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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
3章、薬屋さんの錬金術師
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81 錬金術の花

 ポーラ姉さんとグレンさんにレーリックおじさんからの手紙を届けに来た人たちがいた。今ではその2人が家の事をしてくれてる。ただまぁ、森によく入っているし、森に行かない日も魔力草採りに別の森に行ったり、部屋にこもってポーション作りしたりしてるため接点があまりない。

 そんな2人にこの事態をどう説明しようかと思ったけど、訳ありだけどうちで預かる事にしたからって言ったらそのまま通ってしまったので拍子抜けした。とはいえしばらくは彼女の行動を監視してそうではあるけど、それが仕事のうちだから仕方がない。

 ついでにサオリの服を何着か買ってきてもらう事にした。自分で選びたいかもしれないけど町中を歩くのにブレザーは目立つのだ。ブレザータイプの服も売ってるには売っているが勇者様が異世界から着てきた衣装ってことで恐れ多いと町ではあまり着られてないのだ。


「なんかその……色々ありがとうね」

「俺がしたくてやってることだからいいよ。明日にでもアレックさんの所に行ってみようと思うけどどう?」

「会わないとダメかな?」

「会わなくてもいいけど、俺と一緒に行動してるのは見られてるし手遅れ?」

「しばらく時間があるって言ったのに」

「帰ってくるまで時間あったよね?」

「数日は時間があって、会わないなら会わないでいいと思ってたよ」

「それはごめん……。でも、会いたくないなら会わなくてもいいよ? 森で女の子拾ったくらいの報告はするけどね」

「それはそれでいいの?」

「いいんじゃないかな?」


 アレックさんに会う会わないはサオリが決める事だと思う。教会の人間だし、王族の血も引いてる。こっちに来る原因になった組織に連なる人物なら警戒するのもしょうがない。それならそれで俺が帰れるかどうか聞いてくるだけなんだけどね。そもそも隠せないだろうしね。


「会いたくないなら俺が聞いてくるけど、自分でちゃんと聞いた方がよくない?」

「それはそうなんだけど……」

「とりあえず考えておいて。疲れてない? 部屋なら準備するように言っておいたからたぶんもう休めると思うけど」

「おんぶしてもらってただけだしいいかな……。でも、なにしよう……」

「なら俺はポーション作らないといけないから、その作業の合間に一緒にこっちに来てるかもしれない人達の話聞かせてよ。後、桜井君だっけ? その人の話も聞かせてよ。なんだかとっても気になるから」

「桜井君は男なんだけど……」

「なんとなく名前がひっかかるだけだって。とはいえそういう名前の人に会った事があるわけじゃないけどね」

「ポーション作りも気になるしそれでいいかな」


 そんな訳で薬草をクロノボックスから持って来て、ポーション作りをしながら話を聞くことになったんだけど、まさかこんな所でその名前を聞けるとは思わなかったのだった。




「桜?」

「ん? 何が?」


 クロノボックスに入ってた薬草でポーションを作った時にサオリが思わずと言う感じでポロリと言葉が漏れた。サクラって言ったかな? 何のことだろう?


「今、こうフワァ! って木が出てきて花が咲いたでしょ? その花の名前。っていうか今の何!? そんな風に作るのが普通なの!?」

「サクラ……サクラ……桜、あぁなるほど桜、あの花は桜なんだね」

「そうだけど、そうじゃなくって!」

「作り方は普通じゃないよ。俺は錬金術を使ってるからね。普通は切ってすり潰してとかして作るね」

「魔法らしい魔法って初めてみた」

「目の前で、戦ったり、水出したり、火出したり、清浄できれいにしたりしたよね?」

「戦ってる時は見てないし、他のはちゃっちかったし」

「ちゃっちかったって……」

「私もできるかな?」

「わからないよ。それこそアレックさんの所にいかないとね」


 突然さっきまで会うかどうかなんて話題になってる人の名前が出てきたことにサオリは眉をひそめていた。知らないんだからしょうがないよね。


「どうしてその人の名前が出てくるの?」

「魔力があるかどうか、その人の持ってるギフトを確認するためには教会で確認の儀を受ける必要があるんだよ。この町で確認の儀をやってるのは主にアレックさんだからね」

「試してみるだけ試してみるっていうのはダメなの?」

「ダメだね。魔力がない人が魔法使おうとすると気絶するから……」

「それはさすがに勘弁してほしいなぁ」

「そんな訳で使うのはやめようね」

「私もポーション作れそうな気がしたんだけどなぁ」

「今、なんて言った?」


 サオリの言葉がひっかかった。いや、それは俺がいつもいってる勘じゃないのか? そうだとしたら、作れそうと感じたなら作れるのかもしれない。もしそうなら……どれだけ魔力あるんだよ……。


「作れそうかなぁって思ったんだけど、あ、ごめんなさい、そう簡単じゃないよね」

「とりあえずこの薬草を観察してその感想を教えてほしい」


 俺の真剣な様子に驚いたようだがジッとサオリは観察する。さて、どんな言葉が出て来るのやら。


「これから使えばポーションができるって言われてる気がするんだけど、これ何? ファンタジーって言われればそれまでだけどなんだか怖いわね」

「これ魔力水ね。作ってみて」

「え? やめた方がいいんじゃないの?」

「作れるから作ってみて」

「う、うん、わかった。それじゃ……錬金」


 サオリの言葉に答えるかのように、錬金術が発動して、花が咲き、ポーションが出来上がった。そう花が咲いたのだ。


「あ、また桜が咲いた」

「サオリの錬金術は桜が咲くんだ……」

「私のは? 普通はこういうものじゃないの?」

「俺が前に弟子をとった事があったんだけど、その子はもっと簡単に終わって花が咲かなかったんだ」

「そうなんだ……不思議な事もあるものね」

「それで体におかしい所はない?」

「特にないけどどうして?」


 魔力使いすぎによる疲労感がないって事はやっぱり魔力が多いとは思うけど、レベルがあがったのは今日が初めてのはず。その1回でどれだけ上がったんだ? それにたぶん元々もだいぶ多かったのだろうと推測できる。


「魔力って使い過ぎると疲労感になって出てきたり、気絶するから」

「そんな危ない事させないでほしかったよ……」

「サオリができるって思ったならできるんだよ。錬金術の勘ってそういうものだから」

「そうだとしても一言ほしかった……」

「ごめんごめん」


 そして、ポーションを作って魔力回復の間に話を聞いた。俺が話すにしてもサオリからこの手の話を聞いておけば信用してもらいやすくなるからだ。


「まずは何が起こったか話してもらえるかな?」

「うん、ざっくりまとめると、放課後に私が桜井君と話してたら、風岡君達が近づいて来て、そうしたら足元に何かが広がって動けなくなっちゃったの。それで桜井君はそれの範囲にはいらなかったみたいで動けたんだけど、私をそこから動かそうと手を貸してくれたの。そうしたら桜井君もまわりにあった机も椅子も吹っ飛ばして、気がついたらあそこにいたの」

「うん、なんとなくわかった」


 その風岡とか言うのが来てしまった為に巻き込まれたんだろう。前に名前聞いた時も思ったんだけどやけにイライラする名前だ。名前を聞くだけで嫌な気分になる。でも聞いておけば今回の勇者の情報を正確にわかるということで信ぴょう性も増すだろう。


「それじゃぁ、他にこっちに来てそうな人のこと聞いてもいい?」

「いいけど、風岡君くらいしか知らないの。他の2人は他のクラスで名前も知らないから」

「それならその風岡ってのだけでもいいから教えてもらえる?」

「それはいいけど、なんかトゲがない?」

「よくわからないけどその名前を聞くとイライラする。まぁ気にしないで続けてほしい」

「私も風岡君はしつこいから嫌いだけどね。でも、ほかの女子には人気があるんだよ。いつも違う女の子達といるからね。その時はたまたまあの2人だったんだと思うよ」


 違う女の子達といると言われるとなんだか無性にイライラする。もてる男が憎らしいとかはそれほど思ったことがないんだけどなぁ。アーサー君とか見ててもそんな気持ちにはまったくならなかったし、今思い出しても苦労してるだろうなぁくらいにしか思わない。俺も誰でもいいから彼女ほしいと思えばこの町での立場的にすぐに見つかるから羨ましがる必要もないし……。


「そういう情報もいいけどもっとわかりやすいものがいいかな」

「えっと、黒髪短髪だけどオシャレな感じで、見た目はカッコいいだよ。それに女の子には優しいしね。でも女の子は誰でも自分に好意を持つと思ってる様なあの態度は私どうしても嫌で、近づかないから私に興味持って近づいてくるからうっとおしいんだよね」


 それを聞いた時に、○○○○○○○○○○○○○○。って声が聞こえた気がした。なんて言った? いや、そもそも聞こえたのか? なんだかよくわからなかったけど、その後も風岡の情報や、向こうの世界での事、桜井君の事を聞いた。

 ただのクラスメイトと言う割にはサオリの態度が話をしながらソワソワしていて、その様子からなんとなく好きだったのなぁ? なんて思うのだった。

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