本棚が欲しい。
「部屋に本棚が欲しい……」
数日後、私はぶつぶつと呟いていた。
部屋はすっきり片付いて、床に置かれているものといったら、普段使いのカバンと、分別用のゴミ箱がふたつのみ!
当初の産廃処分場と比較すれば、まさしく雲泥の差である!
だが、ただひとつ、不便なことがあった。
この部屋には、本を置く場所がない。
せっかく片付けた床に置くのは、もちろん論外。
ステンレスのラックには、すでに様々な資料や雑貨等が詰め込まれていて、新たに本を収納する余地はない。
そして気付けば、別室の「万里の長城」から、読書のたびに持ち込まれた大量の本が、机の上にどっさり平積みされている状態に……!
いや、「読んだら長城に戻せばいいじゃん」ということは分かっている。
分かっているのである。
だが、面倒くさいからイヤだ。(←言い切った)
持ってくるのはまだいいが、それをいちいち別の部屋まで持って帰るなど、我が信条に反する行いである!
などと吠えてみたところでまったく意味はなく、このままでは、せっかくの「机上フラット大作戦」が水泡に帰すという結末に……!
「こいつぁ……やっぱ、入れるしかねえな、本棚を!」
いまや、がむしゃらに「物品を減らす」だけの段階は過ぎ去った。
次は「住みやすい空間をクリエイトする」段階に入ったというわけだ!
さて、新しい家具を入れるとなれば、現在、机がある場所の右横――窓の真下のスペースしかない。
高さ、幅などの条件が限られてしまうが、他に空いている場所はなかった。
それに、机の右手なら、本を取り出すときにも便利であろう。
「よし、ここにピッタリ入る本棚を買う!
そして『神棚』と名付け、大好きな名作たちを収めるんだっ!」
この計画に、私はすっかり舞い上がり、メジャーを取り出して壁の寸法を測り、もはやおなじみとなった家具のカタログを開いて「収納」のコーナーを舐めるように読み込んだ。
「おっ、コレいいじゃん!」
高さ、奥行き、幅――全てにおいて申し分のない一品が見つかった。
さっそく暇をみて店に行き、現物を確かめ、購入する。
組み立て式とはいえ重いので、これも家まで送ってもらうことにした。
そして、数日後。
「届いた! さぁ、組み立てるぜぇ!」
……平日の夜である。
明日も朝から仕事なのである。
だが「神棚作戦」に完璧に舞い上がった私は、いきなり包装を引っぺがし、部品を部屋に持ち込んで、黙々と組み立てはじめた。
「ぬうっ!?」
途中までは順調だったのだが、突然、問題が起きた。
板と板とを90度に固定するための金具が、どうがんばっても回せない。
「何じゃこりゃあ!」
と、昔のドラマの刑事のようなことを叫んで、ふんふん唸りつつドライバーをねじってみるものの、まったくいっこうに回らない。
何故なんだ!
もしかして不良品か!?
20分近くの悪戦苦闘の後、ふと説明書を読んでみると、
『回しにくい場合は、○○の部分を、少し緩めてみてください』
マジかよ! ○○の部分って、さっき、全部きっちり締めたとこじゃん!?
今さら、全部やり直しっ!?
文句を言っても仕方がないので、黙々と作業する。
結局、全部で2時間くらいかかって、棚はようやく組みあがった。
ものすごく手が痛い。
「よ……よし……」
よろよろとバンザイした私は、痛む肩をごきごき言わせつつ、「長城」からあらかじめ選び抜いておいた「神棚入り」の精鋭部隊を、完成したばかりの棚に移動させた。
マイ・ベスト本棚の完成だ。
光り輝いて見えるほどすばらしい!
わーい、わーい、バンザーイ! ……ばた!(←力尽きた)