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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
3章、薬屋さんの錬金術師
83/86

82 召喚者はやっぱり……

 悩みに悩んだらしいがけっきょくサオリは一緒に教会に行ってアレックさんに会う事にした。どのみち自分の存在が知られるのなら自分から行くと決めたようだ。

 そして教会に行きアレックさんに森で出会ってからの事を全て話し終えた。


「ユリト君のアレなものもここに極まれりって感じだね」

「そういう言い方はないんじゃないかと思うんですけど」

「ごめんごめん、私としてもどう反応すればいいのかわからなくてね。私がまずサオリさんに言えることは1つだ」

「は、はい」

「君が帰る手段はない」

「そ、そんな……呼び出すだけ呼び出しておいてそんな勝手許されるんですか!? 呼び出すなら帰る手段だってあっていいはずじゃないの!」


 サオリの言う事が正しすぎて耳が痛い。でもアレックさんが知らないだけで本当はその方法があるんじゃないだろうか? ない場合協力的でない勇者様が現れた場合どうするんだろう?


「我々の勝手で呼び出しておいてと言うのはその通りなんだけどね。そもそも全てが借り物でね。どれだけ研究しようとも召喚に関する事はまったくわかってないだよ」

「借り物ってどういうことですか?」

「神からの借り物なのだよ。だから使い方は教えてもらったが、解析も別の用途にも使う事はできないし、勇者様が死んでからじゃないと使えないようになっているんだよ」

「ならその神様にお願いしてよ! そんなのを教えてくれるくらいの神様は近いんでしょ!」

「召喚は最後の切り札だったんだ。だからそれ以後この世界には神は降りてきていない。申し訳ないが無理なんだよ」

「そんな……ユリト……無理だって……無理って言われたよぉ……」


 サオリは俺に抱き付いて泣いている。それはそうだろう。望みを託してここに来たのに完全にその望みを絶たれてしまったんだから……。


「アレックさんが知らないだけじゃないの?」

「そうかもしれないと言えたらどれだけ良かったか……。教会も国も思惑は色々あるだろうけど、定期的に調査しているんだよ。私はその調査を手伝っていてね。すべて知っているんだよ。だからこそ、帰りたいと言う者が出てきたことに驚いているんだよ」


 アレックさんの言葉に少し引っかかった。何にひっかかったんだ? 帰りたいと言う者が出てきたことに驚いてる? 今までの勇者さまは全て協力的だったのに? そこでサオリを見て思い出す。サオリはたぶん勇者様じゃない。帰りたいと言う者? 勇者様じゃなくて者? それってつまり……。


「アレックさん。それってサオリみたいに巻き込まれて召喚された人が今までにもいて、その人達も含めてすべての人が協力的だったって事ですか?」

「そう、その通りだよ」

「そんな事ありえない。……チッ、これが神が関わってるって事かよ」

「ユリト君? それはどういう意味かな?」

「どうもこうもないでしょ? そんな都合のいい話があるわけがない。でも教会も国も全ての人が協力的だったと言う。国と教会が隠してないって言うなら、召喚そのものに仕掛けがあるってことでしょう?」

「ユリト? それどういう事?」


 泣いていたサオリが顔を上げてこちらを見てる。たぶんサオリが、今までの中でサオリだけが正常に近い状態なんだと思う。


「どの時点か、まではわからないけどどこかで洗脳されてるんだと思う。誘拐に洗脳とか神も国も教会も腐ってる」

「はぁ、ユリト君。私は君が昔からどうにも神に対して思う事があったのは知ってるし、普段のユリト君も知ってるからいいけど、他の人の前でそんな事を言ってはダメだよ。聞かれたら罪人になるよ」

「っ…………わかりました」


 本当は言いたいこともあったけど、忠告は聞いておくべきだろう。俺だって今までは周りに言っちゃいけないって思って我慢してきたんだから。でも、今回はさすがに我慢しきれなかった。それが思わず出てしまった。反省しようとは思わないけど気を付けるべきだと思う。


「ユリト君の帰るっていうトラウマじみたものは知っているけど、これからは本当に気を付けてね。私としてもユリト君と話せなくなるのは寂しいからね」

「わかりました。気を付けます」

「それでサオリさんは少しは落ち着いたかな?」

「ユリトのおかげで多少は」


 サオリはまだ俺に抱き付いているし、なんとか泣くのが止まったくらいだし、本当ならこのまま帰って休ませてあげたいんだけどね。


「今日はもう帰って休むかい? 教会で君を預かってもいい。むしろそうする事がせめてものと思うのだけどどうだろうか?」

「やることだけやってしまいたいです……。できればもう来たくないから」

「そうか、わかった。それじゃぁこの水晶に触ってもらえるかな?」

「はい」


 いつも通りの確認の儀の光景だったけど、アレックさんの表情が強張ってる。そう言えば勇者様の能力って高いんだっけ? でも、サオリは勇者様じゃないはずだし、それでも高いのかな?


「確認の儀は今後行わない方がいい。本来なら確認の儀の情報は保管されるものなのだが、これはここだけに留めて破棄させてもらう。正直に言えばこんなもの見た事が無い……」

「そんなにすごいんですか? 巻き込まれたならもしかしたら高いかなとは思ってましたけど」

「そんなものじゃないよ。過去の勇者様の情報というのも確認の儀をできるものなら勉強段階で見せてもらえるんだが、それでもこんなギフトやランクがあるなんて初めて知ったよ。まぁ見てみるといい」

「それじゃぁ、サオリ? 見てもいいかな?」

「私じゃよくわからないから、ユリトが覚えておいて」

「わかった」


 そうして見せてもらった訳だけど……なんだこれ?


 身体能力A 魔力SSS

 ギフト     魂の守護、成長加速、ラーニング、ステータス、言語、加齢調整

 スキル ラーニング取得ギフト、ラーニング取得スキル


「えっと……アレックさん?」

「サオリさんもいることだし、説明するが能力は本来SからFになる。ただ、勇者様の中には一部SSというランクになる方がいらっしゃったが、勇者様以外にそんなランクを持ってる者はいなかった。だからSと説明するのだが……SSSなんてものは見た事が無い。身体能力は体の強さでAだとレベルが上がっていなくてもそれなりの強さがある。魔力SSSに関してはもう想像もできない」

「私すごい?」

「サオリ……レベル上げれば最強戦力の1人決定ってくらいすごい」

「そんな能力はいらないんだけど……」

「能力もすごいけど、ギフトも見た事のないものばかりだよ。言語とステータスは勇者様が必ず持ってるギフトで、成長加速は勇者様が持ってる事のあるギフトだから情報があるけど、他はまったくわからないね。何かわかるかな?」

「私にはさっぱり……」


 サオリが分からないんじゃ誰にも分らないよねって思ってたんだけど、なんだろ? なんとなくわかるようなわからないような……。情報の書かれた紙をジッと見ていた。


「ユリト、どうかしたの?」


 サオリと目が合った。その瞬間に何かの情報が流れて来るような感覚を得た。なんなんだこれ? よくわからないけど、頭が少し重い。


「ユリト?」

「あぁごめん、サオリ。大丈夫」


 もう1度、紙を見ると意味がわかるようになってた。本当にこれなんなんだ?


「えっと、ラーニングが見た事のあるギフトやスキルを自分のものとして使えるギフト、加齢調整は年齢のとり方を自分で調整できるギフト、魂の守護は……誰かがサオリを守ってる?」

「ユリト君? それはどういう事かな? なぜそんな事がわかる?」

「そう言われても、なんででしょう? さっきサオリと目が合ったら分かるようになってたんですけど……でも、これで錬金術が使えた理由はわかったか」

「錬金術を? それがラーニングによるものだと……にわかには信じがたいね」

「サオリちょっと見ててプロテクション」


 俺はプロテクションを発動させた。それをサオリがしっかり見てるのを確認してから消す。


「やってみて」

「えっと……プロテクション」


 1度発動してみせただけだったけど、問題なくサオリはプロテクションを使って見せた。見るだけで覚えるってどんだけだ……。これってどこまで覚えられるのかな? いや、俺の力じゃないんだから試そうと思うのはやめよう。


「もう切っていいよ。ありがとうサオリ」

「うん、なんか簡単に覚えちゃったね」

「そうだね。だけど、見せてもらわないと使えるようにならないし、見たままができる訳じゃなくてそのスキルやギフトを初期状態で覚えるだけだからちゃんと育てていかないといけないけどね。ポーション作った時に1本しか作れなかったのがいい例だね」

「ユリトは10本まとめてだったけど、私は1本だったっけ」

「そう言う事」


 そうだとしてもとんでもない力であることは確かだ。アレックさんもだけどレーリックおじさんの力も借りないとまずいと思った。


「ユリト君。彼女の事は教会にも国にも報告しないが父には報告させてもらっていいだろうか? 私1人では守り切れる自信がない」

「よろしくお願いします。レーリックおじさんに力を借りないと国からは守ってもらえそうもないですし……勇者がもしかしたら彼女の事探すかもしれません。そうなった時の手札が1枚でも多くほしいです」

「わかった、任せてくれ。サオリさん。今回の事は本当に申し訳なかった。送り返せない事も謝る事しかできない。だが、これ以上は君の不利益にならないように努めよう。君が望むなら教会でも国でも保護し生活のめんどうをみよう。すぐに答えは出ないかもしれないが考えておいてほしい」

「私は……できればこのままがいいです」

「ユキト君」

「サオリが望むならいつまでも。最初からそのつもりで連れて帰ってきてますから」

「わかった。私からも出来る限りの協力はする。よろしくお願いするよ」

「こちらこそ、お願いします」


 こうして、アレックさんとの話は終わった。色々ありすぎて俺も休みたいが、サオリの方がもっとそうだと思う。帰ってゆっくり休んでもらおうと思う。

 俺はまだポーションの為に薬草もらいにいったりしないといけないんだけどね。


 余談だが、帰る時になって途中からずっと抱き付きっぱなしだった事実にサオリがようやく気づき真っ赤になっていた。

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