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閑話1

閑話なので今回は短めです



 台所の掃除は腹がパンパンになってご機嫌な響が手伝ってくれたのですぐ終わってしまった。


 「思ったより時間余ったな。残りは何しようかな」


 する事がない。手持ち無沙汰だ。ここは娯楽がないもんなぁ。


 何も無いここであと1時間はかなりしんどい。

 

 頼まれごともないし……あ!


 「そうだ! 店名考えよう!」


 いつか、空護と話したのを思い出した。『異世界スイーツ屋』という酷い店名をどうにかするんだった。


 「いい感じの暇つぶしだ。立派なの考えないとなぁ」



———————————————————————————



 俺は店名についてじっくり考えてみた。

 しかし、何かに名前をつけるというのは想像以上に難しく、全く浮かんで来ない。


 「店の名前って案外浮かんで来ないもんだな」


 ありとあらゆる店の人はこんな大変なことしてんだな、と素直に凄いと思える。

 名前というのはやはり店の看板の様なものだから、それなりに洒落た名前にしなければならない。


 「とは言ってもなぁ」


 生まれてこの方名付けという作業を殆どやった事がないので、ものすごく悩ましい。

 ついこの前猫に『シロナ』という名前を付けたが勝手が違う。

 まあこれに関してはそれなりにいい名前だと思う。


 「印象……キーワード……スイーツ、異世界、うーん、難しい。最近は意味ありげでない名前とかもあるから意味にこだわるのはバツか? でもそれは好みじゃないしなぁ……」


 「何してるの?」


 ブツブツ言っていた俺を不審に思ったのかミルが尋ねてきた。


 「この店の名前を考えてるんだけど……なかなか思い浮かばないんだよね」


 こんなこと言っても仕方ないと思うけど。


 「ふーん。名前かぁ、私もね、今鳥さんの名前考えてるんだー。ほら、あっちだよ」


 ミルが指した方向に鳥籠があった。

 籠の中には青い色の鳥が入っていた。

 

 「ナナおねぇちゃんとヒビキおねぇちゃん……あ、間違えた。ヒビキおにいちゃんだった」


 「ははは、おにいちゃんか。まぁ、あいつ口は悪いけど見た目は結構華奢だしな。空護もちっちゃいってからかってたし」


 本人は気にしてる様だ。


 「ヒビキおにいちゃんはなんか、『カラアゲ』とか『オヤコドン』とか『ターキー』とか言ってた」


 「食いもんばっかじゃねぇか! 」


 ブレない食欲だ。特に親子丼はニックネームにもならないだろう。


 「ナナおねぇちゃんはねぇ、ペンペ……」


 「はい、ストップ。それはダメだ。そもそもそれペンギンの名前だし」


 アウトだ。エ◯ァは駄目だ。色合いはそうだが駄目だ。


 「それであのコの名前を考えたんだけど、私はね、『アジサイ』がいいと思うんだー」


 アジサイ?


 鳥の体の色———青と白はよく見ると紫陽花の様な色をしていた。

 というか異世界に紫陽花なんてあるのか?


 「あっ、奈々ちゃん先輩」


 通りかかった奈々に尋ねることにした。


 「うん? どうしたのー?」


 「この世界って、向こうの野菜とか果物はほぼ無いのに花はあるのか?」


 「ああ、花はあるよー。花が好きな、多分異世界人が見た目そっくりな花を能力で作ってるんだー。だからこの街と周辺には結構広まってるよー。厳密には本物とは香りとかはまだ再現しきれてないけど近いものは出来てるのー」


 ほぉ、能力で花をねぇ。洒落たことしてるな。ともあれ理由はわかったからスッキリした。


 「なるほど、花か……ん? あれは……」


 店の奥にシロツメクサに花が飾られていた。

 あそこは確か空護がうろついてるとこだ。


 「シロツメクサ…………お、いいかも。うん、そうだ。それなら結構洒落てるかもな」


 「ありがとな、ミルちゃん、先輩!」


 これはいい。空護に聞いてみよう。



———————————————————————————



 「おーい、空護。ちょっといいか?」


 「なんスか?」


 空護はさっきのシロツメクサのとこにいた。

 ちょうどいい。

 説明がしやすくなった。


 「このシロツメクサッスか? これは師匠の誕生花ッスからからなんとなく置いてあるッス。5月9日生まれッスから」


 「5月9日? おお、俺も一緒だ」


 なんて偶然。


 「へぇ、珍しいこともあるッスね」


 「そうだな。いや、そうじゃなくて店名の話だ。そのスミレも関係あるけどな」


 「へぇ、もう考えたんッスか。それでどんなッスか?」


 「俺が考えたのは……」


 俺はシロツメクサの花に手を添えた。


 「これだ」


 「これって、シロツメクサ?」


 「ああ、シロツメクサにちなんで『クローバーガーデン』ってどうだ?」


 意味もちゃんとある。


 「なんかそれっぽい感じでいいッスけどなんでッスか?」


 「このシロツメクサの花言葉は“幸せ”。つまり、その名前の通り、この店に訪れたお客さんにスイーツで幸せを感じて欲しいっていう意味を込めて、って感じだ。ガーデン……庭だからそれが沢山あるって感じの意味合いで付けた。どうだ?」


 「おお! いいじゃないッスか! 凄くいいッスよ、それ!」


 「んじゃ決まりな。可能なら飾る様に沢山シロツメクサがあった方がいいと思うぞ。主張しすぎない程度でいいからさ」


 「そうッスね、それでいくッス」


 自分としてはいい名前を付けられたと思う。

 今日からこの店は『クローバーガーデン』だ。

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