片付けない女を引退。
※100%、実話です。
※私の名誉のために、冒頭部の描写は「数年前」の状態であり、現在は(多分)普通のレベルの部屋であることを一応申し添えておきます(笑)
この文章を、全ての「片付けない」同志たちに捧げる――
* * * * *
ある日のことである。
突然、自分の部屋が、どうにもこうにもイヤになった。
足を踏み入れると頭痛や吐き気に襲われる……などというわけでは全然ないのだが、とにかく、自分自身の部屋に、ほとほと愛想が尽きたのである。
書類、文房具、服、ダイレクトメール等がうずたかく積み上げられ、作業するスペースが1ミリもない勉強机。
そして、1ミリも後ろに引けないために、座ることができない椅子。
なぜ椅子が引けないのか、というと、理由は簡単だ。
書類、ノート、本、雑誌、その他モロモロ得体の知れない物品類を詰め込んだ無数の紙袋たちが、本来ならば椅子が引かれるべきスペースを埋め尽くして、床を占拠しているからである。
いや、紙袋だけではない。
床一面を埋め尽くす、しわくちゃの服、服、服。
一度か二度、着たものもある。
洗濯を終えて持ち込んだはよいが、山のままで適当にそのへんに置いておいたため、いつしか崩れて床に散らばり、カオスの海に没していったものもある。
――もはや、ここは「部屋」とは呼べぬ。
「ゴミ箱」もしくは「産廃処分場」という呼称がふさわしい。
あえて部屋であるとするならば「三人組の強盗が押し入り全力で荒らし回り、最後にコサックダンスを踊り狂っていった部屋」とでも言い張るしかないだろう。
私は、自他ともに認める「片付けない女」だ。
当然である。
私が「片付ける女」だったならば、そもそも部屋がこんな状態になるはずがない。
なぜ、片付けないのか。
理由はひとつ。
面 倒 く さ い からだ。
もちろん、あまりにも部屋を「片付けない」ことを、家族に責められることもたびたびあった。
そんなときにも、
「アタシの遺伝子には、そんな選択肢は組み込まれてないようだねぇ……」
などとほざいて茶をすすってしまうほどに、私は、一本スジの通った「片付けない道」を邁進してきたのだ。
しかし、その日。
ついに「時が来た」ことを、私は悟った。
今日、私は「片付けない女」の名を返上する。
この部屋を、片付けねばならぬ。