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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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75 迫る軍勢

 森の中を飛び回っていた俺とグレンさんだったが、俺の危機察知が反応をした。でもこれ矢とか魔法が飛んで来たとかそういう反応じゃない。


「グレンさん! 止まって!」


「どうなさいましたか?」


「わからないから今から探る」


 森の奥から感じる嫌なものを探る。まわりの気配に集中する。近くにいないことはわかってるし何かあってもグレンさんがいる。俺はただ深く深く集中する。遠くに反応がある。それがどんどん増えていく。これって……。


「グレンさん。もう少し奥に行きたい。数えられないくらいの数がこっちに来てるからちゃんと確かめたい」


「全容を把握しようとしないでください。もっとも重要なのはこの情報を持ち帰る事なのですから」


「わかってるよ。あんなの個人でなんとかできる訳が……。ポーラ姉さんならできるのかな?」


「森の事を一切考えなければなんとかなるのではないでしょうか? 数がわかりませんのではっきりはしませんが」


 できるんだ……。グレンさんは現状がわからないとはいえ、それだけポーラ姉さんの魔法が協力なんだろうな……。津波で一気に押し流す魔法とか使えるって言ってた気がする。


「最悪それでもポーラ姉さんに頼るしかないのかな……。本当にポーラ姉さんがいなかったらすでにみんな心折れてたと思うよ」


「その場合は別のSランクや騎士が動くでしょうからなんとでもなりますよ」


「動くまでの被害だけで俺は心折れそうだよ……。行こうか」


「お供いたします」


 森の奥を目指して木から木へと飛び移る。途中にいたのはアーチャーは俺が無力化、メイジはグレンさんが1撃で仕留めて、ナイトは放置して移動した。完全に無視する事も出来たが、後ろから攻撃されたらたまったもんじゃない。ナイトだけなら逃げるのも余裕があるからこその決断だった。

 だけど、けっきょく姿を確認するまでもなく引き返すことにした。理由は2つある。


「ユリト様、これ以上進むのはやめましょう。これはまずいです」


「グレンさん、これがジェネラルってやつなの? ナイトなんかよりよっぽど強いし、2匹はいるよね?」


「私はそこまではわかりませんが、この感覚はまずいと感じております。しかもジェネラル2匹ということはキングが更に後方にいる可能性が高いですね」


「これに勝てるSランクパーティの力がどれだけすごいのか、半分くらいは理解できたと思いたい」


「実際その目で見る事になるでしょうから楽しみにしていてください」


「できればそんな戦い見るような人生歩きたくなかった」


「人生ままならないものです。さぁ戻りましょう」


 こうして俺達は急ぎ戻って行った。急いでいた為に気配察知の反応がにぶっているのに気が付かず、途中で見つけた1組だけに声をかけて陣に辿り着いた。





 陣に戻るとなぜかジルベルトさんと父さんがいた。好都合と言えば好都合だけどなにがあったんだろ。


「父さん、ジルベルトさんただいま。報告したいことがあるんだけど」


「ユリト。ロミットのやつを見かけなかったか?」


「兄さん? 俺は森から帰って来たんだから会うはずないでしょ?」


 今、森に入れるメンバーは決まってる。その中に兄さんはいなかったはずだ。それなのになんて……。もしかして……。


「森に入ったの?」


「ロミットを含めた何人かがいなくなってる。逃げたんじゃなきゃ森だろうな」


 父さんの言葉に言葉が出ない。なんでそんな無茶を……、それに今の状況はまずい。


「冒険者でも似たようなのが出てきてる。まぁそういうのに限って素行が悪かったりするから、連れて来たってところがあるみたいだけどな」


「ジルベルトさんそれって……。あぁもうこんな状態の時に!」


「そういえば報告があるって言ってたけど、ユリト君何かあったのか?」


「かなりの数が森の中を移動してる最中です。それとおそらくジェネラルが2匹はいそうです。それ以上いる可能性もあります」


 ジルベルトさんと父さんの顔が強張った。それはそうだろう。普通なら絶望するところだ。ポーラ姉さんがいるからなんとかなるけど……。


「ジルベルトさんと父さんはみんなに伝えてきてください。グレンさんはポーラ姉さんに連絡お願いします。俺は森の中に人がいないか、もう1度探して来ます」


「ユリト様、今から森に入るのは危険なのでおやめください。それに力ある者たちなら逃げられるはずです。ユリト様が危険に身を晒す必要はございません」


「でも! 兄さんが死んだらマリーナ義姉さんとかどうするんだよ! もうすぐ赤ちゃんだって生まれるんだよ!」


「ユリト様……。失礼します」


 その言葉の後俺は気を失った。





 気絶させたユリト様を抱き留めます。このような手段を選びたくはなかったのですが今回は仕方がありません。ポーラに後で何を言われるか恐ろしくもありますが、危険に晒すよりはきっと小言が少なくてすむはずです。


「あ、あのユリトは?」


「ご安心ください。ほんの少しの間眠ってもらうだけです。ジェネラルとの戦いのときにはついて来ていただかねばなりませんし」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! ユリトを連れて行く気か! どうしてそんな危険なマネをするんだ!」


 お父上は慌ててらっしゃいますね。無理もない事です。私としてもユリト様が命を落とすような可能性のある場所にお連れするのは心苦しいのです。


「我々の雇い主の意向です。それにポーラ自身もユリト様の事を気に入っておりますので、強く出来る時にできるだけ育てておきたいと考えているのです」


「いやでもな……」


「今は時間が惜しいです。各所への報告よろしくお願いいたします」


 私はユリト様を連れてその場を離れました。私たちがあの場にいつまでも居続けるのはまずいです。こうでもして無理やり動いていただくしかないと判断したのです。私はポーラの下へと行きます。登録した人物がどっちの方向にいるのか。 それがわかる魔道具は本当に便利です。ポーラの下に着きましたが、その表情からは怒りが伝わってきます。覚悟していたとはいえやはり怖いものです。


「なにがあったの?」


「森の奥からかなりの数が来る。ジェネラルもいるみたいだ。その状況下でユリト様の兄を含むバカ共が森に入ったらしい。それを見つけに行こうとしたので気絶させた」


 私がこの話し方をするのも今ではポーラくらいのものです。この話を聞いてポーラの雰囲気が若干柔らかくなりました。


「仕方がない子ね。優しいというよりもお人好しね……。あんなクズでさえ助けに行こうとするなんて」


「どちらかと言えば、妻と子供のためって方が大きな理由みたいだったがな」


「それでもよ。一応と思って情報集めてみたけど守る価値なんかないわ。むしろ、生きてる方が害になるわ」


「ユリト様が目を覚ましてる間には言わないでくれよ」


「言う訳ないでしょ? それじゃ準備しましょうか。基本は森から出てきたのを遠距離からの攻撃。それでダメなら私も手伝って、いよいよってなったら全力ね」


「なるべく被害がでないように頼むぞ」


「冒険者なんて被害が出るのが当たり前でしょ? 後方支援に来てる人間には絶対に被害出させないけどね」


「それでもだ。それがユリト様の望みだからな」


「そう言われると弱いわね。当初の予定であったユリト君のレベル上げは予想以上にうまくいってるし、多少はいいかしらね。メインディッシュはまだ残ってるみたいだしね」


「やはりジェネラルの時は連れて行くのか?」


 ユリト様は十分に強くなられた。冒険者として上を目指さないのなら十分だと思うのだが……。


「当然でしょ? 上げられるだけ上げておくわよ。それでなくても、色々引き込む性質があるみたいだしやれることはやってあげないとね」


「そういうものか」


「そういうものよ。ほら、ちゃっちゃと準備しちゃうわよ」


「あぁ」


 ポーラが決めた事なら私はただ全力で助けるだけです。ユリト様がどのような反応をされるかわかりませんが、全力をつくしましょう。

 ユリト様が目を覚ましたのは、森から魔物達が出てきて、こちらから攻撃を開始した頃でした。もう少し早く目を覚ましていただけたら都合が良かったのですが……。己の未熟を嘆くばかりです。それではユリト様、戦場へ参りましょうか。

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