表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

ラクにやろう。

 さて、新たな収納と机が到着するまでに、しておかなくてはならないことがある。


 まずは、床を徹底的にキレイにしておくことだ。

 新しい家具が入る前の、床面積が広い今がチャンス!


 私は猛然と雑巾をかけまくり、床をピカピカに磨き上げた。

 雑巾に含ませる水にラベンダーとティートゥリーのエッセンシャルオイルを垂らし、殺菌と芳香剤を兼ねるというカントリーライフな演出(?)でテンションアップを図ったりもしてみる。


 ――ああ、スッキリした。

 気持ちがいい!


 じゅうたんを捨てておいてよかった。

 やはり、キレイにしようと思うなら、「キレイにしやすい」環境を作っておくことが大切だ。

(掃除機をかけるのは嫌いだが、拭き掃除は、どちらかというと好きなのである。不思議な好き嫌いだが、好き嫌いを含め、自分自身の性質を把握し、それに合った環境を作っておくというのは、けっこう大事なことだと思う)



 さて。

 次なる問題は、どこに、どの家具を置くのかを、きっちり決めておかなければならないということだ。


 せっかく、ここまでスッキリしたのに――まあ、こまごまとした荷物は全て、ゴミ袋&紙袋に詰め込まれて物置に放り込まれているわけで、それを何とかしないと、全然片付けたことにはならないのだが、それはとりあえず後に回すとして――ひとたび、家具の配置をミスれば、あっという間に「住みにくい空間」に逆戻りだ。

 それでは、これまでの努力が、あまりにももったいない。



 さあ、どうしようか?


 古株の「収納」で、今も残っているのは、ステンレス製のラックがひとつだけ。

 一番上の棚が自分の身長よりも高くて、収納力があり、見た目にもスッキリしているため残したのだ。


 思えば、このラックが、もともと勉強机があった場所の真後ろ・・・にドカンと置かれていたため、椅子は、ただでさえ引きにくい状態だったのである。


「よし、このラックは、部屋の奥に移動させることにしよう……!」


 即座にラックの中身を全部抜き、軽くして、奥に移動する。

 移動を終えたら、中身をまたまた元通りに収納。


 無論、オール自力。


 こういうとき、イザというときの行動力はなかなかすごいじゃないか、と自分で感心するのである。

 この行動力を分割し、コンスタントに掃除に費やすことができれば、部屋がカオスに堕ちることはなかったと思うのだが……



 さて、衣装ケースと机、そして椅子が届いた。

 机と椅子はすぐに組み立て、もともとラックがあった場所に据える。

 なかなかに、おさまりがよろしい。


 机のふちに、前の机から引き継がれたライトを取り付ける。

 机上には、筆箱とメモ用紙と時計、アクセサリーケースを置いた。


 衣装ケースは、一気に10箱を購入。

 うち3個が、届いた時点で割れていたため、即座に電話をかけて、返品&代替品を送ってもらう手続きをする。

 置き場所は、もともとたんすがあった場所にした。

 配置的には、ステンレスのラックの真横である。



 さあ、ここからが問題だ。

 せっかくケースを買って積んでも、中身の入れ方をミスれば、たちまち「使いにくい衣装ケース」になってしまう。


 もともと極度の「面倒くさがり」である私のこと、少しでも使いにくいと感じれば、必然的に使い方が荒れ、中身も荒れ、しまいには恐るべき「床置き」の習慣が復活して、このたびの「きれいキープ大作戦」が1週間も経たずして灰燼に帰するであろうことは、火を見るよりも明らかである。


『服を選ぶのも、片付けるのもラクなように』


 このスローガンを胸に、私は気合いを入れて収納に取りかかった。


「よし!」


 床に並んだ、服の詰まったゴミ袋を前に、最初に誓ったことはこれだ。


「靴下は、絶対に、2足を合体させて収納する!」


 我が家では、これまで靴下を合体(履き口を一緒に折り返し、両方の靴下をくっつけた状態にすること)させるという習慣がまったくなかった。

 まあ、たぶん、履き口が伸びるからだろう。


 だが、ああ見よ、今、スーパーの袋にパンパンに詰め込まれた、片方しかない靴下の数々を。

 これまで、カオスの海の中で兄弟と生き別れ、片方ではもはや用を為さぬがために、今まさに捨てられようとしている気の毒な連中である。


 こんな哀れな連中を再び生み出すことを考えれば、履き口が多少ヨレるくらいのことが何だというのか!


 こいつらの片割れは、探せば多分、どこかにあるのだろうが、現在揃っている靴下だけでも、充分すぎる量がある。


 つーか、なぜ、こんなにも靴下があるんだッ!?


 こんな状況で今、ひとつずつ片割れを探すことに時間をかけるよりも、あえて心を鬼にして、全てを葬り、これから二度とこのような悲劇を起こさないようにつとめることこそが肝要だ。


 片方組の靴下を抹殺し、合体させた靴下たちを全て、ひとつのケースに放り込む。


 下着類も、古びたものは捨て、残ったものを、別のケースにまとめて放り込んだ。

 下着類をいちいち畳むのはやめた。

 着るとき表に出ないのだから、シワになろうがならなかろうが、まったく関係ないだろう。

 というかそもそも、それほどシワになるようなものでもないし。


 考え方が女として終わってるという気はヒシヒシとするが、現状の「人として終わってる」状態よりは遥かにマシだ。


 私はもともと「片付けない女」なのであって、こんな細かいところ――何が細かいんだッ!? という人は、もともと「片付ける」側の人なのである。そのスペックをちょっと分けて欲しい――に、いちいち力を使っていては、肝心なところに至るまでに「片付けパワー」が尽きてしまう恐れがある。


 手を抜いても大丈夫なところは、ほどよく手を抜く――


 これぞ、人生の万事に通じる大切な心構え!(←そうか?)



 そして、ここからが、またまた問題だ。


「この服も……この服も、ほとんど着てないな……」


 1. 収納の容積 ≻ 物品の体積 という状態を作る。


 これを実現するために、「物品の体積」を本格的に減らす段階に来たのである。


(まだ、着られる)


 そう思ってとっておき、何年も袖を通していない服の数々。


 ちょっと古びてるけど、穴も開いてないし、生地もそんなに伸びてないやつ。

 色や素材が全く好みじゃないけど、家族が買ってくれたり、人がくれたりしたので捨て辛いやつ。

 自分で買ったけど、どうも他の服と合わせにくく、何となく手が伸びないやつ。


 ……確かに、着ることはできる。

 まだ着ることができるものを捨てるのは、もったいない。


 しかし、しかし、だ!

 これらを今、取っておいて、いつか着るのか?

 いや、着ない。

 現に、これまで着なかったのだ。

 これまで着なかったものは、何か「着ない理由」があったのだから、これからも、おそらくは同じ理由で、着ないだろう。


 着ない服など、まさしく無用の長物。

 無用の長物を取っておくことこそ、貴重なスペースがもったいない!


 もったいないから、という理由でこれまでずーっと置いてあった「着ない服」を、私は、ことごとく葬り去ることにした。


 これまでに一度も袖を通したことがないもの(……)は廃棄。

 過去2年で、一度も着ていないものは廃棄。

 汚れやほつれ、穴等がほんの少しでもあるものは廃棄。

 似たようなデザインが複数ある場合は、1着だけ残し、あとは廃棄。


 これを基準に、目標――「半減」。


「持ってる服を半分も捨てるなんて、もったいなさすぎるだろおおお!」


 そんな声が聞こえてきそうだが、私の片付け下手を侮るなかれ!

 もともと、それくらい「着ない服」が溜め込まれていた、ということなのだ。


 何しろ、小学生・・・の頃に着ていた、色褪せてヨレたTシャツなんかが、平気な顔をしてワードローブの中に混じっているのである。


 また、これくらい厳しく目標を立てておかないと、「あれも惜しい」「これももったいない」となって、結局ほとんどが残ってしまい、仕分け作業そのものが徒労に終わる……ということになりかねない。


 私は情を持たぬ冷徹なマシーンとなりきり、びしばしと選別していった。



 これでも、最終的には、6割以上が残った。


「不要」の山は、家族に最終確認を行った上で――特に思い出深い服や、家族の服が混じっていることもあったため、この作業は非常に大事だった――まとめてゴミ袋に突っ込み、ゴミの日に廃棄した。


 どこかに持っていけば、援助活動等に使ってもらえたかもしれないが、何しろ私自身が極度の片付け初心者だったため、そこまでの余力はなかった。

 今度、服を廃棄する機会があれば、ぜひ調べて送るようにしたい。


(事実、しばらく経ってからの二度目の「選別」のときには、ちょうど外国への援助物資の募集がかかっていたので、大丈夫そうなものを洗濯して持っていったら、全部受け取ってもらえた)



「必要」の山は、「トップス」と「ボトムス」に分け、大ざっぱに畳んで、それぞれケースに収納した。


「大ざっぱに」というところが、特に重要。

 私は数ある「整理整頓」系統の作業の中でも、「服を畳む」という作業が特に嫌いだ。

 もう、テメエら全部まとめて燃えちまいやがれ! というくらいに嫌いだ。(←実際に燃えたら困るが……)


 こういうところを、あまり丁寧にやりすぎると、イライラしてきて、やる気が続かなくなる恐れがある。


 床の上で踏まれてぐっちゃんぐっちゃんの雑巾状態から、曲がりなりにも、畳まれてケースに入っている状態にまでなったのである。

 これだけでも、原生動物から一気に哺乳類になったくらいの大進化ではなかろーか!?


 そう自分に言い聞かせ、軽~く、パッパッと畳んで放り込む。


 とりあえず「全ての服がケースに収まっていれば」合格だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ