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第14話


 再び森に入った。

 もう何度目の再びだろうか。

 散々迷った思い出が頭を過る。


 「……もうちょいッスね」


 しかし、空護はスイスイ進んで行く。

 迷っていないようだ。


 「お前道がわかるのか?」


 「わかるッスよ。能力の一つに周辺の様子を見渡す能力があるんッス。ステータス見てみるッスか?」


 確かに興味がある。

 俺以外の異世界人のステータスはどんななのか気になる。


 「見たい。けど、見れるのか? 俺じゃ権限が足りないんだろ」


 「いや、見る方法があるんッスよ」


 「そうなのか?」


 それは初耳だった。


 「自分より権限が低い相手からの鑑定を受けた場合見せるか弾くか選べるんッス」


 成る程。

 確かに味方も見れないってのは不便だろう。


 「それじゃあいいッスよ」


 俺は空護を鑑定した。


——————————————————————————


 名前:藤崎 空護


 種族:人間(異世界人)


 年齢:16歳


 身長:180cm


 体重:60kg


 生命力:100000


 機動力:10000


 魔力値:20000


 体力:100000


 知力:100


 保有スキル:神眼(空間遮断、空間決壊、空間創生、空間探知、空間転移、アイテムボックス、虚空、***) 魔力探知、炎魔法 攻《Lv.3》、風魔法 攻《Lv.MAX》、回復魔法《Lv.2》、強化魔法《Lv.3》無詠唱、魅了(チャーム)《Lv.3》、生成魔法《Lv.3》


———————————————————————————




 「…………」


 今の俺はさぞ間抜けな顔をしていたであろう。

 あまりの格の違いに口を開けたまま固まってしまった。


 「ば、バケモンだ……」


 ああ、バケモンだ。なんだこいつバケモンじゃないか。


 「言うと思ったッス。まあこんくらいは頑張らないとッスね」


 「こんくらいってレベルじゃないぞ……」


 「心配ないッスよ。異世界人は初期ステータスがぶっ飛んでるッスから、頑張れば僕ぐらいにはなれるッス。ただ僕は人より神眼の能力数が段違いに多いッス。他の人は精々3つ4つくらいッス」


 「ふーん。なんで?」


 「さあ?」


 ラッキーって事なのかな? でも、倍ちかくの数ってのは凄いな。まあ俺も数字12個分の能力が身につくんだろうけど。でも12って限定されたのはなんだかなー。 っと話の途中だった。


 「ああ、それと成長速度の方もこの世界の人達とは比べ物にならない、と思うッス」


 確証はないらしい。

 だったら“それと”とか知ってるっぽく言うなと思った。


 「それじゃあ刻君のも見せて貰っていいッスか?」


 「いいけど……お前よりは全然低いぞ」


 俺は自分のステータスを空護に見せた。

 空護は少し黙って感想を言った。


 「なるほど、現時点でも中堅冒険者は圧倒できるくらいの強さッスよ。ランクでいうとBクラスくらいッスかね」


 「ランク? ギルドがあるのはなんとなく聞いたからわかるけど、やっぱりそういうのがあるのか?」


 「あるッスよ。ランク分けしないと実力不足で死ぬ人がいっぱい出ちゃうッス。とくに人気職なんでたくさん冒険者がいるってこともあるッスからね」


 やはり異世界。

 ここならではの仕事もちゃんとあるようだ。

 機会があれば小遣い稼ぎに行ってみるのも手かもしれない。

 最高ランクまでいってみたいとも思う。


 「そういやなんか読めないのがあったんだけど、ありゃなんだ?」


 すると空護はふっふっふ、と意味深な笑いを浮かべた。


 「あれは裏ワザみたいなもんッスよ。もうヤバイッスよ、裏が10個ぐらいつく裏ワザッス」


 自信満々に言う。

 どうやら凄い代物らしい。


 「裏が10個だったらそりゃ表だ。はっはっは、どうやら頭までは成長しなかったらしい」


 俺がそう言うとわざとらしく咳払いをして、


 「オホン、とにかくあれは伏せておくッス。いざって時にシュパッと出した方がカッコいいッスからね」


 「ふーん」


 本人が伏せたがってるなら仕方がない。

 これ以上は言わないでおこう。


 「さて、もう少しで着くッスよ」


 目の前には少しひらけた場所があった。


 「おお、広いな。あそこか?」


 「そうッス」


 あそこら辺だけ岩場になっている。

 周りが森な分より目立つ。


 「この辺に何があるんだ?」


 「この辺には……」


 空護が言おうとした瞬間、ある者によって遮られた。


 「グルルルル……」


 「!」


 「来たッスね」


 現れたのは1匹の獣。


 「なんだあれ……犬? いや、狼か?」


 巨大な獣はこちらを睨んでいる。

 あれは強い敵意を浮かべた目だ。


 「ちょっと前に言ったッスけどモンスターってのは魔石から生まれるバケモンのことッス」


 「ああ、言ってたな」


 「魔石はある日突然自然発生して魔力を貯め、ため終わる時に溢れた魔力でモンスターに変換されるッス」


 そういう仕組みなのか。


 「魔石は魔力が豊富なダンジョン等で多く発生し、人々が魔力を使っている街などには全く発生しないッス。ここは結構魔力が多いッスよね。だからこの辺は魔石生成地点が大量にあるッス。つまりここは……」


 あたりからガサガサと音がなる。

 どうやら囲まれたようだ。 

 周辺からは相当数の魔力の塊が感じられる。


 「おいおいマジかよ……」


 狼だけでは無い。

 イノシシや骸骨やゾンビまでいる。


 「所謂モンスターハウスってやつッス。屋外ッスけどね」


 「ギュアアアアアア!!!」


 モンスターの群れはもうすぐにも襲ってきそうだ。


 「異世界転移から三戦目はモンスターハウスでモンスター祭りってわけかよっ!」


 見渡す限りバケモノで埋め尽くされた岩場。

 モンスター初戦がこれとは我ながら運がない。


 「シルバーウルフにグールにサンダースケルトンッスか。基本的にランクは“C+”ってところッスね。でも数がちょっと多いッスから刻君は苦労するッスよ。さあ、構えるッス。僕がこっちを相手してるんで刻君はそっちを頼むッス」


 モンスターは総勢40体といったところだ。

 その内俺はおよそ半分を請け負うことになった。


 「しょうがねぇな。……来いッ!」


 ここに来たばかりの俺なら尻尾巻いて逃げてたかもしれない。まあまだそんなに経ってないが。でも何故か負ける気はサラサラ無かった。



 まず4体ほど突っ込んできた。

 

 狼が4体、先程空護がシルバーウルフと呼んでいたのがまとめて飛んできた。

 恐らくこの中で最も機動力がある。


 俺は神眼を発動する。


 「《先見の眼》……!」




 見える。時間差で仕掛けてくるな。右前のが右肩を、左前のが左肩を、右後ろのが脇腹で残った左後ろのやつが足を狙ってくる。


 俺はギリギリまで引きつけた。

 前の2体が来る。


 「…………ここッ!」


 半身になり右からの攻撃を捌き、左のシルバーウルフを斬り上げる。

 虚をつかれたシルバーウルフはそのまま首を落とすと同時に魔石になった。


 言ってた通り生きものじゃ無いんだな。よし、まず一匹。


 そして間髪入れずに次の攻撃が襲ってくる。

 俺は脇腹を狙って来た狼は回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。


 「ギャン!」


 足を狙って来た方の噛みつきを飛んで躱し、そのまま突き下ろした。


 よし、2匹目。


 刹那、背中から寒気を感じた。

 俺が攻撃を仕掛けている隙に蹴り飛ばした1匹がすぐに攻撃していた。

 しかし、


 「とっくに視えてたぜ!」


 地面に突き立てられた剣を後ろ向きに振る。 

 3匹目を仕留め残った1匹に目をやった。


 「紛れたか……」


 仕留め損ねたもののいきなり3体も倒せて順調だと思う。

 この前の戦いで上がったステータスのお陰だ。


 「やっぱり体が軽い。ステータスってでかいな」


 後残るのは、グール7体とサンダースケルトン9体とシルバーウルフ1匹。

 どうしたものかと考えている最中、突然魔力の動きを感じた。


 「うおっ!?」


 あっぶね〜。見てなかったら直撃だった。サンダースケルトンからの雷魔法か?いや、でも詠唱して無かったな。無詠唱使える……ようには見えないな。なんにせよ厄介だ。

 

 避けれたとはいえ雷はかなりの速度だった。

 連携を取られたら厄介な状況になるだろう。


 「うーん……俺、範囲攻撃的なもの持って無いしな……っと!」


 雷だ。


 「とりあえず接近するか」


 俺はサンダースケルトンを狙う。

 厄介な敵は先に叩くのは戦いの定石だ。と何かの本で読んだ。

 飛び道具ありの多対1は流石に経験がないのでとりあえず分かっている知識で対抗する。


 「このまま…………わっ!」


 近づいた矢先スケルトンに囲まれた。

 嫌な予感がしたので神眼を発動する。

 視えたのは、


 「マズッ……ぐッ!」


 雷に撃たれる俺だった。

 これでは100パーセント当たるので被害を抑えるため、防御態勢をとる。


 「……痛ッ!」


 魔力で全力で防御したものの、かなり痛い。

 流石にただの魔力では防げないようだ。

 本格的になんとかせねば。


 「《時間加速》」


 時間がゆっくりとなっていく。

 俺はグールの群れへ近づいた。


 スケルトンは後だ。とりあえずグールから片ずける!


 ゾンビのような容貌のグールは案の定動きがだいぶスローだ。

 能力の分今はさらに遅い。


 「っらぁッ!」


 手前にいるグールから順に斬っていく。

 俺は近くにいたグールをバラバラに斬りまくった。

 群れにいたグールのうち4体ほどはバラバラになった。


 「どうだ?」


 しかし、すぐには魔石にならない。


 あれ? 何で変わらない?


 すると、


 「! 危なっ!」


 頭上に手刀が振り下ろされた。

 躱した俺は後ろを振り向く。

 先見の眼を使ってなければやられていただろう。

 何とグールが復活していた。


 「なっ!」


 それにつれて次々起き上がるグール。

 バラバラになった体は一気に修復されていった。


 「冗談だろ……」


 その後も斬ったがすぐ復活していった。

 一体細切れにしたが復活した。

 しばらく繰り返していたら、雷まで飛んできた。


 「クソっ、キリがないな!」


 イライラしながら横を見ると空護が……明らかに遊んでいた。

 フラフラ避け回って当たりそうになったら空間断截で攻撃を遮る。

 恐らく俺が倒すのを待っているのだろう。

 とは言っても……


 「これじゃ戦いようがない」


 負けはしないが勝ちもしない。

 スケルトンは近づいたら雷の餌食で、グールの方は斬っても斬っても復活する。

 恐らく正しい攻略法があるのだろうが俺はそれを知らない。


 「どうする……」


 考えた。

 しかし、何も思い浮かばない。

 こうなったら空護に頼むか……


 …………


 ふと声が聞こえた気がした。

 どこから聞こえたのかはわからない。

 しかし、参考になる意見だ。

 その声は確かにこう言った。


 あの技をやってみたらどうだ。


 あれが魔法ではないのだとしたら魔法書は必要ない。と思う。

 敵の雷をよく見てみた。

 仕組み、発動条件、魔力の使い方いろいろ観察する。 

 頭の中にスゥっと情報が入ってくる。

 この感覚は魔法書と同じだ。

 

 あれ? なんか出来そう……


 「ほいっ」


 轟音。

 それは森中に鳴り響いた。

 驚いた鳥たちが慌てて飛んで行く。

 俺の方は俺の方であまりに咄嗟に起きたので暫く固まっていた。


 「……やっ!」


 我に返って周りを見渡す。

 轟音の原因はあたり一帯飲み込み周辺のモンスターを一掃していた。

 俺はサンダースケルトンの放った雷の数倍の威力のものを放っていた。


 「…………は?」


 空護がこちらを見て口をパクパクしていた。


 「ななな、なんでモンスターのアビリティ使えてるんッスか!」


 「いや知らねーよ! なんか出来たんだよ!」


 もしかしたらまぐれかもしれない。

 そう思いもう一度放つ。

 今度は空護サイドのモンスターを一掃した。


 「………………」


 「………………」


 ひたすら沈黙が続いた。

 

 ようやく口を開いた空護はこう言った。


 「……刻君ってチート野郎なんッスか?」


 「いやお前がいうな!」


 なんだ一体、マジでなんで使えるんだ!?


 「何なんだよあの威力! ガイコツヤロウのと比べ物にならねぇじゃん!」


 「刻君の魔力のせいッスよ! 魔力に関してはアホみたいに高いんッスから!」


 俺たちがギャーギャー騒いでると、影から何かが生えて来る。


 「やっと使ったニャンか」


 シロナが出てきた。


 「うおぉぉ……びっくりしたッス」


 毎度毎度急に生えて来るのをやめてほしい。

 もう慣れたが。


 「というと?」


 「私と契約したことによるボーナスニャ。契約者は契約した従魔から特殊能力を付与されるニャ」


 俺が混乱を収めていると、空護が思いついたような顔をした。


 「なるほど、契約スキルッスか。神霊魔獣クラスじゃないと付かない特殊なスキル」


 「ご明察ニャ」


 いまいちピンとこないな。


 「見たほうが早いニャ。ステータス見てみるニャ」


 ——————————————————————————


 名前:宮下 刻


 種族:異世界人(人間)


 年齢:16歳


 身長:175cm


 体重:60kg


 生命力:4000/4000


 機動力:1000


 魔力値:10000/10000


 体力:5000/5000


 知力:120


 保有スキル:神眼(時間加速、先見の眼、⁇?)・魔力感知・コック王・神鍵力感知


 契約スキル:アビリティコピー(死霊の雷)


———————————————————————————



 「このアビリティコピーってのがそのスキルなのか?」


 「そうニャ。モンスターが使うアビリティという特殊スキルを習得出来るニャンよ。習得条件は一度食らうことニャ。生きていればそのまま使えるニャ。失敗したら死ぬけど。あと、あまりにも自分より権限が高いモンスターからは特技が得られないニャン。食らって生きててもただ痛いだけニャ」


 「なんつー物騒なスキルだ! てかさっきの声お前か!」


 「そうニャ〜。いい具合に食らってたニャンからね」


 死ななかったからいいものの……!


 「はぁー。まあいいや。訓練としては結構いい経験になったしな。それにしてもこの剣めちゃくちゃ使いやすかったな。今度おっさんに礼をいわねーと」


 ゴブリンの剣とはもう天と地の差だった。

 当たればもう斬れる斬れる。


 「ここに来てめちゃくちゃいいペースで強くなってるんじゃないか?」


 初期ステータスと比べたらもう段違いだ。


 「確かにいいペースニャンけどその成長もそろそろ停滞して来るかもニャー」


 「む、何でだ?」


 「今までのは異世界人限定の所謂初心者ボーナスみたいなものニャ。特にご主人はワタシやその眼や魔力や経験に恵まれてたニャンからね。ここ何日かの成長速度で言ったらトップ間違いなしニャンね。けど、もう隠し球はニャいから後はじっくり修行するのみニャ」


 「ふーん、そうなのか」


 まあ、こんなのがずっと続いたらこの人生かなりイージーだっただろうな。まあ現実は甘くないと言う訳だ。


 そんな教訓を得た今日この頃。

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