そこが私の役目です!
宥めるように姉様は席に座り直して、私を冷静に見つめます。
「シャルちゃん」
けれどもわざと捲し立てるように私は続けます、姉様には伝わらないと思ったから。
「それでもジェイク様が他を選ばれるならば、姉様にはお辛いでしょうが、見る目がない男は早々に見切りをつけましょう。姉様には幸せになってもらいますから、一瞬でも他所に目が行く殿方は私が断固阻止しますよ」
「シャルは私がゲームの知識のがあることを忘れているわ」
「そんなことありませんよ」
私が笑顔なのと対称的に、暗い顔をなさる姉様。
「そんなことあるわ、私ジェイク様を落とす方法を知っているのよ」
「だから簡単だとおっしゃるんですか?」
私はそうは思ってないんだけど。
そしたら姉様もそう思われている様で。
「いいえ、私が……、エリーが頑張るだけ裏目に出るに違いないわ」
「裏目にですか。敢えて言いますが、ヒロインさんと同じことを姉様がすることも可能ですよね、それでもジェイク様は落とせないと?」
実は私もそれは無理じゃないかなーと思ってるんですが。
姉様とそのヒロインさんとでは背景が全く違う。だから同じ行動をしたとしても与える印象は別物になるはずだ。
だからそこは敢えて姉様の考えも知っておきたい。
「ゲーム上ではエリーはジェイク様に想いはないことになってるの。まさに政略結婚で、双方に愛情はないと……」
「つまり、今のジェイク様も姉様にその気持ちはないと言うのですね」
「そうよ、ジェイク様がヒロインを選ぶ理由はその一生懸命さなの。なんでもそつなくこなせる女は男性には選ばれないのよ」
前世で何かおありなのか、随分な確信的な言い方です。
しかーし、前世は前世!
すでにいろいろ違うのですから、前向きにいきましょう。
私が妹な時点で、姉様にはマイナス要素かも知れませんが……そっ、その分幸せに!
姉様がネガティブな分、私が無駄にポジティブにいきます。
「ふふふ、姉様。私は無駄にテレビっ子なのですよ、器用貧乏なんてことは悲観することではないのです!」
「意味がよく」
姉様の戸惑いが手に取るように分かりますが、スルーです。
「大概、男性と言うものは自分よりできる女性を敬遠しがちなのはよく聞く話です。ハイスペックだからこその悩みでしょう。だからこそ、ジェイク様を見極めるのです」
「見極める?」
「姉様よりもできる男なのか、それともそこそこの男なのかを」
「それが見極められたら何か変わるの?」
「前者ならば姉様は素直に気持ちを態度に表せばよし、後者ならば従えたらよいのです」
「え? え?」
「姉様からの好き好きオーラに耐えられる男はいません。今気持ちがないのなら振り向かせることに全力になればいいのです、ヒロインさんは噛ませ犬くらいにものです」
「従えるというのは」
「男のプライドがあるから姉様を遠ざけるのです、そんなものバキバキにへし折って差し上げるだけです。それが愛故だと分かっていれば大丈夫、ここで間違えてはいけないのは決して見下すのとは違うと言うことです」
ここはわざと決め付けるように言うだけ言っておきます。
現実で実行するのが難しいことは重々承知、しかもやるのは姉様ですからね。
ただ……絶対私がやるより成功させられると思うんだよな。
何故だか自信がない様子の姉様を焚き付けさえすれば、姉様は天然でやっていけるはすだ。
「私は、そんなこと……」
何か前世であったのだよは思いますよ、でも何もなかった私よりは知識と経験豊富なはずです。テレビの受け売りなんて、実体験には敵いません!
私は無邪気なふりして姉様の背中を押しまくるだけです。
「姉様は姉様らしく生きていただければ大丈夫ですよ、あくまでも企むのは私の役目ですから」
「シャルが悪者になる必要なんか」
「どうせなってしまう可能性があるならより益のある方にですよ、姉様。それもヒロインさんの選ばれる道次第です」
まあ、姉様がジェイク様とラブラブになることが私の目標ですから直接ヒロインさんに何かするつもりはないんだけど、やっぱり成功するかも知れない恋路を邪魔するんだから恨ませる覚悟はしておかなくてはならない。
「それに家を追い出されても、私はちょっとした夢がありますから」
「夢?」
「私はお菓子屋さんになりたいんです」
いきなりな子供らしい夢に姉様はまた目を丸くしました。
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