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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
3章、薬屋さんの錬金術師
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78 これまでのこと、そして始まり

 あの暴走から3年以上がたち、俺も18歳になった。これまでの間にあったことを簡単に説明しておこうと思う。


 まずはポーラ姉さんとグレンさん。

 この2人はあれからしばらくしてレーリックおじさんの要請により旅立っていった。理由は暴走、活性化の鎮圧だ。知り合いの商人さんに聞いたが世界中で起こっていて、そのどれもが大規模化、長期化してるという話だった。この状態ではいくら冒険者ではなくなったとはいえ、圧倒的に活動できる人数が足りないと言う事で要請を受けて旅立ったと言う訳だ。

 落ち着いたら戻ってくると言っていたけど、いつになったら落ち着くのかわからない状況だった。


 エレナさんとジルベルトさん。

 この2人は暴走が起こってから1年くらいしてから結婚した。エレナさんは今では受付には立たない。とはいえ俺は報告する事があるので週1くらいであってる訳だが……。エレナさんのギルドでの立ち位置はガリックスさんの補佐になった。サブマスターはギルドの裏方のまとめ役だ。適任だと思う。

 ジルベルトさんは警備隊に入らず冒険者として活動してる。マティスさん達と同じように新人の指導をしてくれている。とはいえこんなご時世なのでオークの狩りに行く事も多い。森の浅い所にいるのは大抵オークなのだが、ウォーリアーが混ざってる事がある。そのためオークの肉を確保するのに付き合ったり、新人にくっついて言っているのだ。

 Bランクなのでよそに行くんじゃないかと思っていたんだけど、町周辺もなんだかんだで物騒なため残ったと言っていた。実際の所はエレナさんと離れたくないという事だと思うけどね。


 実家の方は暴走の後、家族会議が開かれた。

 兄さんが死んだと報告すると母さんは泣いてたけどマリーナ義姉さんはやっぱりと寂しそうにしてた。どうやら今回の事で功績を作ろうとしてたのを知って無理しないでほしいと言ったけどけっきょく聞き入れてはくれなかったようだ。

 マリーナ義姉さんは迷惑をかけたからと生まれたばかりの赤ん坊を連れて出て行こうとしたが、さすがにそれはと3人で必死になって止めた。

 4人で話し合った結果、マリーナ義姉さんに誰かいい人ができたならここを出て行ってもいいけど出来れば仕事は継続してほしいと言う事になった。マリーナ義姉さんがいなくなったら事務が壊滅状態になるのが目に見えてたのだ。そんな理由で引き留めた。まぁ実際は孫に情があったし、マリーナ義姉さんも家族の枠にすでに入っていたという所だ。血のつながった兄さんとはけっきょく嫌い嫌われ状態だったのにね……。

 それで俺が家を継ぐことになった。いや、15になった時に継いだ。母さんから正式に俺に所有権が移ったのだ。とはいえ母さんのやってたいくつかの仕事を受け継いだくらいで大部分はマリーナ義姉さんや新しくはいった人、それに母さんもそこに入って仕事してる。俺の事は後で話すが、今は調薬をやってる時間がほとんどなく腕がさび付くばかり。ちゃんと継いでいるとは言えない状態なのだ。

 この為、マリーナ義姉さんの息子が成長したら調薬を教えて家を継がせようとみんなで話してる。もちろんそれで縛るつもりは毛頭ないが俺には俺の住んでる家もある。早いうちから調薬を教えられる子がいるならその子を優先してほしい。

 マリーナ義姉さんの子供はルイス君と言う。俺にもなついてくれててけっこう可愛い。ただ、俺を見る目がキラキラしてるのが将来を少し不安にさせる。自分の人生だし最後に決めるのはルイス君とは言え、なんか冒険者になる! とか言い出しそうだ。俺がポーションの納品してるのを見てるのでそれで調薬にもちゃんと興味を持ってもらえたらいいなと思う。


 レーリックおじさんからはなぜかアレックさん経由で手紙が届く。

 なんでも騎士たちの多くが外に出てる為、不埒な輩が王都で暴れないように残った騎士や警備隊を引き連れて町を歩いてるらしい。なにやってるんだろうかと思うけど、そのおかげで王都の安全はそんなに変わらないらしい。

 アレックさんは特に変わりはないと思う。思うと言うのは部屋になんか豪華な衣装が飾られるようになったのだ。これは何かと聞いても最低限飾っておかないと面倒な物と教えてくれただけだ。その衣装って立場を表しているものなのですかとは怖くて聞けなかった。


 レーリックおじさんからの手紙でソフィーの現状も教えてもらった。

 各所の協力を得て、ギフト錬金術保持者を集めてその力を使えるようにがんばってるらしい。詳しい話はできないという事だったが、俺とソフィーの時とは違いものすごく苦労してるらしい。苦労はしてるらしいが、成果は十分に出てるらしく王都では錬金ポーションとしてけっこうな数が売りに出されているようだ。

 ただ、錬金ポーションプラス販売は見合わせてるらしい。ポーションに関しては元々使用期間が短く廃棄になる事がちょくちょくあり、作っても作らなくてもどっちでもいいような商品だった。でも作っておかないと品ぞろえが悪いと思われるのでとりあえず作ってたようなものだ。だから錬金ポーションは問題なく受け入れられた。

 ハイポーションは元々それなりに長い期間使える物だったために錬金ポーションプラスと競合すると負けてしまう。だから反発が大きかったため見送りのようだ。

 その代わり、錬金ハイポーションは回復量が多いためにあまり作れなかったエクストラポーションの代わりとして売られてるらしい。俺も材料があれば作れるのにな……。

 その他も色々と作り上げて知名度をあげ、王族の血を引く人と結婚する事になったそうだ。歳は2つくらい年上っては別にいいんだけど、レーリックおじさんはいったい何人の子供がいるのだろうか? 国王をやめてからも最高権力者と言われてるのはこういう事してるからだと思う……。


 そして俺だ。

 ポーラ姉さんとグレンさんが旅立ってしまった為に森の奥の事をどうするかと言う事になった。その結果白羽の矢が立ったのは俺だ。一緒についていくだけはついて行ってたしね。実はこれ、俺に難しい役目を与える事で外に引っ張り出そうとする他の町から俺を守るためのもので実際には行かなくてもいいと言われていた。

 そんな俺だが、時間をかけて準備をして今では週に3、4日は森の中にいる。町から離れたくないと言ってたが、あの暴走で長い事町に帰れなかった状況に少しは慣れたためにこれくらいならなんとか外を出歩けるようになった。これ以上長くいると集中力が切れる為できないが……。

 武器も更新されてる。最初はゴブリンの魔石でデリンジャーしかなかったが、オークの魔石でライフルが作れるようになった。魔石を錬金するための熟練度稼ぎに時間がかかった訳だがこれでナイトの錬金魔石プラス8のライフルが出来上がった。

 どうやらこれプラス10が最大で、魔石を出した魔物を狙いどころが良ければ1発で仕留める事ができる威力になるというのがわかった。だからとりあえずオークとナイトのライフル2本常に持ち歩いてる。

 森の奥を移動してても今のところジェネラルには遭遇したことがない。遭遇したら逃げの一手だ。だってマジックランスより強力な魔法は覚えられていない。覚えたとしてもどれだけ魔力消費する魔法になるか怖い……。これをやってるおかげで街道に近い方にウォーリアーを超えるオークは出ていないのだ。そう信じたい。


 スライムの核もついにずっと感じてた用途がわかった。まさか5000個使って手のひらサイズのスライムのようなものを生み出すことになるとは思いもよらなかった。

 レーリックおじさんも巻き込んで調べてもらいようやくこれが錬金生物と呼ばれる生き物であることが判明した。そしてこのスライムのようなものはグミと言うらしい。目と口のようなものはあるが感覚器官というよりも見た目がそうなってるだけみたいだ。食べていいと言うとなんでも食べるので生ゴミはもちろん普通のゴミも食べさせてゴミ箱扱いになってる。それでもかまってやれば嬉しそうにするのでこれでいいのかなって思ってる。

 ポーラ姉さんとグレンさんの代わりに来た人たちにもそこそこ懐いてるので特に問題はないだろう。





 そして、第8勇者192年、闇の月、光の週、火の日。この日暴走や活性化がなぜこんな事態になったかの報告が国よりされた。

 この世界は勇者様の力を使い、聖剣が魔物の力を抑え込んでいる。ここ数年は勇者が高齢であることもあり力が衰えていた。それはつまりそのまま聖剣が魔物を抑える力を発揮できていなかったのだ。その為、暴走や活性化が頻発していたのだ。国がこの事実を隠していたのは、これまで尽くしてくれた勇者様に自分の都合だけを優先して極端な意見を出す者が出ると判断しそれはあんまりな事なので隠したと言うのだ。つまり、力が衰えた勇者など殺してしまって新しい勇者を召喚しろと言う人が出てくる。それを防ぐ為だったらしい。

 勇者様が死ぬたびにこんな事が起これば、その事実はどこかに残ると思うのだがそれがまったく残っていなかった。アレックさんにも聞いたが知らないようだった。さすがにここまで大ごとになれば少しくらいは残るはずなので、力が衰える前に勇者様が死んですぐに次が召喚されれば問題は起こらないのだろうと言っていた。


 そして最後に国は言った。すでに次の勇者召喚の準備は整っていると。今まで尽くしてくれた勇者様に感謝を捧げ、新たな勇者様を歓迎しようと。

国と教会の下で異世界からの誘拐事件を起こすことが宣言された。

今章から多少書き方が変わってます。

といっても会話間の改行がなくなったくらいですが……。

たぶんそれくらいの変化だと思いたい。

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