着々と
夕食前に部屋に戻り、また夕食用に着替えを終えるとそれまでの時間が少し空いた。
宿題でもしようかと思っているとヴィヴィから話があった。
「明後日なのですが、ジェイク様とオルバ様が快気祝いにいらっしゃるそうです」
一時は姉様が命の危機かもしれないとまでなっていたのだから、元気になったら会いにいらっしゃるのも分かる。
どんなに会いたくても、ジェイク様は特に立場があるので、病の最中は感染の危険があるので、直接会いに来られない。贈り物なんかで気持ちを伝えることとかはジェイク様はもしかしたらやられているかもしれないけど。
私の僅かに対面してる印象では、ジェイク様は静かで寡黙ながら姉様に日から惹かれておられると思う。たった二つ上とは思えない落ち着いた雰囲気が姉様の前ではちょっと桃色が混ざるように見えるから。
けれどヴィヴィが私にわざわざ言うということは、私にも対応する場面があるのでしょう。
ただ……ジェイク様は元より、オルバ様も従兄弟で幼なじみのジェイク様の付き添いのようにやってくるだけだろうし、キレイな姉様に会えれば十分だと私は思うんだけどなー。
「明後日……、そろそろ勉強をしっかりしておきたいのだけど。姉様に会いにいらっしゃるなら私はいない方が和やかに」
「ダメですよ、まだお若いとはいえ婚約者のオルバ様がいらっしゃるのですから」
そういえば将来破談になることは説明していなかったと思い出す。
けれどそれはオルバ様との秘密だから言えないので、なんと話すべきが少し考えて、そもそもそれ以前にオルバ様に対しては私にとっては好都合なことがあった。
「オルバ様は私のことをとんでもないやつだと思ってるから今更幻滅されることもないんだけど」
「あの噂を鵜呑みにされているのですか? 公爵家のご子息としてあるまじきことです」
主に姉様のメイドさん達が流している私の醜悪な噂ですが、ヴィヴィを見る通り只のメイドではない。私は素性を知らないけれど、どこにどのように話せばいいか知恵を持っている人たちなんだということは理解している。もちろん証拠を掴ませず、処罰されない加減もわきまえているから、姉様のメイドさんたちはかなり優秀だと分かる。
「うふふ、それだけ上手に流れてる噂ってことね。あまり過激だと迷惑がかかるけど、私が悪い子ってくらいなら大丈夫」
危なくヴィヴィの中でのオルバ様の株が下がるところだったけど、ヴィヴィも噂の根源を見知っているだけにある種の納得は得られたようだ。
けれどヴィヴィの心配は尽きない。
「オルバ様に勘違いされていることは問題ではないのですか?」
「今のところないかな」
私のあっけらかんとした受け答えに、ヴィヴィは困り顔のまま固まっている。
ダメだー、ヴィヴィにそんな顔させてはダメだー。
「でも来ていただくんだから会わないなんてダメだね」
笑顔で誤魔化すしかない。
それにしてもここのところ交流が劇的に増えて、流石に少し人疲れしてきた感じ。
全く知らない人ではないから疲労たっぷりなほどではないけども、ヴィヴィと先生以外とはまともに会話してなかった日常を思うと十才の体には堪える。
だけどオルバ様に対してはどう思われてもいいけど、家同士の心証をわざわざ悪くするようなことはするべきではない。
ちょっと疲れたから本来のものぐさなところが、ヴィヴィの前でだけ漏れてしまった。
結局ヴィヴィには甘えてるってことだなー。
でもヴィヴィはそれ以上私をたしなめる前に別のことを考えたようだ。
「もしかして体調がお悪いのですか?」
「大丈夫! 元気!」
いかん、ヴィヴィを心配させては申し訳がたたない。それに明日こそは先生にしっかり授業を受けさせてもらいたい。
マンツーマンの先生との授業は脱線も含めてかなり楽しいから、再開求む!午前も午後も授業があるのは元々週に二、三回だったからそんなに休んでる訳じゃないとは思うけどなんだか落ち着かない。
でもジェイク様と姉様の応援をするのだったら私もちゃんと会って私に害がないことや、二人っきりにするチャンスを伺ったり、姉様の良さをアピールしたり。
それをお節介にならない程度でやるためにも、雰囲気は掴んでおかないとね。
そこまで考えてふと思う。
「……そもそも私にもお会いになってくださるのかしら」
「シャルエッタ様! まさかこのお屋敷を二人で訪ねて来られてエリー様だけに会って帰られるとお思いですか!?」
許嫁ではあるけど好かれてはないんだから、内心では会いたくないんじゃないかな。
オルバ様がいらっしゃるから当然私もと誰かが勝手に考えて私まで話がきてるけれど、真実は姉様にだけという気がしてならない。
私の登場で、この勘違い野郎! って思われるんじゃない?
お! これが悪役令嬢の役割かもしれない!
これはちょっと乗っかっておくのも大事な布石な気配がぷんぷんしてきて、俄然やる気が出てきたぞ。
お読みいただきありがとうございました。




