同情しますよ……
私の顔が語ってしまったのか、姉様は首を立てに動かした。
「攻略対象は五名―――」
姉様が挙げた五名は今すでに有名人でした。
現在の年齢で表しますと、
ジェイク・べディ・セブマーヤ第一王子、十二才。
オルバ・べディ・バージル公爵子息、十二才。
ウルヒ・べディ・セブマーヤ第二王子、九才。
コーム・セカイト魔導師、十九才。
ドス・マッサンドラ騎士、二十五才。
あと、隠しキャラで兄様がいらっしゃるとのこと。
そしてジェイク王子は姉様の許嫁なんです。
姉様は努めて他人事のように話してくれましたが、心中はいかがなのでしょうか。
まずは敢えて触れずに続けましょう。
「確かに皆様素晴らしい人ですね……ヒロインの方は貴族の方なのですか?」
半分以上貴族の方ですし、それどころか王族の方々ばかり。
王子は当然ですが、公爵を賜る家は王族の血縁だ。
バージル公爵様は前王の年の離れた弟君で、現王が成人の折に王位継承権を放棄され、公爵をお継ぎになられた正統な血縁者だ。
魔導師様も騎士様も、見目麗しいと有名だし、今すでに重要な役職に就かれていたと思うので、誰でも近づける方々ではない。
だからハッピーエンドを目指すのならば位は重大な要素。
生まれながらの貴族でない私だからこそ、よく分かるってもんだ。
姉様は逆に生まれながらの貴族だからこそ、聞いて驚けと言わんばかりなのでしょう。
「ヒロインの設定は強力な魔力持ちの平民よ」
わーお。
平民でも魔力持ちの人はたまにいるけど、簡単なことしかできない場合がほとんど。
そこは血筋が関係しているようで、強い方はほとんど貴族生まれだ。
だから学園に入学するのは貴族が多いのだけど、魔力の制御は必ず習わなければならないので、平民もいないことはない。
ここからは私の先生の受け売りの話になるんだけど、どうも身分の差は見えない壁を作るらしくて、学ぶことにおいての平等は確保されているけど皆仲良くとはいかないみたい。
そもそも貴族間での優劣が持ち込まれているから、少数の平民の生徒たちが幅を聞かせるのは難しいのだと想像するのは簡単だ。
その中でいくら魔力が強いとはいえ、高貴な方々と恋愛関係になり成就させようと思うと……簡単なわけないよなー。
今からヒロインの方に同情しちゃうよ。
「……所謂シンデレラストーリーなんですね」
若干遠い目になりながら言ったら、姉様はそれをどう思われたのか難しい顔をなされた。
「そういえば、ヒロインの魔力が目覚めるのが十才ってことでしたから、私達の記憶が甦ったのもその影響があるかもしれない」
「影響ですか……」
「ヒロインも転生者だと考えた方がいいかもしれないわ」
だとすれば今王国のどこかで、混乱しながら生活しているのかもしれない。
さっさと受け入れている私が言うのも変な話だけど、いや、私の場合は姉様の存在が大きいから今もお茶なんか飲みながら話していられるんだよな。
姉様に感謝だよ、ホント。
まだそうだと決まったわけではないので、一旦置いておくとして、相手が何人もいるのが困るところだな。
「誰を選ぶかはそのヒロインの方次第なんでしょうか?」
「そう、でもハーレムルートもあるわ」
そんな五人も六人も侍らせるなんて、……乙女の夢か。
素敵な男性に好いてもらえるのは、やはり魅力的ですよねー。さすがにそれくらいは私にも分かる!
現実的に考えると御免被るけど、というか現実で私が好かれる可能性はゼロだからー。ゼロだから!!考えるだけ無駄だ。
「……さすがにヒロインさんも皆さん全員の心を掴むのは不可能だと思うのですが」
「ヒロインが純粋に恋愛していくのか、私達みたいに転生者なのかでも違ってくると思うの。キラストを知っている転生者だったら攻略方法を知っているはず」
「ゲームですもんね、攻略方法もありますよね」
そうかー。
ヒロインの方を知らないと分からないことばかりだ。
なんだか難しいです、姉様。
やっぱり今から対策立てるのは早いのではないでしょうか。
けれどジェイク様が含まれているのがネックなんだよなー。
私自身の未来はどうでもいいけど、そこに姉様が巻き込まれるのは駄目だ。
「分からないと対処が難しいことが多いですね、ジェイク様がお相手の時以外は放置でいいですが」
「オルバ様はいいの?」
「それは全く問題ありません」
私はグッって親指を立てるくらいの心持ちで、わざとらしいくらいニッコリしてしまった。
実はオルバ様は私の許嫁だったりするけど、もうすでに破棄の予定が立っているので、一番気にする必要のない人なのだ。
いやー、本当にオルバ様に内緒で伝えられた宣言様様だよ。
私も反対する理由がなかったので、今はまだ誰にも内緒だけど、私とオルバ様が結婚することはない。
将来婚約まで話が進むかもしれないけど、そこはオルバ様次第なので、それも家のことを考えて一時のことでしょう。
だから問題は、姉様の許嫁のジェイク様の場合だけだ。
姉様の気持ち次第だけど、真剣に妨害工作が必要かもしれない。
まずはゲーム上での行動を知りたい。
「姉様、私は具体的にどんな悪事に手を染めるですか?」
悪事って、と姉様は少し笑って説明してくれた。
「キラストはそれほど残虐ではありませんでしたから、学園内でヒロインを虐めるんです。悪い噂を流したり、授業で失敗するように仕向けたり、孤立させたり」
「なるほど、つまりヒロインの障害になる役割なんですね。でも理由もなくではちょっと説得力に欠けますよね」
「今のシャルを見ていると……たぶんシャルにはピンと来ないかも知れないのだけど」
続く話を聞いた私の印象は姉様の言う通りだった。
お読みいただきありがとうこざいました。




