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第15話


 「さて、魔石回収するッスよー。それ売って臨時の小遣いにするッス」


 やはり魔石は換金アイテムのようだ。

 冒険者も倒したモンスターの魔石を売って収入にしているのだろう。


 「だいたいどんくらいになるんだ?」


 「そうッスね。こいつらだとだいたい平均1体5000マルクッスから……20万マルクくらいッスね。こんな大量発生するとは思ってなかったッスから思わぬ儲けッス」


 よくよく考えたらどのくらいの価値かわからない。というかこの数は想定外だったのか。


 「大体日本円でどんくらいだ?」


 「だいたいクレープ1個400マルクくらいッスから日本円と同じくらいッスね」


 「ということは日本円で20万か!」


 こんなあっさり倒して20万はかなりおいしい。


 「いや、そんくらいならすぐ使っちゃうッスよ。店はまあお世辞にも儲かってるとは言えないッスから」


 まあ、週3だし四六時中客で溢れかえってるイメージもないからな。


 「装備とか消耗品にもお金使うし、税として利益の60パーセントくらい持って行かれるッスからね。最終的に残るのは2万くらいッス。大体10分の1」


 「めちゃくちゃ持ってかれてるな。2万て」


 冒険者も大変だ。

 ある程度強くないと収入にならないのだから。

 

 「5等分するッスから1人、4000マルクくらいッスね」


 4000か。貯金しよ。


 「よし、回収も終わったし帰るッスか」


 すると空護は神眼の能力を発動させた。


 「《空間転移》」


 すぐ目の前の空間が歪み始める。

 じわじわと歪みは広がっていき、大きさは人1人分くらいになった。

 中心からだんだん安定してあるものが見えるようになる。

 映ったのは店だった。


 「僕だけが使える近道ッス。一箇所しか出口を設定出来ないッスから店を選択してるッス」


 「相変わらず便利な能力だな」


 「いいっしょ、これ。まあ、ためが長いせいで戦闘向きじゃないのが残念ッスけどね」


 残念と言っているがそれを差し引いても便利な能力だ。

 俺の能力もスゴイっちゃスゴイが日常生活ではまあ使えない。


 あ、でも先見の眼は便利かも。なんせ予知だからな、予知。じゃんけんとかもう負け無しじゃね?


 「じゃあ帰るッスよ」


 「へーい」


 俺はワープホールをくぐった。

 行きがけに30分かかった道を1秒で帰る。



———————————————————————————



 「ただいまッス」


 「うわっ、どこから出て来たの!?」


 リビングにいたミルがどこからともなく現れた空護に驚いていた。


 「すごいね! どうやってやったの?」


 「ふっふっふ、僕の能力ッスよ〜。どんなところからでも店に戻れるんッス」


 ここでは空護の扱いがぞんざいなので尊敬の眼差しを受けるのが嬉しいのだろう。

 俺は空護が調子に乗るのがなんとなく癪なので、はっきりと褒めたりしない。

 ようにしているが確かに凄いのは認めざるを得ない。


 「そうそう刻君。あと3時間くらいしたら今度はここの神様のところに行くんで準備しといてッス」


 やはりお偉いさんというのは神のことのようだ。

 挨拶しに行く決まりなのだろうか。


 「とりあえずわかった」


 さて、3時間なにをして過ごすか。

 目下のところやらないといけないことは特に無いので暇を持て余している。

 そういえばゆっくりする時間はあまりなかった気もする。

 とはいえ特にしたいことも思い浮かばない。



 「あ、そうだ。響に何か作ってやるか」


 コック王のスキル上げをすることにした。


 

———————————————————————————



 「と言うわけでコック王のスキル上げがしたいので手伝ってくれないか? いつか飯作るって約束してたし」


 「おお! マジでか! もちろんだ」


 時間も潰せて約束も果たせる。

 一石二鳥だ。


 「よし、それじゃあ……」


 俺はなりふり構わず作りまくった。

 和も洋も関係なしに知ってる料理を作りまくった。

 食材不足はこの際気にしない。

 店の方で必要な食材だけ残して作った。

 響の方も腹を空かせてたようで大量に食っていた。

 そのおかげで、


 「お、上がった!」


 コック王《Lv.2》になっていた。


 鑑定の結果、料理にステータス付加が出来るようになった。

 ちなみに鑑定を使ってスキルなどを凝視するとそれの詳細が表示される仕組みになっている。

 俺がそれに気がついたのはついさっきのことだ。


 「よし、とりあえず軽いもん作って効果を試してみよう」


 鑑定でどういう効果が発揮されるのかは知っていたが試してみたい。

 百聞は一見にしかず、いや一食にしかずだ。


 「うーん、コロッケでいいかな」


 基本の手順通りコロッケを作る。

 今回じゃがいもが無い、というよりこの街にないのでスキルの選択で代わりのものを代用した。

 ゴブ芋と言うゴブリンの顔を形取った芋に、これまたスキルで作った謎の調味料を使う事で見事にじゃがいもっぽい味の芋になった。

 どうやらこの世界には動物から取れる食材は見知ったものが多いが野菜、果物などは知らないものが結構ある。


 話が逸れたがステータス付加は作業中ランダムで付加されるらしい。

 付加しないように意識したら無しにもできるが今回は無しにはしない。

 

 「さて、どの程度付加されるのか……ん?」

 

 何かが起きた。

 あまりに些細な変化だったので本当に変わったのかわからない程度の変化。

 かなり分かりにくいが何かを吸われたような感覚だった。

 もしや思いステータスを見る。


 魔力値のところを見ると、100程減っていた。


 「なるほど、魔力値が減るのか。それでも小さいペナルティだから気にしないけど」


 俺はそう思っていたが常人にとって100は結構デカイ。

 一般の男性の平均魔力値は10だから、ただの料理人では魔力値が足りないのだ。

 

 「よし、終わり!」


 揚げたコロッケを皿に移す。

 見た目では特に変化は無い。

 あったらあったで気持ち悪いが。

 今考えても始まらないのでとりあえず食べる事にした。


 「どれどれ」


 …………普通にうまい。


 特に変化が感じられないまま1つ食べ終わってしまった。


 「おかしいな、ちゃんと手中通り踏んだ…………お? おお、お!」


 身体が発光していた。

 全身に纏うようにして緑の光が包んでいる。


 「付加されたっぽいな」


 鑑定で見てみると、生命力が[+10]となっていた。

 その横に23:59:51と書いている。


 「おお、マジで付いてる。横の数字はリミットか?一日って結構長いな」


 付加されたのは10ぽっちだがそれでも立派なステータス付加だ。

 スキルはまだまだ成長の余地がありそうなので楽しみである。


 「とりあえず実験ついでだから違うものにも付加するか」


 次はさっきと違う変わったコロッケを作る事にした。

 チーズコロッケだ。

 細かく切ったチーズをゴブ芋で包む。

 同じものばかりでは面白みが無いので少し工夫した。

 後は普通通り作れば完成だ。


 「そろそろか…………ん? あれ? 心なしかさっきより吸われたような……」


 気のせいかもしれない。

 とりあえず放置しておく。


 「よし、完成」


 チーズコロッケが出来上がった。


 一口頬張る。


 「うむ、うまい。このスキルマジでいいな。さて、効果は如何なものか…………お?」


 今度は生命力が[+15]となっていた。


 効果が大きくなってる。手間が増えたからか? 上がったのは変わらず生命力だし……あ、鑑定で見ればいいのか。


 俺は鑑定で詳細を調べた。

 その結果はこうだ。


 野菜系は生命力が、肉系は体力が、魚系は機動力が、穀物系は魔力が上がる仕様。

 知力は無いらしい。

 食ったら頭が良くなるってのはないようだ。

 バカは勉強しろって事。

 それと、増える値の方は、手の込んだ料理であればあるほど付加が大きくなるらしい。

 あと、勘違いしていたのはスキルが料理を作るのではなく、スキルは料理の味の向上に貢献しているようだ。

 本人がある程度作り方を知らないものは作れないらしい。

 しかし、長年の一人暮らしと多趣味だった頃の経験によりそこは問題ない。

 それともう一つ、付加無しのオプションがある理由は魔力の浪費防止と付加の上書き防止だった。


 ある程度理解できたぞ。料理なら需要あるし、使えるスキルだ。


 俺はチラッと響の方に目をやった。

 どうやら満腹の様だ。

 今日はこのくらいにしておく事にする。

 ぼちぼち2時間経っているので丁度良かった。



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