくなると次第に歪み崩壊してまうのじゃ。多すぎても然り」
増えたり減ったりしながら世界は巡っているらしいが、オパール様の世界ではその正体不明の魔王(自称らしいが)が魂を取り込み輪廻の輪を乱しているらしい。その魔王を倒せばいいのでは?と思う
「妾は魔王に手が出せぬし、減ってしまった魂を他の世界から補充すればいいと思っていたが…」
オパール様は目を閉じ何か考えているようだ。
「その魔王とやらを滅するのが最善なのか妾には判断できぬゆえ…お主が魔王に出会った時にはお主の判断でどうにかせよ」
どうにかって…思わず苦笑してしまったが、この女神様は殺生が苦手なのかもしれない、神なのに多感で繊細な心をしているのかも知れないな。
「わかりました、おっぱい様の世界に最善の結果になるよう努力します、これを俺の目標としますね」
「オパールじゃ!…まったく、おぬし意外とイイコじゃの」
おや?今頃気づいたんですか?ふふん。
ドヤっているとおっぱい女神はスッと手も差し出した。
握手かと思って握ろうとしたら手のひらから小さな光の玉が出てきて思わず手を引っ込めてしまった。なんじゃこれ?
光の玉をまじまじと見つめていると
「これは妾の加護、そなたに授ける。特別じゃぞ?内緒じゃぞ?」
人差し指を唇に当ててシーッとしている、かわいい。
光の玉はふわふわ浮いて俺の頭上を一周して弾けるように消えた。
「さて、そろそろ行くが良い。其方の旅路に幸あれ」
フッと意識が落ちていく、あぁ…どんな世界か詳しく聞くの忘れたし、能力もちゃんと聞いてないのに…まぁいつも説明書は読まないし、使ってれば新しい道具は覚えるし発見するしいっか…ぼんやり考えながら水の底にゆっくり沈むような浮遊感のなか俺は完全に意識を手放したのだった。