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紙袋よ、さらば。

 さて、さて。

 どうにか、服を片付け終え――まあ、この時点で一応まがりなりにも片付いたのは「畳める」衣類だけで、スーツやコート等の「吊りモノ」は全て、各部屋の鴨居にぶら下げられてノレン状態になっており、出入りのたびにものすごーく邪魔になっているのだが、この問題はひとまず後回しにしておいて――ついに、真の敵・・・たちと向き合うべきときがやってきた。


 そう、それは、無数の「紙袋」たちである!



 何しろ紙袋なもので、一見しただけでは、何が入っているのかサッパリ分からない。


 様々な細かいモノが、一切整頓されず、ゴチャッと詰め込まれているので、必要なモノと不要なモノとが入りまじっている。


 紙類が多く、住所や個人情報が書いてあるモノも多々含まれていることが予想される。


「自分でも入れたことを忘れている、すごく重要なモノ」が入っている可能性も高い。


 さらには、カッターの刃やカミソリ、釘、千枚通し等、危険物が入っているおそれも大いにある(←そんなもん入れるんじゃねェ! と、かつての自分に声を大にして言いたい)。



 私は考えた。


「何が入ってるか忘れるほど、ずっと触ってないということは、中身のほとんどは、もはや不要のはず! ――よし、目標は、9割廃棄ッ!」


 だが、前述の通り、個人情報関係のモノや、もしかすると重要な物品が、ひょこっと紛れている可能性も否定しきれない。


 これはもう、全ての物品を取り出して、ひとつひとつ点検しながら、地道に作業を進めるしかなかった。



「うっげえええ……!」


 数枚の巨大なゴミ袋(分別用)を傍らに、バンダナ2枚をそれぞれ口元と頭に巻き――

 紙袋の中身の仕分けを始めて、約5分。


 まあ、まあ、まあ……

 出てくる、出てくる!!


 大量の使い捨てカイロ(未開封)。

 使いかけの鉛筆の束。

 昔書いた物語のプリント・アウト。

 ホコリのかたまり。

 30センチものさし。

 重要な書類。

 お菓子のおまけのプラスチックのおもちゃ。

 中・高時代のノート、教科書。

 抜け毛。

 中身が揃ってない絵の具セット。

 本、マンガ。

 金属製のキーホルダー(大量)。

 ホコリのかたまり。

 何かの折にもらったまま忘れていたお菓子のパック(未開封)。

 旅行のパンフレット。

 布の切れ端。

 抜け毛。

 昔、友人が描いてくれた絵の束。

 大学のノート、教科書。

 焼き板で作った表札。

 暑さにより、包装の中で完全にわいた・・・状態のアメ。

 大昔の自分の写真。

 カスカスの水性カラーペンがぎっしり詰まった布袋。

 溶けてくっついた輪ゴム。

 ホコリのかたまり。

 破れたプリントケース。

 辞書。

 なぜか、紙袋の中に、紙袋。

 抜け毛。

 電池の切れた懐中電灯。

 化粧品のダイレクトメール。

 ホコリのかたまり。

 卒業アルバム。

 中にレシートや紙ゴミが詰まった、コンビニのビニール袋。



「こっ……これは……ッ!?」


 あまりといえばあまりの混沌ぶりに、たちまち、思考力および判断力がマヒしてくる。


 何だこれ……? これは要るのか、要らないのか?

 あっ、これ懐かしい。

 えーと、これは、シュレッダーにかけてから捨てるやつ……

 この使い捨てカイロ、私は普段はまったく使わない……でも、家族の誰かが使うかもしれない……

 あっ、これは、借り物の本じゃねーか!? 返さないと!

 えーと……えーと……?



「なんか……すっげぇ 面 倒 く さ く なってきた……」



 いや、待て!


 ここで引き返すことはできない。 

 ひとたび手を付けた以上、中途半端なところで退くことは、絶対に許されないのだ。

 それでは、ただいたずらに紙袋の中身を散らかしただけになってしまう!


 思い出すのだ、目標・その2を。



 2. 「ここが私の部屋です」と他人に見せて恥ずかしくない状態を作る。



 見せられるのか、この状態を!?


 否! 

 女として、いや人として、これ以上の恥はない。


 それに、今、片付けておけば、この先、ずっと楽ができるのだ。

 もう、モノを取るために、いちいちガラクタの山を掘り返す必要はなくなる。


 何がどこにあるか、すぐに分かり、必要なものを必要な時にスッと取ることができる憧れの生活――


 そうだ。

 もはや、混沌の紙袋を横目にニセモノの平穏を謳歌することはできない。


 今こそ、この紙袋カオスと真正面から向き合い、分け入り、選別し……

 それが終わった暁には、己のあらゆる持ち物をきちんと把握した、秩序ある生活を送るのだ!


「うおおおぉ~!」


 自分で自分に気合いを入れ、私は再び猛前と選別に取りかかった。



 大きな基準は、服のときと同じ――「この2年間で使ったか」。

 ポケットティッシュのように「確実にすぐ利用するもの」と、「本当に大切なもの」「捨ててはいけないもの」だけを残し、あとはもう、どんどん捨てる、捨てる!


「置いておけば、何かのときに便利かも……」


 とか、


「コレまだ使おうと思ったら使えるよね?」


 とか、そういう甘い考えは、悪魔の囁きだ。

 迷ったら、常に自問する。


「そうやって置いといて、この2年で、いっぺんでも使ったのかっ!?」


 使ってません。

 ――はい、廃棄!



 全ての紙袋の中身を選別するのに、3日かかった(もちろん、72時間、延々やり続けていたわけではないが)。

 そして、デカいゴミ袋まるまる4つ分のゴミが出た。


「結局、ほとんどゴミだったんじゃねーか!!」


 私は今まで、大量のゴミと生活を共にしていたのであった。


 情けない限りだ。


 でも、今日からはもう違う。

 清く正しく美しく、秩序ある生活が私を待っているのだっ!!



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