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第7話


 「しゃ、喋った!」


 いきなり喋ったからびっくりした。これがいわゆる魔獣ってやつか。うむ、すらっとしていて毛並みも良さそう。


 「へぇ、喋れるってことは高位魔獣ッスか?」


 「高位魔獣なんかと一緒にしないでほしいニャ」


 なんかすごい奴らしい。というかやっぱり語尾はニャなのか。


 するとその猫は急に立ち上がった。


 二足立ちできるんだな。


 「ワタシは神霊魔獣ニャ」


 凄いだろうと言わんばかりに胸を張っている。神霊とはまた立派な感じだな。知らんけど。


 「まじッスか!?」


 「何だそれ?」


 「ニャに? 知らないのかニャ?」


 どうやら神霊魔獣とやらは有名らしい。


 「知らん。異世界人だからな」


 「ニャるほど。ワタシを呼び出せるだけの魔力量があるのはそういうことニャンね。異世界人はぶっ飛んでるからニャ〜」


 「はぁ」


 そうなのか?


 「神霊魔獣っていうのはッスね、魔法動物の一種である魔獣の上位種である高位魔獣のそのまた上位の存在ッスよ。はるか昔に原初の神によって作り出された魔獣の直系ッス。まさか魔法屋でワゴンセールしてたやつにこんな凄いのがあるとは思わなかったッス」


 「安売りだったのか」


 「なんか心外だニャ」


 それならラッキーだったということで。


 「色々言いたいことはあるけど、まあよろしく頼むニャン。ご主人」


 黒猫が仲間になった。

 某RPGのBGMが頭の中でなっている。

 

 「じゃあ早速名前をつけてほしいニャ」


 「名前?」


 「そうだニャ。名付けは契約の証ニャ」


 「なるほど」


 と言ってもなぁ。いきなりは出てこんな。


 「よし、じゃあタマ」


 「却下。……バカにしてんのかニャ?」


 目を細めて睨んで来た。


 「冗談だ。うーん、じゃあ白猫だから"シロナ"で」


 「ふむふむ、それニャらいいニャ。今日からワタシはシロナニャ」


 「それじゃあよろ…し……く」


 不意に足元がぐらついた。


 あ、これアカンやつや。


 急に脱力して倒れてしまった。


 「刻君!?」


 「あちゃー、やっちゃったニャンね。ワタシレベルの魔獣との契約は消費が激しくて大抵こうなるニャ」


 それ早く言えよ!

 と口に出す前に意識がトンでしまった。






———————————————————————————







 「……ん? 何んだこれ?」


 目の前で何かがピョコピョコ動いている……


 「あ、おはようッス」


 なんだコイツのアホ毛か。


 「おお、おはよう、って俺あのまま気絶したのか?」


 「そッス」


 最近気絶することが多い気がするなぁ。もう3回目だぞ。


 「体調はどうッスか」


 少し体を動かしてみる。


 うん、問題ないな。


 「大丈夫だ」


 そう言えば昨日より体調が良い気がする。ちょっと確かめるか。


 眼を使って自分のステータスを見る


 

———————————————————————————


名前:宮下 刻


 種族:異世界人(人間)


 年齢:16歳


 身長:175cm


 体重:62kg


 生命力:100/100


 魔力値:5050/5050


 体力:100


 知力:120


 保有スキル:神眼(時間加速、先見の眼)・魔力感知


 契約者:不明・シロナ



———————————————————————————



 契約者の欄にシロナが追加されていた。

 それともう一つ。


 「なんか魔力が増えてるんだけど」


 「限界まで使ったからッスよ。筋肉の超回復と同じ感じッス。酷使すればするほど増えていくッスよ」


 へぇ、そんなことで魔力が増えるのか。ん? これを利用すればメチャクチャ魔力が増えるんじゃ無いのか?


 「その方法で魔力値を増やそうと思ってるならやめた方がいいッスよ。これ下手すると魔力切れより悪い魔力枯渇ッスから。最悪死ぬッス」


 「なっ! あんのニャンコめぇ……」


 「どうでもいいッスけど早く起きてくださいッス。もう12時ッスよ」


 「うわーもうそんな……12時? あっ!」


 やばい、約束の時間!


 「すまん、ちょっと出る!」


 「りょーかいッス〜」


 幸い服は外着なのですぐに出られた。


 「うおおおお! すぐに行くぞぉぉ!」


 大声で叫びながら一心不乱に走った。いや、()()()()()()()






———————————————————————————






 「…………」


 我ながら自分の学習のしなさに辟易する。

 そう、また迷ってしまったのだ。


 「ぬわあああ! なんっっっと言う頭の悪さだ! 穴があったら入りたい!」


 ちゃんと辿った筈だ。なのに迷っただと……!


 「もういっそそのまんま穴の中に埋められちまえ」


 む! この声は!


 「おお響! 何してんだ?」


 「クウの野郎に頼まれたんだよ。絶対迷うッスから見てあげて欲しいッスってな」


 迷うってわかってんなら言えよと思ったが今回は完全に俺が悪いので言わないでおく。


 「それは助かった。 案内してくれ! 公園の場所わかるか?」


 「チッ、メンドいな」


 そう言いつつ案内してくれる。まぁなんて優しいのでしょう。ツンデレちゃんめ。






———————————————————————————






 そこから5分とかからず目的の公園に辿り着いた。


 「や、マジで助かった。恩にきる」


 「なら今度飯おごれ」


 また飯か。こいつ満腹キャラだったんだな。


 「わかった。と言っても今文無しだからまた今度な」


 「オッケーだ。すっぽかしたらぶっ殺す。じゃあな」


 そう言って帰って行った。


 さてと今何時だ? やばっ!もう30分オーバー!


 「あっ、居た!」


 声の方を振り向く。

 そこには若干怒り気味のクレアがいた。


 「もう! 探したのよ! 女の子を待たせるのはマナー違反ですっ!」


 かっ、可愛い……じゃなかった。


 「すいませんでしたっっっ!」


 「素直に謝ったのでよ良しとします。じゃあ早速回ろっか」


 割とあっさり許してもらえてホッとした。

 

 「まだ行ってないところあるんだな。他は何があるんだ?」


 まだ町全体を回ってないのでなんとも言えないが昨日あらかた回った気はする。


 「まあ色々よ」


 




———————————————————————————






 そう行ってクレアに連れられて行った場所は何やら大きな館だった。


 「ここは?」


 「博物館よ。生物や芸術、あとは歴史といった感じの博物館」


 「へぇ、そうなのか」


 色々ごっちゃの博物館なんだな。だからこんなにでかいのか。


 この博物館、日本のやつの何倍もある大きさだった。

 東京ドーム幾つぶんだろうか。


 「それじゃ入ろ」


 「そうだな」


 そこで数時間ほど中を見て回った。

 なんだかよくわからない化石やら魔法を使った彫刻やら向こうでは見られないものがあって結構楽しい。

 そんな中で一つ、他より圧倒的に惹かれるものがあった。


 「ん? この絵は? これは何処かで……あっ」


 そこに飾られていたのはある絵画だった。

 特に珍しいものでもないありふれた絵画。

 しかしそれは他のものとは決定的に違うものだった。

 見覚えがある。

 その絵画に描かれている場所に見覚えがあるのだ。 

 空に浮かぶ庭園。

 一面花畑で中心には城が建っている。

 それはここに来る前に夢に出てきた場所だ。

 胸の奥がざわつく。

 何かが欠けているような感覚がある。

 おそらくこちらに来て度々見る誰かの記憶も関係しているだろう。

 俺はそれを知らなければならない。

 そんな気がする。


 「あれは誰なんだろうな……」


 記憶の中のクレアに似た誰か。

 もしかしたらクレア本人なんじゃないのかと思ったが、やっぱり違う気がする。

 しかし少なからず関係があるのかも知れない。


 まあ焦らなくても良いか。時間はありそうだし。


 「よし、次のところ見に行くか。あれ? クレアは?」


 そう言えばこの絵を見ていた辺りからいなくなっていた様な気がする。


 「おーい。トキー」


 あ、いた。


 「何処に行ってたんだ……ってなんだそれ?」


 何やら手に大量の荷物を持っていた。


 「お土産だって。色々貰っちゃった」

 

 「へ、へぇ」


 お土産にしては多い気がする。


 「もうあらかた見たから出よっか」


 俺たちは博物館を後にした。


 「次は何処に行く?」


 「そうね……じゃあ占いとかどう?」


 占いか。向こうじゃまず信じないがここではなんか信憑性がある結果が出そうだな。


 「面白そうだな。占って貰うか」


 「じゃあ決まりね」


 俺たちはより道しながら目的の場所に向かった。

 当然荷物は俺持ちだ。

 さすがに女の子にこんな大荷物持たせるのは俺のプライドが許さない。

 やっぱりここでもクレアは注目を浴びていた様な気がする。

 そこから数分歩いて目的の場所に着いた。

 なんというかよくある感じの占いの館だ。

 暗い紫色のテントで看板に占いって書いてある。


 「じゃあ早速入って見よう」


 「おう」


 中に入るとなんとなく魔力を感じる。

 やっぱり魔法使うんだな。

 

 それにしても占いか。朝の星座占いぐらいしかしたことないな。占い師はやっぱり魔女っぽい婆さんかなぁ。あ、いた。


 「ようこそ……あっ!」


 どうやら婆さんじゃ無いっぽいな。


 そこに居たのは婆さんではなく小柄な少女だった。


 「ん?……おお⁈ ミルちゃんか!」

 

 そこにいたのは昨日クレアと森の中にいた少女だった。

 ちなみに名前はミルで年は10歳だ。茶髪でポニーテール、後数年したら絶対美人になる顔だ。


 「びっくりしたでしょ。昨日の子はここの占い師さんなの」


 なるほど、前からの知り合いだったのか。

 

 「こんなに小さいのにもう働いてるのか?」


 「そうだよ! 魔力が他の人より多いから占いやってるの!」


 ここには労働基準法は無いようだ。

 とりあえず素直に褒めておこう。


 「へぇ、偉いなぁ」


 「えへへ」


 あーめちゃくちゃ癒される。

 子供は純粋で可愛いなあ。

 あ、ちなみに俺にロリコンの趣味は無い。


 「じゃあ、占って貰っていい?」


 「うん、わかった! じゃあ始めるよー」


 すると台の下から水晶玉を取り出した。

 魔力の発生源はこれの様だ。


 「この水晶玉はね、昔お母さんが小さかった時貰った魔法具なの」


 「へぇ、お母さんも占いやってたのか?」


 「そうだよ! お母さんね他の人よりずっとたくさん魔法が使えたからいろんな事が出来るんだよ!」


 いい笑顔だ。そうか……お母さんがやっていたのか。


 「お母さん好きか?」


 「うん!大好き! うちはお父さんがいないけど平気なのはお母さんがいるからなんだ」


 「そっか。じゃあお母さんみたいに上手に占ってくれよ?」


 「わかった! これの上に手を置いて魔力を込めると占えるんだよ。何を見たいのかは魔力を込める時に頭に浮かべておく必要があるの。おにいちゃんは魔力使える?」


 「使えるよ」


 「へぇ、トキって魔力使えるんだ。珍しいね」


 「まあな」


 まあ異世界人だしな。


 「じゃあ魔力使えない人用の補助無しね」


 水晶玉に手を置いて魔力を込める。


 取り敢えず、数年後何してるのかとかでいいか。


 すると水晶玉が淡く光出した。

 光はだんだんはっきりとした像を映した。

 そこに映っていたのは、あの黒ずくめの男だった。

 

 「こいつは!」


 どういう事だ? なんでこいつが出てきた? ん?いや、よく見れば違う様な……髪が白いな。あいつは黒っぽかった気がする。


 「知ってるの?」


 「いや、違ったっぽいな」


 誰なんだこれは。流行ってんのか? 真っ黒。中二かお前ら。


 「何見ようと思ったの?」


 「数年後何してるのかなって」


 「数年後かぁ、それだけ曖昧だと外れちゃうかもね。というかそれだけ先の事は普通占えないわ」


 「そうなのか」


 まあ数年後じゃあな……


 「おにいちゃんどうだった?」


 「貴重な体験だったよ。ありがとな」


 「また来てね〜」


 俺たちは手を振って占いの館を後にした








 外に出るともうすっかり日が暮れていた。


 「これで町巡り終わりか?」


 「そうね。もう回りきっちゃった」


 結構楽しめた気がする。


 「そっか。明後日帰るんだっけ?」


 「うん。明後日の昼にここを出るの」


 「じゃあお別れだな。また会えるのか?」


 「この街にいるのなら多分会えるわよ。それに……」


 「?」


 「いや、いい。じゃあまたね」


 「ああ」


 クレアは馬車に乗って帰って行った。


 俺もクレアとはすぐ会える様な気がした。







———————————————————————————

 






 「さて、これからどうすっかなぁ」


 ここの世界に来てから考えていたがやはり何かに意図があって召喚されたのだろうか?

 勇者として召喚されたわけでも無く、死んで生まれ変わったわけでも無い。

 なんの為に召喚されたのか。

 やはりあの夢だ。

 あれは何かの予知あるいは警告だったのではないのだろうか?

 あの黒いのに会ったら分かるのだろうか?

 なんだか謎が多い。

 

 「いくら考えてもわからねぇな……今は取り敢えずあの店でバイト生活か」


 なんと無くモヤモヤしたまま店に帰るのだった。

 

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