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無知で未知なんですが  作者: 雉虎 悠雨


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13/33

兄様の変化

ソファーセットの斜め横に座られている兄様は、浅目に座り直された。


「あの、……シャル」


姉様とのことを聞く時よりもある妙な緊迫感。

けれど兄様がいつもよりフランクに私を呼ぶから、その緊迫感がぶれる。

私の耳が悪いのか?

それが思わず声に乗ってしまう。


「はい……?」


それが悪かったのか、兄様は突然悲愴な表情に変わられ、ご自分の膝の上で拳を握り込んで重そうな口を何度か開いては閉じ、躊躇ってから私の目を真っ正面から捉えた。


「もう、以前のようには呼んでくれないのかな」


やっぱり雰囲気と内容が噛み合わず、理解するのに少々時間が掛かる。

兄様を別で呼んだことなど一度しかない。


「……おにいちゃん?」


以前というか、五才で初めて会ったときに言っちゃっただけで。

兄の呼び方はそれしか知らなかったから、その後すぐに私に付いてくれた先生に丁寧な呼び方を習って修正。


その先生は数ヵ月もしないうちに変わってしまって、それからはずっと今の先生だ。

どちらもスゴい先生だけど、今の先生の方が断然過保護だ。ちょっとくしゃみでもしようものなら、膝掛けだの厚手のショールだの出してくるし、いつも体にいい飴と茶葉とが用意してくれている。

お医者様ではないからと治癒魔法は控えているらしいけど、教科書を捲るときにうっかり指を切ったら反射的に治されていたことはある。

刺繍の針で差した傷なんかも目敏く見つけて、さりげなく勝手に治している。


子供の怪我は目に痛いという理由らしい。


怪我が早く治るに越したことはないから、私はありがとうございますとお礼を言うだけだけど、魔法の無駄遣いだとは少し思ってます。


なんて現実逃避はこれくらいにして、目の前の兄様にも現実に戻ってもらいましょう。


兄様はお花畑を夢中で跳ね回る何かのように、私を見ているようで、蕩けた顔でなんだか遠くを見ている気がします。


「兄様、お話はもうおわりですか?」

「シャル! 言い直し!」

「へ?」


思わずマヌケ声が……いかんいかん。

逆に兄様は瞬時にキリッとした時の、カッコイイ顔になってらっしゃいます。


「もう兄様は禁止」

「でも、失礼ではないですか?」

「あんな堅物教師の言ったことなんか早く忘れて! 前は貴族の礼儀を覚えてもらうためにも仕方ないとか思ったけど、今のシャルはもう礼儀も弁えてるし、家の中で練習し続ける必要はないよ」

「よそでうっかり呼び間違えてしまうかもしれませんし」

「いいよ、僕がちゃんとするから大丈夫」


なんのこだわりなのか分からないけど、笑顔で珍しく……いや初めてグイグイ来られるので、何かが減るわけでも無さそうだから、呼び方くらい変えます!


「分かりました、おにいちゃん」


兄様は(よそ様の前で間違えないように心の中では兄様のまま!)花でも飛ばしてそうな笑顔で頷かれました。


「僕もこれからシャルって呼ぶね」


さっきからずっと呼んでますとは、言えませんでした。




「……兄様の方が変わられたような」


笑顔で帰っていった兄様を見送ったあと、ヴィヴィに少しゆっくりすることを勧められた。

ヴィヴィはずっと空気のように部屋の中にいたから、話を全部聞いていたはずだ。


「いいえ、トーマ様はシャルエッタ様が初めてお会いした時と寸分も変わっておられません」

「そうかなー」


カウチでゆったり座り、ヴィヴィが軽いけど温かいブランケットを掛けてくれる。


「ただ思春期で、抑えの効きが悪くなってらっしゃるんですよ」

「抑えてたってことなんだね、姉様のことも知らないところでは愛称で呼んでるのかもしれないね」

「それはありませんよ」


素晴らしい断言だ。


「どうして?」

「エリー様が自らその様に呼ぶことはありませんし、トーマ様も絶対にそんなお願いをエリー様にされることはありません。したとしてもエリー様に白い目を向けられて終わりですよ」

「見てきたように」

「いえいえ、起こり得ないことですから。エリー様もトーマ様も互いに望むことさえしないですよ。シャルエッタ様だからトーマ様もあんなことを仰るんです」


白い目で見られてしまうなお願いだったんだねー、さすがに私も不思議には思ってるけど、町では普通だったからなー。


「家の中だけなら大丈夫だよね?」

「お屋敷の中だけで済めばよろしいですが……」


そんなに心配ですか!?


「私ちゃんと気を付けるよ?」

「問題はトーマ様の方ですから、シャルエッタ様は今のままで何もお気になさらず」


ヴィヴィはそう言ってくれるけど、気を付けて、気を引きしていこう!

私が蔑ませるだけではなく、家の品格まで疑われたら大変だからね。


「シャルエッタ様は本当に大丈夫ですよ、ご家族の方々が普通ではありませんからね」

「ご家族?」


意味がわからずヴィヴィを見つめると不思議な笑顔をしている。


「皆様シャルエッタ様の前では少々見栄を張ってらっしゃいますから。けれど今回のご病気でエリー様とトーマ様は心持ちを変えれたようですから、もしかしたら他の方々も……」

「ヴィヴィ?」

「でも今日はもうごゆっくりなさいませ」


ヴィヴィの過保護も重症だ。




お読みいただきありがとうございました。

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