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総入れ替えだ!

 そうと決まれば「善は急げ」というヤツである。

 2.は後でもできるとして、まずは、


 1. 収納の容積 ≻ 物品の体積 という状態を作る。


 これを、早急に達成する必要がある。

 というか、これを達成しないことには、全てがどうにもならない。


 達成する方法は簡単だ。

 収納を大きくするか、さもなくば、物品を減らせばいいのである。


 さあ、どちらにしようか。


 ――両方やろう。



 まず、あのたんすは、完全に使えない。

 なぜ、あんなシロモノがこれまで幅をきかせてきたのかといえば、それはひとえに「私が赤ちゃんのころから使っていた、思い出と歴史ある家具」だからである。


 これぞ、老害というべきであろう。

 オーク材のクロゼットや総桐のたんすなら、古さに価値もあるが、あれはただの合板製だ。

 そもそも、開けるたびに木屑の出るたんすなど、もはや、たんすの名に値せぬ。


「片付け道」に情けは無用――

 早急に、処分すべし!


 まずは、たんすの中に納まっていた服を全て引っ張り出し、とりあえず、ゴミ袋に詰め込んだ。

 床に散らばっていた服も全て拾い集め、マシなものはホコリをはたき、ひどいものは洗濯してから、やっぱりゴミ袋に詰め込む。


 大量の「服入りゴミ袋」は、新しい収納が入るまでの仮の場所として、物置として使われている小部屋に放り込んでおいた。


「よし、ついでに、これも捨てよう!」


 続いて決断したのは、椅子つきの勉強机。

 この机は、小学校入学時に買ってもらい、それ以来ずっと使ってきた、やはり思い出と歴史ある存在だ。

 そんな貴重な存在を、なぜ捨てるのか?


 理由は簡単。

 デカすぎる。


 むやみにデカく、部屋の中で、不必要にスペースをとっているのだ。


 しかも、ある事情から棚を取り外してしまったため、もともと棚があった「向こう半分」に、本だの資料だのを平積みして使っていた。

 それらに圧されて、結局は、作業スペースが狭くなる。


 引き出しもいくつかついているが、どの段もがたついて、滑りが悪い。


 さらに、この机には椅子がついているのだが、クッション部分が完全にヘタっており、しおれた座布団を二枚重ねて座らねばならないという有様。


 座るところも背もたれも固い、高さの調節はできない、足置き台も位置が合わない……と、もう、どうしようもない。


「机はもっと小さくていい! で、上にはモノを置かず、作業スペースを確保する! あと、椅子もまともなヤツを買う! 背もたれがあって、高さ調節ができるやつ!」



 そして、


「ぎゃあ! 何コレ!?」


 机を捨てる準備として、引き出しの中身を抜き、本は別室の「長城」へ、その他は新たな紙袋に詰め込んで廊下へ、と物品を移動させていた私は、徐々に見えてきた「床」を目にして悲鳴をあげた。


 ホコリのかたまり。髪の毛。木屑。

 消しカス。紙屑。シャーペンの芯の折れたやつ。


 年の単位で手付かずだった床――

 そこに敷かれたじゅうたんには、ヤバいほどの汚れが溜め込まれていた。


「きっ……きったねええぇぇッ! 今まで、この部屋で呼吸してきた自分が信じられん! よし、今すぐに掃除機を……いや、待てよ。

 じゅうたんを捨てよう!」


 新たなる別れの決意だった。


 別に、そのとき掃除機をかけるのが面倒くさかったから、というわけではない。

 私は、これから先のことを考えていた。


 一瞬、きれいになるだけでは意味がない。

 この部屋をきれいにした暁には、その状態を末永くキープしていかなければならないのだ。


 私のような極度の、重症の、真性の面倒くさがり屋が「きれいをキープ」するためには、「きれいをキープしやすい環境」をあらかじめ作っておくことが、ものすごく重要だ。


「じゅうたんは、いちいち掃除機をかけきゃならないのがダルい。

 じゅうたんを捨てて、フローリングを剥き出しにしよう!

 汚れも見つけやすいし、拭き掃除さえすればいいんだから!」


 たんす、勉強机&椅子、そしてじゅうたん。

 けっこうな大物が葬り去られることになった。


 勉強机に関しては、デカすぎ&重すぎて、そのまま階段から運び出すことはできない。

 そこで私は、部屋の中で机にノコギリをかけ、天板部分を切り離し、さらに、下の部分を真っ二つに断ち切った。

 むろん、じゅうたんは木屑まみれになったが、もともと捨てる予定なので、何も問題ナシ。


 いきなりそこまでするかっ、と家族は呆れていたが、今回、私がやりたいのは、小手先の整理整頓ではなく「混沌カオスから秩序コスモスを生み出す」という大事業なのである。

 手加減の余地はない!


 解体したたんす&勉強机&椅子を庭に放り出し、粗大ゴミとして引き取ってもらう手続きをする。

 じゅうたんは、30cm四方ていどの大きさにザクザク切り、普通にゴミに出した。


「おおお……部屋が、広いッ……!」


 ――いや、感動してる場合ではない。

 大物家具があれだけ退いたのだから、広くて当然だ。


 この後、あらためて、新しい収納と机&椅子を入れなければならないのである。

 うまくしないと、またもや狭くなる。

 それでは、死んでいったヤツらが浮かばれない。


 新しい収納は、半透明の積み上げ&引き出しタイプの衣装ケースと決めていた。

 これなら、見た目もスッキリするし、半透明なので、どの段に何が入っているかが分かりやすい。

 もしも服が増えても、ケースを買い足して積めばいいので、溢れるということがない。

 それに、もちろん、木屑も出ない。


 机も、同じメーカーのものにした。

 ファブリックのカタログをめくっていて発見した「木製の折り畳み机」。

 別に折り畳む予定はない――そんなことをしたら、使うときに面倒くさい・・・・・ではないか!――が、求めていたサイズ感にぴったりだったのだ。

 余計な引き出し等もなく、まさにシンプル・イズ・ベストのデザイン。

 厚みを見れば、前の机から引き継がれた取り外し式のライトを装着することもできて、言うことがなかった。

 

 ここまで来たら、椅子も同じメーカーだ。

 大物家具は、テイストを揃えたほうが、見た目にもすっきり決まるだろう。

 やはりカタログで目をつけていた、アジャスター機能・背もたれ・キャスター付きの一品に決めた。


 実際に店頭を訪れ、ケース、机、椅子を一括して購入し、期日指定で、家まで送ってもらうことにした。



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