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第6話


 歓迎会が催され一頻り騒いだ後、眼についての話を聞いた。


 「神眼というのは神と契約する様々な種族の中で人間の眷属だけが持ってるものを指すッス。神眼は誰でも得られるわけじゃなくて、眷属から何パーセントの確率で神眼を得られるっていう特徴があるッス」


 「持ってない奴とはどう違うんだ?」


 「まあ簡単に言うと力の差ッスね。ある方がより強い能力を得られるッス」


 運次第というわけらしい。

 神も意地の悪いことをするな、と思った。


 「ちなみに亜人の眷属ならはモチーフになる動物の特徴的な部分を強化、魔族は魔力が強化されて変身が出来るようになるッス」


 「ふむふむ」

 

 他の種族に興味が湧いた。

 というか普通に会ってみたい。


 「じゃあ今からその眼の力について説明するッス。まあすぐに使える様になると思うッスよ」


 「そんな簡単に出来るのか?」


 「普通は使える様になる迄が難しいんッスよ」


 「そういうもんか?」


 「そういうもんッス。じゃあ始めるッスよ」


 おお、なんか緊張する。


 「まず意識を集中させる」


 「……………」


 目を閉じ、集中する。

 

 「体の中に流れる力を意識する」


 ……お、少しづつだけど感じる。体ん中でぐるぐるしてるな。自分の意思で動かせるっぽい。


 「できたらそれを右眼に集中させる」


 ぉおっ、これは結構難しい。でも出来なくは無いな。ん? あれ? この感覚は……解る。何故かわからないが、この続きが解る気がする。


 「コツは……!?」


 ()()()()()()でやった。何十回何百回とやった様な、そんな感覚だ。


 「な、これは……!」


 空護が何かに動揺している。

 

 この時俺は気づいてなかった。

 ほんの一瞬だが、自分が何かに包まれている事に。


 そしてゆっくりと眼を開いた。その右目はあの時の様に変化していた。


 「これで出来てるか?」


 「……」


 「ん?おーい」


 何か考え込んでいるな。どうしたのだろうか。


 「あ、ああ。出来てるッス」


 「おお!やった!」


 「今のは……いやありえない。でも……」

 

 はしゃいでいた俺は空護が何か言っている事に気が付かなかった。


 「まあいいっスね。じゃあ次は能力ッス。何と無く使い方を理解してる筈ッスよ」


 確かにそう言われるとそんな感じがする。

 ……なるほど。


 確かに理解していた。そして自分のその能力にかなり驚いた。


 これ、結構凄いんじゃねぇか? 使ってみたいな。よし、じゃあちょっと試すか。

 

 「ちょっと殴ってみてくれ。一発じゃ無く何発か頼む」


 「? わかったッス」


 空護が仕掛けてきた。

 その結果は……


 「へぇ、スピード抑えたとはいえ今のを躱すッスか」


 結果は全て避けた。


 「なるほど、その眼の模様と今のから考えると……未来が見えるってとこッスね」


 「半分正解ってとこだ」


 「どう言う事ッスか?」


 「未来が見えるのは正解だ。それともう一つ能力を使った。それは時間をゆっくりにする能力だ。何というか、俺の時間だけが加速しているような感じだ」


 「なるほど。確かに今のは召喚されてすぐの人なら躱せなくしたのに躱せてたッスもんね」


 ただし、と俺は付け加えた。


 「それ使ってる時に攻撃すると多分効果が切れる」


 この前より長く使えたので多分そうだろう。

 最初に使った時、ゴブリンを殴った瞬間元に戻ったから間違いないだろう。


 「その程度のペナルティならいい方ッスよ」


 これは後で知るのだが、俺の眼の模様は時計の様な模様だ。

 針が指す数字(インデックス)ごとに能力が変わる。

 針は2つなので同時に使えるのは2つまでらしい。ゴブリンと戦った時の能力は今使った能力だった様だ

 しかし現状使えるのはその2つだけである。裏を返せばまだまだ能力があるということだ。


 (思った通り習得が早いッスね。普通は使えても最低1ヵ月は掛かる筈なのに、明らかにこれは普通じゃ無い……)


 そんなの事を思われているとはつゆ知らず、普通に説明した。


 「時間を司る能力ッスか。それはまた凄いッスね。時間というのはこちらの世界でも殆ど干渉できないッスから」


 「へぇ、やっぱこれ凄いのか」


 「僕が言うのもなんッスけど、あまり人に言わない方がいいッスよ」


 「了解」


 時間を司る能力って結構なチートだもんな。知られたら厄介そうだ。


 「そういえば今の動きはなんかの拳法か?」


 「みたいなもんッス。僕師匠がいるんッスよ。その人に基本的な戦いの術を教わったんッス」


 「師匠か。やっぱり強いのか?」


 「それはもう。この世界でも屈指の強さなんじゃないッスかね。僕なんてまだ手も足も出ないッスよ」


 そこまで言うってことはもうかなりヤバイんだろうな。異世界でそこまで強かったらもう想像もつかない。


 「すごい人に師事してたんだな。ちなみになんで?」


 「……ワケありッス」


 それ以上は言わなかった。


 「なら続きをするッスよ。次はさっき言ってた普通の神眼には無い能力について教えるッス。まずは使うとあらゆる文字が日本語に見える様になるのと、見たものの大まかな情報が視覚化されるのッス。いわゆる鑑定ッスね」


 「日本語に見えるか。響が言ってたのはこれか」


 そう言えば店に入る前に言ってたな。


 「これは簡単ッス。あそこの看板の文字を見て下さいッス。それであとは日本語に見ようとするだけでいいッス」


 「マジで?」


 疑いつつもやってみる。

 すると文字が変化していく。


 「うおっ! 変わった!」


 完全に日本語になっていた。


 「へぇ、便利だな。にしても異世界スイーツ屋は酷いと思うぞ」


 「うーん、そうッスよね。でも名前決めるのって結構難しいッスもん」


 「それでもこれは無いだろう」


 「そんな事はいいんッスよ!」


 面倒になったんだな。


 「それじゃあいいのがあったら言ってもらうッス。もうそれ採用するッスから」


 「んー、じゃあ考えとく」


 少なくともこれよりはマシな名前を考えれる自身はある。


 「字を書く方は覚えないとダメッスからそれなりに大変ッスよ」


 「そうか。じゃあそのうち覚えるか」


 これに思いもよらぬ苦労をかけられるのはまた別の話だ。


 「今度は鑑定ッス」


 出た!異世界ファンタジー定番のスキル“K・A・N・T・E・I”! これ一度使ってみたかった!


 「じゃあこれで試してみて下さいッス」


 空護がもってきたのは短剣だった。


 「鑑定も同じ要領でやるんッス」


 言われた通りやってみる。


 すると文字が見えて来た。


 「これか」


 内容は、こうだった。


———————————————————————————


 名称:アイアンダガー


 武器種:短剣


 全長:20cm


 材質:鉄、青銅


 属性:無


 特殊効果:無し


 状態:良好


 ———————————————————————————


 こんなものが見えた。


 見えた内容を伝える。


 「という感じだけど」


 「へぇ、凄いッスね。普通じゃ名称と武器種と全長しかわからないんッスよ」


 マジか。ますますこの眼凄いな。


 「細かい情報ほど見えにくいんッス。そのまま僕を見てみて下さいッス」


 空護のほうに眼を向ける。


 しかし、何も見えなかった。


 「何も見えないぞ」


 「それは権限が足りないからッスよ」


 「権限?」


 「そうッス。これは言うならば干渉力の大きさッスね。大きい程自分という存在本来が持つ力や物や人に対して深く干渉が出来る様になるんッス。さっきの鑑定も僕や短剣への干渉ッスよ」


 「なるほどな。人間が魔法が使えないのはその権限が低くて殆ど干渉できんないせいで、魔法や能力を全く会得出来ない訳じゃ無いんだな」


 「そうッス。今からその辺を説明するッス。まず権限の強さは種族によって違うッス。権限が大きいのは順にいうと……」


 龍也は何やら紙に書き出した。


 「上が最も高く下が最も低いッス」


 紙を見ると、


 絶対神

 神

 眷属

 魔族

 亜人

 人間


 だった。


 ん?一つだけ違うのがあるな。

 

 それは異世界人だった。


 「異世界人は人によって違いがあるッスから決めれないんッスよ」


 考えを察した様に空護が言った。


 「この中で神だけは別格ッス。神は"神氣(しんき)"と呼ばれる特殊な力を持っているんッス。それは他種族が持つ魔力とは比べ物にならないほど、強い権限を与えるんッスよ。例えば、自分が治める神都の民に対する強制命令とか。あれはゾッとするッスよ」


 つまり神はチート族って訳だ。やっぱり逆らうと碌な目に合わなそうだな。


 「ちなみにさっき眼を扱う時に感じた力はあらゆる生物が身に宿す力である魔力ッス。これの総量も権限上昇に関わってるッスけど神の鍵には遠く及ばないッスね」


 魔力か。魔法があるなら魔力もあるよな。集中すれば何となく感じる。


 「次に眷属の権限が高いのは契約時にもらう力に神の鍵が込められてるからッス。あとの順番は単純に魔力の差ッス。まあごく稀にそう言うの関係なく魔力量が多いやつもいるッスけどね」


 「なるほどな」

 

 おおよそ理解した。


 「あ、自分の情報は権限とか関係なく見れるッスよ」


 「お、マジか。じゃあ……」


 自分を鑑定してみた。



———————————————————————————


 名前:宮下 刻


 種族:異世界人(人間)


 年齢:16歳


 身長:175cm


 体重:62kg


 生命力:100/100


 機動力:500


 魔力値:5000/5000


 体力:100


 知力:120


 保有スキル:神眼(時間加速・先見の眼)・魔力感知


 契約者:不明


———————————————————————————


 「中の数値について説明するッスね。まず生命力は分かりやすくいうとHPのことで魔力値はMPッス。体力はまあ攻撃力と守備力とかの値ッス。機動力は敏捷性、瞬発力などの、まあざっくり言うとすばやさッス。知力は大体IQと同じ数値で、保有スキルは持ってる魔法と能力、契約者は契約した神のことッス。契約者の部分は異世界人はみんな不明になってるっぽいッスね。普通の成人男性の平均値はそれぞれ生命力が20、機動力は100、魔力値は10、体力は20、知力は100って感じッスね」


 なるほど、大体平均以上だな。特に魔力は桁違いだ。まあ比べてるのが一般の人だからなんとも言えないがな。


 「この魔力感知ってのは魔力がわかる様になるあれか?」


 「そうッス。だいたい理解したっぽいッスね。じゃあついでなんで身体強化について教えるッス」


 空護は立ち上がってこっちに来た。

 すると肩に手を置き、にっこり笑う。


 怪しい。


 「これはちょっと痛い目に合わないと覚えられないッスよ」


 「なん……でゅ!?」


 急に苦しくなった。

 全身の筋肉が軋んでいる。


 体の中で何かがうねってるな。どうやら魔力が暴れてるっぽいぞ。

 

 「おっ……まえ…なっ、んかするな……ら言えよ……!」


 「あ、そうッスね。次は無いッスけど気をつけるッス〜」


 絶対わざとだ。あんの野郎、絶対ぶん殴る。


 深呼吸をし息を整える。


 集中する。恐らくこれを抑える様になったらいいと思う。 


 「……ふぅ〜〜〜」


 感覚はさっきと一緒。本来のルートから外れた魔力を無理矢理……引っ張る!



 「がああああぁぁ!」


 ……元に戻ったようだな。痛みは消えてる。お、なんとなく体が軽い気がするぞ。


 鑑定で見てみる。

 なんと体力が+200と書いてあった。

 

 「魔力による身体強化。成功っぽいッス……うぉっ!」


 「チッ、避けられたか」


 使い勝手が分かったんで強化して殴ったのに。


 「強化してるじゃないッスか! 危ないッスね!」


 「おめぇが先にしたんだろーが!」


 「いや、言わないで急に来た方が面白い反応するじゃないッスか〜。ほら"でゅっ!"って言ってたし」


 「この野郎……。覚えとけよ」


 「はいはい〜次はお待ちかねの魔法ッス」


 スルーしやがった。


 「基本的に僕ら人間は魔法が使えないッス。でも人間の中でも一部魔法が使える人もいるんッス。例えば僕らみたいな異世界人とか生れながら魔力量が多い人とか多種族とのハーフとか」


 「えっ!マジで!俺もか!?」


 「使えるッスよ。試しに使ってみるッスか?」


 うおおお! いいねぇ、テンション上がるね!


 「使う!」


 「じゃあとりあえず……」


 空護はどこからともなく本を取り出した。

 便利な能力だ。

 すると本を開いて魔法陣の様なものを書き出した。 


 「こんなもんッスね。じゃあ真ん中に立ってみて下さいッス」


 「おう」


 「じゃあ始めるッス。今から言う内容に続いて下さいッス」


 すると魔法陣が怪しく光りだす。


 『我は力を求めし者。汝、我が器を見定め資格を問いたまえ』


 魔法陣が青く光りだした。


 「おっ、適正ありッスね。あ、これは魔法適正診断ッス。青が適正あり、赤が適正無し、黄色は適正はあるが権限不足って具合ッス。じゃあ魔力を流してみて下さいッス」


 言われた通りに魔力を流す。


 ……おぉ、すげぇ! 頭の中に情報が入ってくる!


 魔法から出た光が体を包む。

 どうやらこれで魔法を覚えたらしい。

 その瞬間空護が持っていた本がボロボロに崩れ落ちた。


 「その本はそうなるのか?」


 「そうッスよ。魔法書は使用者が魔法を覚えた後朽ち果てるんッス。ちなみにこれ魔法屋に売ってるやつッス」


 「なるほど。魔法屋で売ってた本ってこれだったんだな」


 「じゃあ早速使ってみて下さいッス。眼と同じ要領で魔力を使ってその魔法をイメージしながら術名を唱えるッス」


 イメージする。

 覚えた内容は召喚。

 これは一度きりの能力だ。

 召喚する物は魔猫(エビル・キャット)という猫。

 その姿を頭に思い浮かべる。

 スラっとした感じで金眼の白猫。


 よし、これだ!


 『召喚(サモン) 、エビルキャット!』


 床に魔法陣が浮かぶ。

 すると中心に光が集まっていく。

 しだいに光は大きくなっていき、それは一瞬で弾けた。


 「う……お…」


 思わずよろけてしまった。

 あまりの光の大きさに目が眩んだというのもあるが何より体がダルい。

 これがいわゆる魔力切れという奴なのか。

 

 「大丈夫ッスか? 召喚って魔力の消費が激しいんッスよ」


 「いや、あんまし大丈夫じゃない……あ、なんかいる」


 魔法陣の中心には猫がいた。


 「どうやら成功らしいな」


 その白猫は金色の眼をしていてちいさな羽の生えたシュッとしたかんじの白猫だった。

 じーっと見ているとこっちを見つめ返している。

 すると

 

 「お前がワタシの主人かニャ?」


 喋る猫だった。

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