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コン、コン、コン。


ヴィヴィのノックで一時会話は途絶えたけれど、どうやらヴィヴィはこの姉様との会話の機会を私より重要に捉えているらしく、お茶の替わりを用意するとすぐに部屋を出で行った。

去り際に私にだけ小声で、外のことはお気になさらずごゆっくり、と笑顔で囁いた。


これほど姉様と私の部屋で話せることを不思議に感じていたけど、やはりヴィヴィのお陰だったか。

姉様のメイドさん達を押さえてくれているんだろうと思うと頭が下がる思いだ。あとで何かお礼をしなくちゃな。


テーブルの上の、温かく香りの穏やかなほんのり甘い飲み物で、二人で喉を潤す。

まだまだ日暮れまでは時間がある。


さて、姉様の話の続きでは、ヒロインさんを苛める理由は主に嫉妬に駆られて攻撃する、らしい。


私ってば何を羨むのでしょうか。


はっきり言いましょう!

私は今の私、大好きです。大満足です!

なぜって?

前世の記憶がよみがえって、より思うことなんだけど。


前世でも今は姉様である委員長と最上位と最下位の差はあれど同じクラスにいられるくらいには頑張って勉強していたので平均以上ではあった。

大変ではあったけど、苦ではなかった。


それは今でも引き継がれているのか、いや寧ろ今の方がもっと勉強は楽しい。

もともと平民のままならできなかったことだからかもしれない。


そして何よりこの容姿!

前世の顔の偏差値は平均以下の地味ガール。

嫌いではなかったんだけど、委員長が日常的に輝いて見えるほどに鏡の中の自分は地味だったなー、化粧映えるもしなかったし。

けれども、今は姉様と半分は同じ遺伝子なんですよ!

地味なのは変わらないけど、きっちり着飾れば可愛くなれるんです!

半分以上ヴィヴィのお陰なんだけど、もっと年齢が上がればお化粧ももっとしっかりできるし、楽しみでしかたない。

家を追い出されるまでにそのテクニックを身に付けるのも今の私の目標であります!


さらに私も魔力保有者で、姉様や兄様には及びませんがなかなかの強さらしいのです。

なので、ウォリーシック家から追い出されても学園には必ず入る運命なので、魔術の勉強は今から楽しみ。


さて、そんなわけで人様を羨むよりも忙しいのだけれど、それは中身が私故だろうか。

それならばゲームを制作した人たちに申し訳がたたないな。


でも人を苛めるのも性格的に難しい、ここはやっぱり補正力に任せてやってもらうしかない。


問題はジェイク様の件だけだ。

ここはもう単刀直入にいこう!


「姉様は、ずばりヒロインさんは誰を選ばれると思いますか?」


はいー、いきなりは無理!

まずはジャブからってことで……。


「私は……ヒロインが転生者だとするならジェイク様か、ハーレムルートを選ぶと思うの」


姉様は迷いがあるように視線をさ迷わせて、けれど少し小声で答えてくれた。


「何故かお聞きしても?」

「一番人気がジェイク様だったから。ハーレムルートは最難関だからこそ、やりこんだ転生者なら目指すはず」

「ちなみに姉様の推しは?」

「……ジェイク様」


恥ずかしさと辛さが混じったような表情で分かりますが、ここは確信が欲しい。


「と言うことは、やはり今も」

「……好き」


おお!

それならばあとはどうすればその想いを叶えられるかだ。


「では、ヒロインさんがジェイク様以外の方々を選んだり、ミスをした場合はジェイク様はどのような結末を?」

「それは……エリー・ウォリーシックと結婚エンド」

「よし! この国の未来の王妃様は姉様以外は存在しません。ですからヒロインさんがジェイク様を狙うならばやってやりましょう、本物の悪役令嬢を」

「シャル!」


姉様は慌てたように立ち上がりましたが、私の気持ちは決まった。


「ゲーム通りでは恋が盛り上がってしまうので、そこはより姑息で陰湿な手段でなければなりませんね。しかも家に迷惑をかけないように!」


よく考えれば、設定的には要素は完璧だ。


生まれながらに父親に捨てられ、幼くして唯一の身寄りの母を亡くし、侯爵家に引き取られはしたが、煙たがられている雰囲気。


性格が歪んでも言い訳くらいはできるだろう。


あくまでも端からみればだけどね。

実際は母にも、母の勤め先の人達にも存分に愛されていたし、父様も今の母様も私を育てることに関しては惜しみない環境を提供してくれている。愛情の有る無しを言うのは贅沢というものだ。

それに今となっては姉様とこれ程お話できるのだから、贅沢以上に幸せすぎる。


だから決して家に迷惑を掛けてはいけません!


けれど私のことを考える姉様は困ったように悲しそうな顔をなさる。


「シャルに苛めをさせるわけには」

「姉様、ヒロインさんを貶めようせずとも、逆に姉様を上げればいいのです」

「え?」


姉様の丸くなった瞳のなんと愛らしいことか。

ただそれだけで皆イチコロだと思うんだけど、姉様はこの年ですでにどこへでても完璧な侯爵令嬢なのだ。


「今でもこれほどまでに素敵な姉様をこれ以上どう高めれば良いのかは悩むところですが、そこにジェイク様が気付かれていない可能性はあります。そこを自然に教えて差し上げれば、姉様以上の方はいらっしゃいません」


花も恥じらうほどの姉様の素の可愛さは絶対無敵だ。



お読みいただきありがとうございます。

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