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無知で未知なんですが  作者: 雉虎 悠雨


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私の癒し

応接室に行くと、食事の席で会う以外で久しぶりに姉様にお会いできました。

とは言え、今日は様々なメイドさん達がお世話と準備のためにいるので何でも話せるわけではありません。


「姉様、今日のドレスも素敵ですね」


挨拶をしたあとに思わず言ってしまうと、姉様は少し赤くなられてしまいました。


「ありがとう、少し気合いが入りすぎな気もするのだけど」


全体は淡い水色、前だけ白の二色使いで、わざと目立たない色の、けれど光沢のある糸でふんだんに刺繍が施されたドレスはシンプルでありながら華やかさもある。

髪も編み込み結い上げられてはいるけども飾りは一切なく、艶が美しい。


まだ子供のあどけなさもあるのが可愛らしさを引き立てているのに、これが大人になって色気に変わったら、姉様はどこも歩かせられないな。


美人過ぎるって思ってるより大変かもしれない。



その姉様の横に座ると、すっとその距離を詰められて、少し小声になられます。

その時ふんわりとコロンが一瞬だけ、その控えめさと甘すぎない香りにときめいてしまいました。


「シャルちゃん、今朝父様がおっしゃっていたこと本気だと思う?」


様子見に来るとか宣言されてましたね、そういえば。

昨日までも姉様との手紙で簡単に起こったことは説明していますから、エマータ様のところでのことも知っています。


「どうでしょうか、日頃忙しい方ですからそんなにお休みができるものなのか心配ではありますね」


一昨日だってほとんど休んでいたようなものですから、また家に戻ってくることは難しいような気がするんだけど……


「最近の奇行を思うとどうなさるのか」


私が顎に手をやって考えこんだのが面白かったのか、姉様が可愛らしい声で笑われます。


「姉様?」

「シャルちゃんの目にも奇行に映っていたなら良かった」


そちらでしたか、そうなると姉様の目にも確実にそう映っているということですね。

もしかして家の中でだけではなかったらどうしましょう、父様のイメージや信頼が揺るいでしまうかもしれない。


「あの、父様って外ではあのような感じだったのですか?」

「大丈夫よ、お仕事はしっかりされているから。私の時も以前はああだったけど」


ひと安心ではありますが、以前という言葉が引っ掛かります。今は違う理由はなんなのか。

今あんなに弾けている姿を押さえ込むのはさぞや辛かったのではないかと、心苦しくなります。

そして私が今までその姿を見たことがなかったのなら、原因は私?


「私が来たから変わってしまったのですか?」


少ししょんぼり聞いてしまったから、姉様は微笑んで手を握ってくださいました。


「ふふふ、違うから大丈夫よ。大人しくしていたのは私のせいだと思うから」


姉様と父様の関係は私が知る食事の時に限っては特別仲が悪そうには見えません。

会話が弾むこともないですが、父様の質問に姉様は柔らかく答えられている印象です。捉え方を変えればかなり簡潔な回答だけとも言えますが……。

つまり、微笑んで頷くだけとか、「そうですね」って一言だったり。

ただ雰囲気はとても穏やかなのですよ。


姉様のせいで父様が大人しくなったとはどんな事情がおありなのか気になります。


「お伺いしても?」

「なんだか煩わしい……は言い過ぎね。ちょっと距離感が近すぎるといえば良いかしら。それでシャルちゃんが家に来てくれる少し前くらいから会うと冷たくしてしまって。母様にも咎められたみたいだから、シャルちゃんには嫌われないように頑張っていたのだと思うわ」


確かにちょっと圧迫感は感じるので、幼い頃から悟い姉様は思春期のような心持ちも早かったのかもしれませんね。

私ももう数年したらどうなるか分かりませんが、今はまだ大丈夫なんですが、父様の方はもう取り繕う必要もないと思われたのでしょうか。


「……父様はもう私には嫌われてもいいと」

「違う、違う。ああ、もうそういうところが可愛いのよね! 逆よ、可愛すぎて耐えきれなくなられたのよ。私は相変わらず冷たいけど、シャルちゃんは少し相手してくれるから尚更ね」


姉様がぎゅっと抱きしめくれて嬉しく思っていると、ふと我に返りました。


「私は別に可愛くないと思いますよ、ちょっと今のは欲が出てしまいました」


好かれてなくてもいいと思っていたはずなのに、エマータ様の話を聞いたからか嫌われなくないとつい思ってしまいました。

これはいけません!

いつ追い出されてもいい覚悟が鈍りますもんね。


姉様はたぶん敢えて何も言わずに握ってある手を撫でてくださいました。

そして父様の変化の理由をもうひとつ挙げてくださいました。


「あと臥せってしまったのも原因かもしれないわ、命の危険とまで言われてたみたいだから」


そう言われると少しだけ納得できます。

失ってしまってからでは遅いのですから、遠慮は無用です。


ちょうどその時声がかかりました。


「お着きのようです」


玄関でのお出迎えは執事長がされています。

お二人ともお付きの方々のたくさんおられるはずなので、その対応をされるためです。


さて万一聞かれても大丈夫な普段より仲良しな会話はここでおしまいです。ここからもっと緊張感をもっていろんなアンテナを張って過ごさなくては!



お読みいただきありがとうございました。

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