模索せよ、ベスト・ポジション。
そして、手作りゴミ箱(←箱じゃない)に自信を得た私は、これまで自分がとらわれていた既成概念を打ち破り、デスク周りを、より柔軟に、使いやすいものに改造することに決めた。
デオドラントスプレー、香水、エッセンシャルオイル、お香、ライター、綿棒、アクセサリーケース――
これらの雑貨が、机の上に出しっぱなしになっていたのは、つまり、それだけ使用頻度が高い品物だからである。
と・いうことは、これらをまとめて一ヶ所に収納する「よく使うモノ置き場」を作れば、散らかることはないはず!
さあ、いったい、どこに置けばいいものか?
「待てよ。よく考えたら『本棚には本しか置いちゃダメ』って法はないよな!」
私的「神作品」を集めた本棚、略して『神棚』の最上段の左端は、机に座って右手を伸ばせば、すぐに手が届くポジションである。
『神棚』におさめる本を減らして、ここにスペースを空け、よく使う雑貨をまとめて収めるというのはどうか!?
「いや……だが、待てよ……」
この『手を伸ばせば、すぐに届く』というところに、実は問題があるのだ。
ぐっと身を乗り出し、ぐっと手を伸ばせば、すぐに届く距離――
だが……この、超絶面倒くさがりの私が、ちょっと疲れているときなどに、果たして「ぐっと身を乗り出し、ぐっと手を伸ばす」などということを、わざわざするだろうか!?
ほんの15~20cmの話だが、骨の髄までの「面倒くさがり」にとって、その距離は、心情的には東京~大阪間にも匹敵する。(←ちょっとオーバー)
「こりゃ、無理だなっ!」
自分のことは自分が一番よく分かっている。
絶対、無理だ。
そのうち必ず「手を伸ばすのが面倒くさいから」といって、使ったものを机の端に置き始めるに決まっている!
『モノは、モノを呼ぶ』
経験上、どこかにひとつでもモノを置くと、そこは「モノを置く場所」となってしまい、後から後から、どんどこモノを置くようになってしまうのだ。
その結果、またまた机上がモノの山と化してしまうであろうことは、すでに火を見るよりも明らか!
「うーん……じゃあ、よし! こうなったら、またまた模様替えじゃあ!
『神棚』自体を、机のすぐ左側まで動かそう!」
無理なことを、無理にがんばろうとするより、最初から無理なくできる環境を作っておいた方が、あとあとラクである。
これまで、机の右側に、机と平行に設置されていた本棚を、机の左横に、垂直に設置するという模様替えが実行された。
しかも、机と本棚を、ぴったりくっつけて。
こうすれば「右手をぐっと伸ばさないと、モノが取れない」状態から、「左手をちょっと動かすだけで、すいすい取れる」状態になる!
だが、問題もあった。
こうすると、全部で4段ある本棚のうち、下から3段目までが、半分ほど、机と重なってしまうことになる。
その「重なってしまう場所」に並んでいる本たちは、いったいどうするのか!?
だが、これにも解決策はあった。
「必殺! 『神棚』分割計画ッ!」
部屋にもうひとつある収納家具、以前からちらほら登場していた「ステンレス製のラック」。
こいつに、あらためて活躍してもらうことにしたのだ。
よくよく見てみると、ステンレスのラックに入っている物品のほとんどは「確かに要るのだが、そうしょっちゅうは出番のないモノ」ばかり。
しょっちゅう出番がないならば、多少、不便なところ(本棚の、机と重なるところ)に仕舞ってあっても、大きな影響はないではないか!
ただちに、ステンレスのラックの中身と、『神棚』の中身、それぞれ一部をごっそり入れ替えるトレードが行われた。
その際、ついでに本たちもあらためて仕分けし、出番が少なかった本たちは2軍落ちして「万里の長城」へと旅立っていった。
そして『神棚』の一角に生まれる「毎日使う雑貨コーナー」。
左手を、横にちょっと動かすだけで、全てのモノがすいすい取れる、戻せる!
「ようしっ! ベスト・ポジション!」
さあ、次の問題は、文房具類だ。
当初は、机上にペンケースを置いてそこに収納していたのだが――
ハサミやノリはペンケースに入らないので、もともと机上に直置きされていたし、ペンも多すぎて、ちょっとがんばらないとペンケースのチャックが閉まらなかった。
私が、これまでの幾多の失敗から悟ったことは、「ちょっとがんばれば入る」=「ちょっとがんばらないと入らない」という収納は、まず間違いなく、近いうちに機能しなくなるということだ。
もう、スッカスカッ! というくらいに余裕をもって、一切、何の引っ掛かりもなく、バンバン出し入れができる状態でないとダメなのである!
「黒ペン、5本もいらねぇ! 赤ペンも1本でいい! ハサミも、2本もいらねーよっ!」
選び抜いた精鋭たちを、銀色のすっきりとしたペン立て(←片付けていたら、ゴミの山の中から発掘された……)に入れる。
これから先、机上に置くものは、このペン立てと、PC、マウスパッド、コースター(と、マグカップ)のみに決めた。
というか、よく考えてみたら、絶対に毎日、それも高頻度で使うペン類を、いちいち「開け閉め」しなければならないペンケースに収納していた意味が分からない。
「開け閉め」という行為は「手間」に他ならず、手間がかかる=面倒くさい=カオスへの道である!
こうして、新たなるポジションで動き始めたデスク周り。
この秩序は、今に至るまで、崩れていない。