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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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76 無茶無謀

 ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! なんでだ! なんでこんな事になった! 全部あいつの、ユリトのせいだ!


 ガキの頃から気に入らなかった。みんな俺を無視してあいつばっかりチヤホヤしやがった。

 だから、町からさっさと出た。2度と帰るつもりなんてなかった。でも、実家が、ユリトがだいぶ儲けてる事を知った。これはいいと全部むしりとってやるつもりで、遊んでた1人であるマリーナを嫁として町に連れ帰った。

 家族に固執してたから家を追い出してもきっと実家に金を入れると思ってた。予想通りにいったと思ったが、マリーナのやつが商人がどうたらとか言って、ユリトに高い金払いやがった。

 気に入らなかった。それでも苦労してるみたいだからいい気味だと思った。まわりの人にそこそこ受け入れられやすいように振るまってそこそこ楽しくやってた。それが暴走が、なんて噂が立ち始めると俺のイライラは募って行った。どいつもこいつもユリトユリトユリト。むかつく。


 暴走が始まればあいつは寄生して森の中を動き回ってるし、俺達の邪魔までしやがった。そのうち俺達は森に入れないのにあいつは寄生してるくせに森に入っていきやがった。

 その行動が気に入らないやつらを集めて、森へ入った。あんだけ言ってたくせにナイトは1匹でしか行動してなかった。俺達は囲んで斬りまくって倒した。あいつは自分が狩りやすいようにウソの情報流してやがったんだ! これであいつも信用を失って無視されるようになるに決まってる。ざまあみやがれ。


 そう思ってたのになんなんだよこれ! オーク共が群れてやがる! 足の遅い奴、転んだ奴、矢が魔法が当たった奴、どんどん人が減っていく。逃げる先にナイトがいやがった。


「くそがーーーー!!! 死ね!!! クソユリト!!!!!!」


 俺の声が虚しく森に響いた。





「あれ? ここは?」


 俺が目を覚ますと近くにグレンさんがいた。なんで俺寝てたんだ……? あれ? 寝たのか? あ、あぁ!


「おはようございます。ユリト様」


「グレンさん! 何したの!? というか現状は!」


「さきほど遠距離による迎撃が始まったところです。ユリト様も参加なさいますか?」


「……、あぁもう! やるよ! やってやるよ!!」


 兄さん達の話を聞いて森へ行こうとした俺を止めるために気絶させたんだろう。ありがたいと思うけども、なぜ行かせてくれなかったとも思う。そのもやもやはもう魔法撃ちまくって晴らすしかない。マジックポーションの残量など気にした事か! そもそも魔力総量も今じゃかなりあるからね!


「では、付いてきてください。ご案内します」


 案内された先で見たのは、わらわらと森から湧いて出て来るオーク達だった。弓矢による攻撃で動きが鈍ってる。俺はデリンジャーを持ちながらアーチャーを中心に全力のマジックアローを撃つ。時々飛んでくる矢はデリンジャーで撃ち落とす。この命中精度みてるとやっぱりこれが俺の主力武装なんだと思う。オークの魔石でも使ってもっと強い武器がほしいよ!

 近づいてくると他の人達も魔法を使い始めたのでいったん下がり、瞑想して回復させる。残量は気にしないけど味は気になるんだよね……。

 それにしても森に入った兄さん達は……。やめよう。今は目の前の事に集中しないと……。


 ある程度回復して、マジックポーションも使った俺は防御の手伝いをすることになった。俺が居なくなったらアーチャーの攻撃でケガする人が出てきて、このまま怪我人が増えるのは……。ってことで矢の撃ち落とし作業中です。攻撃に関してはポーラ姉さんが範囲魔法をボコボコ撃ちこんでた。オーク達の数がどんどん減ってるのは分かるんだけど俺は怖くて仕方がなかった。

 ジェネラル2匹が近づいてくるのがわかる。ポーラ姉さんもいるから大丈夫だとは思っていてもそれでも怖い物は怖い。


「ユリト君。行くわよ」


「行くってどこに行くんですか?」


「ジェネラルがここまで近づいてきたんだもの。当然ジェネラルの所よ」


「ポーラ姉さんが行くのはわかるんですけど、なんで俺も?」


「またとないレベル上げのチャンスじゃない。大丈夫よ、私たちがいるんだもの。それにレーリックからの依頼でもあるの。ユリト君をできる限り強くしてやってくれってね。ほら大丈夫大丈夫」


「ひ、ひっぱらないでください! 行きます! 行きますから!」


 どうやら俺に拒否する権利はないらしい……。怖いけどそれで震えてたら邪魔になるからせめて邪魔にならないように大人しくついていこう。そもそも置いていってくれたらいいのにとか思ったらダメだ。この調子だと下手すればキング戦にまで連れていかれそうだし、それならここで少しは慣れておかないとね! 泣きそうだよ!!

 そうこう言ってるうちにいつの間にか合流したグレンさんも一緒になっていて、ジェネラルが見える範囲まで来た。ジェネラルは3mほどの大きさで見ただけでその強さが伝わってくるようだった。だけど速度が緩まない。なんで!? って声を出したかったけど気が付かれるようなことはしたくなかったので黙ったままついていくと、ポーラ姉さんがくるりと1回転してそのままジェネラルを追い越した。

 今度こそ、なんで追い越してもう1匹に近づくの!? 挟み撃ちだよ! って叫びたかったがそれもなんとかギリギリ飲み込んだ。その後で追いぬいた理由をわかった。ジェネラルの体が斜めに切れて落ちたのだ。意味がわからない。おそらくさっきポーラ姉さんが1回転した時になにかしたんだろうけど、それでも1発って……。これが同じ人間の強さだとは思えなかった。

 でも、これなら俺を連れて来た理由もわかる。ポーラ姉さんにとってはジェネラルもさほど強い相手じゃないんだろう。だったら俺を連れて来る事もできるだろう。そしてポーラ姉さんは止まった。


「せっかくの機会だからユリト君。戦ってみるといいわ」


「……俺に死ねと!?」


「その前に助けてあげるから、ほらいってらっしゃい!」


 そう言われて俺は、ジェネラルの前に投げられた。 マジですか!? ジェネラルは俺に剣を振り下ろそうとしていた。無茶言うな! と思いつつ全力で前に出てマジックナックルで殴る! 前に出る以外の選択だとどれも危険察知でやばそうだったんだよ! 

 予想通り振り下ろされた所から土がはじけ飛び横に飛んでたら大けがしてたよ。実際アーチャーとか倒れてたり飛んできた土で埋まってたりするし! 前に出たのはいいけどマジックナックルはまったく効果がなかったようだ。触られたことが気に入らなかったようで俺を払おうとするけど、剣は叩きつけたからすぐに動かせない。その隙に逃げようとしたら手を放して殴り掛かってきたよ。必死になって避ける。俺を潰そうとする拳を必死で避ける避ける。

 イライラしたのか攻撃は単調になったけど、早くなって本当にまずい。よく生きてると自分で自分を褒めてあげたい。ついにイライラが限界に達したのか吠えた。声のせいで体が硬直してこのままだと殴られて死んでしまう。ただ1つまともに動かせる思考を使って吠えてる口の中にむかってマジックランスをぶち込んだ。

 口の中に撃ちこんだのに、ひるむ位の効果しかなかった。本当にお強いですねー。体の硬直が解けて避けられる状態にはなったけどそれだけで対抗手段など俺には何もなかった。


「十分十分。よくがんばったわね」


 俺が死に物狂いで逃げてた相手はまたもポーラ姉さんの1発で切られ終わった。俺の努力はいったいなんだったんでしょうか?


「あれ使うのにある程度タメが必要だから時間稼いでもらって助かったわよ。ダメだった場合はグレンが助けてくれたから大丈夫だったわよ」


「し、死ぬかと思いました」


「ここで気を抜くと死ぬわよ。ほら混乱して逃げ出すから」


 言われてそちらを見れば、統率を失ったオークの群れが散り散りに動いてた。ってこっちにも来るし! マジックアローで迎撃するも数が多くてこれはまずい。


「ユリト君は適当に魔法撃ってなさい。私も適当に間引くから、グレンは近くに来たのをお願いね」


「わかった」


「この状態じゃ逃げられないですから頼りにしてます……」


 しばらくこの状態が続き、途中からほとんど2人に任せて魔力回復に努めてた。数が数だったので無理でした。一応矢の迎撃だけやってたけど、グレンさんはそれだけでもだいぶ助かると言ってくれた。しかしこれ……陣の方は大丈夫なんだろうか? そんな事を気にしながら俺は引き金を引くのだった。



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