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第13話


 翌日の朝。

 午前4時。


 「お邪魔しまーッス」


 侵入者一名。

 アホ毛メガネ。


 侵入者は一歩ずつ近づいていく。

 この部屋で寝ている俺が起きない様に足音を立てずに……と言う配慮は全くない。

 スタスタ普通に歩いてきた。

 そして俺のいる所に行き立ち止まる。


 「スゥーっ……」


 そして次の瞬間俺の部屋に騒音が鳴り響いた。


 「おーきーるーッスー!」


 「うおおっ!?」


 朝っぱらからいきなり大音量で叫ばれたので布団から飛び起きた。


 「ななな、なんだ!」


 寝起きでボーっとするのと騒音による耳鳴りで気分は最悪だ。


 「おはようッス」

 

 目の前に空護が立っていた。

 俺は目をこすりながら時計を見る。


 「……うわっ、2時間しか寝れてないじゃん。勘弁しろよ〜。ナポレオンでも文句言うぞ」


 「何を言ってんッスか刻君。まだ16なんだからこんくらい大丈夫ッスよ〜」

 

 「いや、そもそもお前が2時くらいまで作り置きの飯を作らせてたから眠いんだけどね」


 そう、俺はみんなが寝静まった頃、何故かせっせと料理を作らされたのだ。

 あの量なら一週間は保つだろう。

 と言うかなんで一週間分の飯を睡眠時間削ってまで作らせているのか甚だ疑問だ。

 一日分ではなく、一週間分だ


 「いいじゃないッスか減るもんじゃ無いし」


 「俺の神経がすり減ってんだよ! あれ結構疲れるんだぞ! その上2時間しか睡眠時間与えてもらってねぇのに“いいじゃないッスか”とかどの口が言ってんだテメェ!」


 ああ、やばい、頭がクラクラする。


 寝起きなのに大声で文句を言ったせいで頭がガンガンする。


 「しょうがないッスねー……ちょっと待って下さいッス」


 すると何も無いところに小さな穴が開いた。

 空護はそれに手を突っ込みなかをあさり出した。

 しばらくゴソゴソ言わせたら“あった”と言って何かを取り出した。


 「はいッス」


 空護は瓶を渡してきた。

 中には何かの液体が入っていた。


 「なんだこれ? 栄養ドリンクか?」


 「そんなチャチなもんじゃ無いッスよ。このスタミナポーションは眠気を一瞬で解消してくれるんッス。睡眠8時間と同じ効果が飲んだ瞬間に得られる優れものッス」

 

 「へぇーそんなもんがあるのか。どれどれ……」


 俺は貰ったスタミナポーションを飲んだ。


 「ぐふっ!」


 そう、それは驚異的な不味さだった。


 「マッズ! なんだよこれ! 人が飲むもんの味じゃ無いぞ!」


 「良薬口に苦しって知ってるッスか?」


 「だからそんなレベルじゃねーよ!」


 不味い。口の中で凄いことになってるな。あれだ、ファミレスとかで作るミックスジュースの失敗作を遙かに凌駕する不味さだ。


 しかし、効果は抜群で眠気と寝起き特有の倦怠感は完全に何処かにいった。


 「効き目はあるんだ。全然眠く無い。不味いのがひたすら惜しいな」


 「商人御用達ッスからね」


 へぇ、そうなのか。


 「それじゃあ、いくッスか」


 「もう行くのか? まだ4時だぞ」


 「予定が詰まってるッスからね」


 そして俺たちは装備を買いに街に出た。

 俺は何の予定なのか聞きそびれていた。



———————————————————————————



 今は午前4時半。

 こんな時間に開いて無いだろうと思ったが結構やったいた。

 なんでも、あのスタミナポーションを飲んで不眠で営業しているらしい。

 俺はその熱心さにもはや畏敬の念を抱いた。


 あんなもん飲んでまで仕事してんのか。やばいな。


 あれが現代日本にあったとして果たして飲むだろうか。

 ひたすら尊敬すること

 さっきあれを飲んだ者として心からそう思った。

 それから数分歩いて目的の店に着いた。


 「お、ここ来たことあるな」


 「そうなんッスか?」


 今目の前に武器屋は、以前クレアと来た所だった。


 「ああ、クレアが街を案内してくれた時にこの店にも来たんだよ。確かゴツゴツの頭したおっさんだったな。武器買う約束してたし丁度いいや。そういえばお前クレアと知り合いっぽかったな」


 「そうッスよ。確か会ったのは去年くらいだったッスね」


 へぇー。まあ知ったところで何も無いが。


 「さて、入るッスよ」


 俺たちは店に入った。



—————



 「おやっさーん、武器買いに来たッスー」


 店には見覚えがあるゴツゴツのおっさんがいた。


 「らっしゃーい……ん? おお、クウゴじゃねぇか。お前さんもう壊したんか?」


 「違うッスよ。今日は付き添いッス」


 「おっす。言った通り武器買いに来たぞ」


 おっさんは一瞬俺を凝視して、閃いた様な顔になった。


 「おお、あん時の坊主か。たしか……」


 「刻、宮下 刻だ」


 俺はここに来てもう5回目の自己紹介をした。


 「トキか。俺はゴメス・スミスだ。この店で武器屋兼鍛冶屋をやってる」


 スミス? おおすげぇ、名が体を表してる。


 「自己紹介はいいッスか? じゃあおやっさん、早速ッスけど、刻君に合う装備を見繕って欲しいッス」


 「おう、任せろ。して予算はどんくらいだ?」


 「まあこんくらい……」


 空護は能力で財布を取り出した。

 本当に便利そうで正直羨ましい。


 「ほうほう、よし、じゃあ待っとけ。それと坊主!」


 「うん?」


 「武器は何を使うんだ?」


 武器か。俺は剣以外使った事ないな。


 「片手剣。盾は使わない」


 「ほう、変わっとるな。片手剣に盾無しとはな。お前さんは異世界人だから知らないだろうが片手剣に盾は必須だぞ?」


 まあ、普通そうだろう。

 だが俺は極力機動力重視でいきたいので盾は持ちたくない。

 前やってたゲームの時も紙装甲だった。


 「うーん、大丈夫」


 「ふむ、そうか。そういえば昔、お前さんみたいな事を言った奴がいたな」


 そうなんだ。変わった奴……という認識はないけどまあ変わった奴なんだろうな。


 「よし、じゃあ今から作業するから外でちょいと待っとけ」


 「作業? 何するんだ?」


 「おやっさん鍛治スキル持ちッスから装備を作って貰ってるんッスよ。おやっさん腕は確かなんで楽しみにしていいっッスよ」

 

 「へぇー……おっさん」


 「どうした」


 「作業見てもいいか?」


 ぶっちゃけ興味本位だ、が気になる。

 鍛治の現場なんて見た事がない。

 スキルを使うにしても見て見たいのだ


 「おう、良いぞ」


 あっさりオッケーが出た。

 見られると気が散るからダメと言われると思ったがそうでは無い様だ。

 見られても気にならないくらい慣れてるのだろうか?


—————



 店の奥には工房があった。

 そこには鍛治作業に使うであろう道具と魔法具が置いてあった。


 「よし、じゃあ始めるか」


 ゴメスは壁に掛けてある剣の形をした鉄の塊を手に取り金床に置き、詠唱を始めた。


 『これより打つは千変万化の鋼。その姿は剣、その主人(あるじ)は異界より来たる者。今この時よりその魂は主人の刃。鋼よ、我が命に従い主人を守護する刃と化せ』


 すると握っていた槌が光を纏いだす。


 「フンッ!」


 そしてゴメスはそれで鉄を打ち始めた。


 「ああやって打ち付ける時にスキルを使うんッスよ。魔力を武器全体に均等に流し込まないといけないッスからかなり難しいッスよ」


 確かに細かく調整している。

 俺の料理スキル然り、ゴメスの鍛治スキル然り、やはりスキルというのはそれなりに自身の実力も伴っていないと使えないのだろう。


 俺は剣に目をやった。

 さっきまでシルエットだけ剣に見える鉄の塊だったものがだんだんそれらしい姿になっている。

 俺はなんとなく感動した。



———————————————————————————



 「……うしっ! 出来た」


 30分後剣が完成した。


 「ほれ、坊主」


 俺は完成した剣を手にとった。

 感想としてはまず重い。

 ゴブリンの剣よりずっと重い。

 そしてこの刃だ。

 刀身は鈍く光っており、刃はどこまでも鋭い。


 「おお……なんかすげぇな」


 まともな剣はうちにある日本刀ぐらいしか触ったことがない。

 だがこれはそんなものよりずっと威圧感がある。

 良し悪しはわからないが良い剣だと思った。


 「サンキュー、おっさん。遠慮なく使わせて貰う」


 「おう、じゃんじゃん使え。それだけそいつも喜ぶ」


 おお、カッケーな。流石鍛冶屋だ。男前だぞ、おっさん。


 「さて、次は防具だが、鎧、胸当て、コート、ローブ……色々あるがどいつにする」


 「身軽で動きやすいやつがいい」


 俺の能力で未来視すれば大抵の攻撃は避けれるだろう。

 なので動きやすいのにするべきだと考えた。


 「よし、それじゃあこいつだ」


 取り出したのは黒いレザーアーマーだった。


 「これはメチャクチャ軽い上に余計なもんが無いんで動きやすさはピカイチだ。だが、そのせいで結構紙装甲気味だ」


 「おおー、うん、これがいい」


 気に入った。俺はこう言うのを求めていたのだ。


 「はっはっは。お前さんガキみてぇだな。見たところ結構強いんだろうがはしゃいでっと痛い目に遭っちまうぞ。気ぃつけろよ」


 成る程、肝に命じておこう。


 「おう!」


 よし、装備は揃った。……それでどうするんだ?


 「刻君、せっかく装備揃えたんッスから試しに行かないッスか?」


 「試し? 何をするんだ?」


 「外でモンスターを狩りに行くんッスよ」


 モンスター? でもああいう化け物系って魔族じゃ無いのか?


 「俺殺しはちょっと嫌なんだけど」


 「殺し? ああ違うッスよ。魔族狩りに行こうって訳じゃ無いッス。モンスターって別にいるんッス。モンスターってのは理性がないバケモンッスから。魔石から生まれる幻覚?みたいなもんッスよ」


 成る程、生き物じゃ無いのか。ならいいか。


 「わかった」



———————————————————————————



 「……またここかいな」


 思わずそい呟いた。

 何かとこの森に縁がある。

 もうなんなんだろうか。


 「つーかこの森魔物出ンのか」


 俺はここに2回程来ている。

 というか1日は寝泊まりしていた。

 にもかかわらずモンスターは出てこなかった。


 「奥に行けば結構いるッスよ」


 と言うことは俺はあまり奥深いところには居なかったのだろう。


 そして森の奥へと進んだ。



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