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第17話


 今着地地点から少し歩いて門の前にいる。

 門は見たこともないような巨大な門だった。


 「うわぁ、門もでっかいな。50メートルくらいあるんじゃないか?」


 それこそフランスの凱旋門ぐらいのサイズだ。


 「オーガの特にデカイやつを招く時はこの門で丁度いいくらいじゃよ」


 「マジか。果てしないなオーガ。でもアンタサイズは流石に規格外だよな」


 「丁寧に穴抜け感覚で通ったらいけなくはないぞ」


 そこまでして通るなら人になった方が遥かに早いだろう。

 

 「あっちの人用の門を通るといい」


 巨大な門の横には普通の門が設置されていた。


 「やっぱり人間用があるのか。確かにこんなのいちいち動かしてたら面倒くさいもんな」


 さて、そろそろ門をくぐろうかと目の前まで行った時、ふと違和感を覚えた。


 「? なんか変な感じだな、この門。いや、この周りか?」


 集中してみると、非常にわかりにくいが、城全体が薄く魔力に覆われている。


 「ほう、それに気付くか。大した感知力じゃな。念のため言っておくが門以外に触れると警報と魔法攻撃を食らうぞ———「なんだこれ?」……あ」


 「え?」


 俺たちの間の抜けた声が出るのとほぼ同時だった。

 ビーッと甲高い警報音が鳴り響いた直後、周辺から複数の魔力反応が出現した。


 「馬鹿もんが! 人の話を最後までちゃんと聞かぬかッ!」


 ドランバルトよ、あんた言うことももっともだが、


 「そういうのは先に言ってくれよ!」


 その瞬間、神眼が自動で発現した。

 数秒先の未来が見える。

 ついこの前知ったが自分が負傷する様な事が起きる場合、この様に神眼が自動で発現するらしい。

 そして見えたのは、


 「いいっ!」


 複数方向から魔法の遠距離攻撃が俺を襲う光景だった。


 これは結構ヤバイ。方向が違う上数も多いな。でも避けきれなくはない。よし……


 集中し、一瞬で次の一手を考える。

 四方八方から俺に目掛けて魔法が飛んでくる。

 当たる位置も時間もてんでバラバラ。

 しかし、全く隙がないわけではない。

 それを俺の能力で最も被害が小さい未来を見つける。

 行動を変えようとした場合見える未来は変わってくるからそれを利用するのだ。

 それを今まで通りやる。

 数が多くてもすることは変わらない

 そして、


 「ここだ!」


 魔法同士の隙間が最も広い位置に躱す。

 それでも当たらざる得ない魔法は、


 「らぁッ!」


 斬る。


 魔法にすうっと刃が入り真っ二つに分かれて飛んでいく。

 

 「いやー、一度やって見たかったんだよな。魔法を斬るってやつ」


 いつか出来ないものかと以前から思っていたのでいざやってみると結構嬉しい。

 男としてこれは人生で一度はやってみたみたかったのだ。

 剣に魔力を帯させた状態にさせると魔法は斬れる。

 これは空護から教えてもらった。

 ちなみに槍だったら貫けるし、鞭だったら弾くことも、巻きつけることも可能とのことだ。

 再び魔法が放たれるが、それも同様に躱しつつ斬る。

 しかし、それでも捌ききれない場合がある。

 そう言う時は、


 「《時間加速》ッ———」


 遅くなっている間に回避する。

 なお、インターバルがあるので連続使用は出来ないがこれで大抵は回避可能。


 「地味だけど戦闘向きだな。あとはもっとちゃんとした強化が出来れば白兵戦は結構良いかもしれない」


 暫くそれを繰り返すと魔法が来なくなった。


 「終わりか? ……いや、自分で言っておいてなんだけど、今のはフラグになるな」


 『警戒度3に移行する』


 思った通りフラグだった。

 何処からともなく聴こえてきたその声により一層警戒心を高めた。


 「よし、来るなら…こ……い………………おいおいおいおい……!」


 先ほどとは威力が明らかに違う魔法が俺を襲う。

 これはマズイ。

 いや、威力が高いだけならまだ良かった。


 「それはシャレになってねぇぞ!」


 その数なんと50発。

 それが一斉に向かっていた。

 神眼を使うが逃げ道が見えない。

 ことごとく死に繋がっている。

 強化を全開にするが恐らく防ぎきれない。

 絶体絶命だ。

 そして今その距離およそ10cm。


 これ死ん———


 「解除!」


 その声が響いた瞬間、目の前まで迫っていた魔法が全て消えていった。


 暫くその場は静寂に包まれた。


 「———でない?」


 生きてる、のか?


 どうやら死なずに済んだ様だ。

 まさに九死に一生を得た。


 「はぁ、良かった。間に合った様ですね」


 後ろを振り返る。

 そこには長身の上品な感じの女性が立っていた。


 「ミヤシタ・トキ殿、でよろしいですか?」


 「えっと、どちら様?」


 「ああ、これは失礼しました」


 彼女は俺の目の前まで来ると、お辞儀をして名前を名乗った。


 「私はこの天宮の守護天使統括のアーデルハイトと申します」


 その丁寧な所作に思わずしどろもどろになってしまった。


 「えっと、俺は宮下 刻、です。えと、助けてくれてありがとうございます」


 しまった、ぎこちない。俺こういう敬語が丁寧な人と会話するの苦手なんだよなぁ。


 「もっと自然に話されてもらって結構ですよ」


 それは助かる。


 「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう、助かった。それじゃあよろしくアーデルハイトさん」


 「はい、よろしくお願いします」


 アーデルハイトさんね、よし覚えた。ん? アーデルハイト? ……あっ、この人がアーデルさんか。


 奈々に頼まれたアーデルさんと言うのはこの人のことだろう。

 聞いた容姿と一致している。


 意外と早く見つかったな。忘れる前に渡しておくか。


 「急で悪いけど、これ」


 俺はボディバッグから預かった袋を取り出して渡した。


 「これは?」


 「先輩……兎月 奈々さんから預かったんだ。お見舞いの品らしい」


 それにしても、よく見舞いを渡すレベルに仲良くなれたなあの人。コミュ症丸出しのキャラでオタク丸出しのキャラのやつと仲がのは解せ———


 「えっ! 奈々ちゃ…………奈々さんからですか」


 ……ん? 奈々ちゃんって言ったよな?


 「今奈々ちゃんって……」


 「空耳です」


 俺の声に覆い被さるようにして言った。


 「でも今確かに……」


 「空耳です」


 怖い。

 目が。

 そんな目で睨まないでくれよ。


 「……はい」


 俺はその圧に負けて聞くのをやめた。

 なんとなくアーデルハイトのキャラが見えた気がした。

 あれはきっと素だ。


 「情けないのう」


 後ろにいたドランバルトがやれやれといった表情そう言った。


 「爺さん、すっかり忘れてた。そういえばさっき狙われてなかったな」


 「あくまでも結界に触れたのはお主だけじゃからな」


 「あーなるほど、ってちょっとは助けてくれたっていいじゃねぇか! 爺さんが言ってたらあんな目に遭わなかったんだぞ!」


 この爺さんなら楽勝だっただろう。


 「お主がが話を聞かなかったのが悪いんじゃ」


 ほっほと笑いながら言った。

 俺にとっては全然笑い事じゃない。


 「ぐぬぬ、その通りなだけあって言い返せない」


 確かに悪いんだけども。でも死にかけたんだからなぁ。


 「まあ、そう怒りなさんな。アーデルが見えていたからのう。解除が間に合うのはわかっていたから何もせんかったんじゃよ」


 ぐぬぬ、なら仕方ない。


 「はぁ、とりあえずはそれでいいや」


 俺は渋々了解した。


 「お二方、そろそろ中に入りましょう。ここで話し続けのもなんですから」


 今度こそ安全に門を通ることができた。




———————————————————————————




 「おお、中の方も凄いな……」


 正面の入口を入ってすぐの場所は神殿の様な作りだった。

 見たことがある様なものもあれば、何に使うんだ?と思うようなものまで様々だ。

 今俺はさっきのことがまるで無かったかの如く、すっかり調子を取り戻したアーデルハイトに中を案内してもらっている。


 「ここは儀式の間です。中央にある“あれ”を供給源としています。例えば召喚や契約などを。これらは魔力の消費が激しいですから」


 「“あれ”?」


 中央を見てみると、通常の魔石よりずっと大きい魔石があった。


 「あれは魔石の原石がモンスターになる前に取り出した【クリスタル】と呼ばれる物質です。ランクS+以上の高ランクモンスターの中でも極々稀に発生する高密度な魔石じゃないとクリスタルは採取できないので、とても貴重なものですよ」


 「へぇ」


 そんなものがあるのか。確かに魔力を感じる。一定量の魔力が流れっぱなしって感じだな。しかもどんどん出てきて減る気配が無い。


 「ワシの元になった魔石も元はあんなんじゃったのかのう」


 「え、爺さんモンスターだったのか?」


 確かモンスターは魔石から生まれる意思を持たない器の筈だ。


 「ワシら魔獣はモンスターに意思が宿ったものじゃからな。魔石が生み出す器に魂が入ると魔獣になるんじゃよ。特にワシはその中でも頂点にある神霊魔獣なんじゃ。びっくりしたか?」


 なんかデジャヴるな。


 「神霊魔獣? あれどっかで聞いた———あ!」


 シロナだ。確か神霊魔獣とかなんとか言ってたな。それなら呼んでみるか。


 「おいシロナ、起きろ。知り合いがいるかもしれないぞ」


 しかし返事はない。

 そういえば今まで自分から呼んだことは無かった。


 「なあ爺さん。契約した魔獣を呼ぶにはどうすればいいんだ?」


 「ぬ? なんじゃお主、契約の時にきいておらんのか。はあ、それは余程間抜けな魔獣か横着な魔獣じゃな。とりあえず体内の魔力を滅茶苦茶に荒らしたら驚いて出てくるぞ」


 「そうか、よし」


 目を瞑り集中する。

 全身をめぐる魔力を荒れさせる。


 こうか?


 「ふぅっ!」


 イメージとしては魔力が流れる波紋を立ててあれた波を作る感じだ。


 うっ…思ったよりキツイ。


 そして数秒後、


 「ニャニャニャ、ニャンだニャ!?」


 シロナが飛び出してきた。


 「よう、おはよう」


 「ご主人なんでこんなに魔力を荒らしたニャ!? ビックリするじゃニャいか」


 「お前呼んでも起きないからな」


 こいつは多分間抜けプラス横着だ。


 「それで何の用ニャ?」


 「何の用って、俺一応お前の主人なんだが……いいや、この爺さん神霊魔獣らしいぞ」


 それを聞くや否やシロナはもの凄い形相でドランバルトを睨みつけた。


 「お前がワタシの眠りを妨げたニャンか———ニャ?」


 「なんじゃこの猫は。ピーチクパーチクうるさい———む?」


 「……ゲッ」  「なっ!」


 反応は違ったがこれは、


 「知り合いか?」


 「ジジィ……!」


 「久しぶりじゃのうニャンコ」


 お互い物凄い剣幕で睨んでいた。

 思った以上に因縁があるようだ。


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