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無知で未知なんですが  作者: 雉虎 悠雨


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一応晴れ舞台なんでしょうか

ようやく婚約披露宴当日になりました。

されるがままに着飾って、真っ赤なドレスはマーメイドドレスに似てますね。ウエストと膝辺りで細くなり、裾は派手にヒラヒラと歩く度に揺れます。ダンスがしやすいそうにスリットも入ってはいるのですが、足が見えないように複雑に布が重なりあっているので絡ませないように歩くのが一苦労な一品です。

髪は全部アップにしてきれいに纏めてあります。髪留めと、ティアラ以外は目立つ飾りはなしです。


姿見に映る私はなんとも……気が強そうですね。

この装いが十四にして似合うのですから、役得と言ってもいいかもしれません。


姉様の本日のドレスは私と対照的に、淡い桃色のオーソドックスな形のドレスです。シンプルだからこその姉様の美しさが際立ちますね。

髪はハーフアップで背中に流された部分には緩くウェーブが掛けられ、なんだか天使の様です。

私の髪留めは宝石を全面に押し出した物ですが、姉様のはお花をモチーフにされていて一見生花とも思わせる趣向を凝らした素敵な物で、ジェイク様からの贈り物だそうです。

そして我が家の代々からのティアラをつけられ、もうマジプリンセス!

結婚式の時には、王家のティアラをされるそうです。


ちなみにですが、本日私はオルバ様のお家のティアラを貸していただきました。

結婚式の時には新しいのを作るわねー、なんてオルバ様のお母さまがおっしゃってましたが、それが今回でなくて良かったです。無駄な出費をさせてしまうのは心苦しいですからね。


「そろそろお時間です」


控え室に声がかかりました。

ジェイク様とオルバ様は扉の外でお待ちで、どうやら婚約者の控え室には入らないルールがあるようです。

なので姉様の姿を見たジェイク様の顔っていったら、今更驚くこともないと言いたいですが、そこに感動も混じって固まってしまっています。


姉様はそんなジェイク様に少し恥ずかしそうに並ばれながら、そっと手を出して、慌てたようにその手を取ったジェイク様と腕を組みます。


その後ろでオルバ様と私も並び歩き、大広間の前の扉の前で一度止まります。

オルバ様はいつも私の前にいるときの無表情から、日頃の笑顔に変わられます。


私はどこか他人事だからか、緊張もほとんどしませんでした。

普段通り微笑むことだけ心掛けて、オルバ様の腕に手をかけて開かれた扉から目映い光の溢れる中に淑やかに歩いていきます。


王様、王妃様と私達、オルバ様のご両親とうちの両親だけが壇上に席があり、あとは立食形式ですでに会場は人で溢れているような印象です。


幾人かの挨拶が終れば歓談、様々な人達がお祝いの挨拶と称して顔を売り込みにやって来ます。

そういう方々は私の顔をちらりと見るだけで、あとは話しかけられることもないので、本当に微笑んでるだけで大丈夫なんです。一応顔は覚えておかないと後で面倒ごとに巻き込まれる可能性もあるので、私は私以外の壇上にいる方々に挨拶に来た人の顔を覚えることだけ本日の目標にしました。


それからダンスをオルバさまと一曲踊ると、お色直しです。

……必要なんですよお色直し、様々な理由で。

姉様が着るドレスは売れ筋になるそうで、披露する物は多い方が良いのですよ。

私のは売れないのですが、母様、姉様、ヴィヴィとか、あとなぜか兄様とか父様も、いろんな人の意見を反映させるためには一着じゃ足りないんです。


そろそろ姉様と私が中座しようかという頃。


「こんなところでもあんなことするのですねー」


目の端に捉えた場面に思わず姉様にそんな風に声をかけていました。

姉様にも分かったらしく、本当に小さく溜め息をつかれました。


「あの方たちはまだ社交デビューされたばかりの方だから、場面を読むことにあまり長けてないのでしょうね」


姉様も私も夜会へのデビューはまだ先のことなので日頃の夜会での雰囲気までは知らないのですが、お茶会には行くことも多かった最近なので、ご令嬢の顔や名前とそういう所でたまーに見かける様々なことをちゃんと学んでます。


そうなんですよね、今まさに気弱そうなお嬢様に複数の女性が絡んでいるのが見えるんですよねー。

人が多いので目立ってはいないんですが、王宮に来てまでしなくていいと私なんかは思っちゃうんですがね。


そしていよいよ、お嬢様に実害が出そうな頃に私にある閃きがありました。


「私、悪役ぶりを少し試してみようかと思うのですが」

「え?」


声を潜めて言うと横に立つ姉様も小声ながら目を丸くされて驚いています。


「悪役令嬢がどういうものかも勉強したので、学園に入ってから失敗しないように予行演習してみようと思いまして」

「シャルは悪役になる必要はないのよ」

「率先してなろうとは思ってませんがヒロインさんの行動によっては私から仕掛ける必要もあるかもしれませんから」


放っておいても悪評が立つ私ですからね。でも姉様の恋路とオルバ様の恋路のために行動が必要になることも考えられますから、ここらで一つ試しておいてその結果がどうなるか知っておきたいのですよ。


破棄されるとわかっている婚約だからできることでもありますしね。

王室に迷惑が掛かるようなやり方は避けるつもりですし、あまり目立たないようにもしようと思います。


それに一応主役の一人である私はほとんど食べることのできない食事を美味しく味わって頂きたいので、あのお嬢様にもさっさと嫌なところからは逃げてもらいたい。


幸いジェイク様やオルバ様も他の方々と談笑されてますので、今は良いタイミングです。


「では少し行って参りますね」


姉様も見かねていたおかげで渋々頷いてくれたので、私は音もなく歩きたくさんの人の中でも誰にぶつかることも声をかけることさえなく目的の場所へ近づきます。


淑女教育をしっかりしてくれて先生に感謝です!

お読みいただきありがとうございました。

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