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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
74/86

73 戦闘継続中

 俺達は2人で木から木へと飛び、森の中を飛び回っていた。オークを倒すのも大事な仕事だが、功を焦って突出した冒険者に釘を刺しに行ったり、オークに誘い込まれ他のグループから意図せず離れてしまった警備隊の人達への注意と戻る方向の指示などをしている。

 当初これは俺1人でやる仕事だった。理由は簡単で誰もついて来れないと思われていたのだ。バカにするなと何人かのシーフ技能持ちが言うのでゴブリンの森で実際に移動速度や隠密性を見せたところみんな黙ってしまった。そんな中で冒険者以外で俺に同行できる人がいたのだ。家でがっちり仕事をしてくれていたグレンさんだ。


 隠密性という意味ではグレンさんはあまり向かない。だけど圧倒的な身体能力があるためある程度静かに行動でき、しかもナイト相手でも問題なく倒すことが出来る。グレンさんは本来参加する予定はなかったが、俺が単独での遊撃という立場になったために俺の護衛としてついてくれてる。本当にありがたい限りだ。

 グレンさんが居てくれるおかげで、冒険者も俺の指示に従ってくれる。後ろでグレンさんが睨みを効かせてるから当然だ。


 ポーラ姉さんは予定通り後方で動いてくれてる。水魔法による回復でがんがん治してる。このおかげでポーションの消費が抑えられて、俺にポーション作ってくれとギルドから言ってこない。

 母さんたちも必死で毎日ポーションを作ってくれてるのだ。新人達も薬草採取をがんばってくれてるおかげでやっていけてる。自分用のマジックポーションの在庫はまだまだあるからなんとかなってるけど、まだまだ長引くようなら採取しにいかないといけないかもしれない。


 順調に進んでるように見えるけどやっぱり死んでしまう人、戦闘がもうできない体になってしまった人も出ている。数が多くないとはいえCランクパーティでも危険なナイトがいる。死角からアーチャーによる矢が飛んで来たり、メイジの魔法が飛んできたりもする。疲れたところをオークやウォーリアーが束になって襲い掛かってくる時もある。

 なんとかその被害を抑える為に、グレンさんと一緒に上位種を狩るが俺達だけでは手が回らない。


 ナイトとまともにやりあってるのは、暴走の時はパーティを組んでるマティスさん達3人にジルベルトさんを加えたパーティくらいだ。マティスさんのパーティでもナイトと戦えるのだが、後が続かない。そこでジルベルトさんが入る事で余裕をもたせているのだ。臨時とはいえかなりパーティとして優秀に機能してるってジルベルトさんが言ってた。

 他の町からも応援が来てるので他にもナイトと戦える力をもったパーティが合流してるかもしれない。そうであれば嬉しい。

 それでなくても、森の中の戦線が中々奥に進まない。主力がオークからウォーリアーに移行しつつあり、対処できるパーティが減ってきてる。しかも何が怖いって、ナイトの遭遇するのが減ってない事だ。毎日小出しにしてると感じられた。森の奥にどれだけの戦力を隠してたのかとギルドの人達とも話してる。



 そして、協力していかないといけないのに、それができない人間に当たってしまう事もある。それが今の状況だ。


「ユリト! 邪魔するんじゃねえよ!!!」


「兄さん、ナイト相手なんて危険だって。それに突出してる。このままじゃ危ないから後退して」


「お前の指図は受けない! それにナイトと戦ってるのだってあっちのじじいじゃないか! 暴走が起こってるこの状況を利用して寄生か? いいご身分だな!」


 最近、評判がだだ下がりの兄さんだ。まわりの警備隊の人も俺の事を睨んでる。何を思って睨んでいるのかさっぱりわからないけど、今の状況が危険なのは確かなのだ。

 グレンさんは今、ナイトと戦ってる最中だ。グレンさんが負ける事は考えられないけど状況が悪い。兄さんたちは気が付いてないだろうけど3匹ほどこちらに近づいて来てるのだ。しかも、ナイト、メイジ、アーチャーという組み合わせだ。


「とにかく後退して! 上位種3匹があっちから来てる。早く対処しないといけないんだよ」


俺は来る方向を指さして言ったが、やはり俺の態度が気に入らなかったらしい。そもそも俺の存在自体が気に入らないようにも見えるけどね。……どうしてここまで嫌われたのかな? 自分の命がかかってる状態なのに……。


「Eランクのくせに生意気言うな! 何が対処だ! 俺達が倒してやるさ! 行くぞ!」


「「「「おう!」」」」


「ちょっと兄さん! 他の人も待って危険だって!!」


 兄さん達は俺が指さした方向に向かって進んでいった。その行動にため息ができそうになったが、それを抑えてデリンジャーを引き抜き撃ち、ナイトの意識を少しだけこちらに向けさせる。その隙にグレンさんが一気に決める。俺はマジックポーションを飲んで魔力を回復させる。


「グレンさん。アーチャーとメイジは俺が無力化するから前衛お願いしていい?」


「それが私の役目ですので大いに頼ってくださいませ。不意打ちの不意打ちが前衛なのかとも思いますが……。それにしてもなんの疑いもなく指さした方に進んでいきましたな」


「指さした方向がまっすぐ行けば陣を敷いてある方向だって気が付かないとはね……。それじゃお願いします」


「任されました」


 その言葉を聞き俺は指さした方向とはまったく違う方向に移動する。兄さん達は頭に血が上ってるのもあっただろうけど、自分たちの位置すらしっかり把握できてなかったのだろうか? 今度会ったらすっごい文句言われそうだけど、死なれるよりはマシだと思う。生まれて来る赤ちゃんに父親がいないってのは可哀そうだからね。嫌いだとは言え、もう少しなんとかお互い歩み寄れたらなと思う。


 回り込んだ俺は木の上からデリンジャーでアーチャーが持っていた弓の弦を切る。この程度のはすでになんの問題もなくできるようになった。

 そして木を蹴りメイジにマジックナックルで突っ込む! メイジだけあって魔法抵抗が強いのだがマジックナックルだとどういう仕組かわからないけど普通に通るのだ。でもマジックナックルで殴る程度じゃ倒すほどのダメージを与えるのは厳しい。だから一気に加速して思いっきりぶつかるのだ。近接戦闘ができない俺ができる最大の物理攻撃だ。これでメイジを無力化した。

 まだ死んでないけど、攻撃できるくらい回復するまでにはだいぶ時間がかかる。その時間があれば余裕で俺達ならアーチャーもナイトも倒せるのだ。突然の事態に慌てるのはナイトもアーチャーもただのオークもたいしてかわらない。この隙に全力のマジックアローを顔面に入れて、アーチャーも無力化できた。ナイトは俺を完全に敵と認識して攻撃しようと構えるけど、


「隙だらけでございますよ」


 グレンさんの剣の一線で勝敗は決した。ただ攻撃をふるうだけでいい状況なら1撃で倒すこともできるのがグレンさんの実力だ。恐ろしい。


「とどめお願いします」


「はい」


 抵抗もできずにアーチャーもメイジも倒した。これでまたレベルが上がるかな? それにしても3匹か……。


「グレンさんどう思いますか?」


「戦力の小出しができないほど消耗したと考えられるかもしれませんが、戦いに勝てるパーティを組んでくるようになってきたのかもしれません」


「さっきの組み合わせで、現状戦って無事に帰ってこれるパーティっていたっけ……」


「ジルベルト殿の所はギリギリなんとかなりそうですが、もう少し戦力の補強がほしいところですね。それ以外は……森の外で出てこない見張りと、出てきた時は数頼りの遠距離のみで仕留めるしかないかと」


 俺のつぶやきもきっちり拾って答えてくれるグレンさん。ありがたいけど、情報自体はまったくありがたくない内容だ。


「そろそろポーラ姉さんにも出てもらわないといけないかな……」


「現状ではまだ出ないと思われます。まだ戦う方法は残されておりますから」


「森の外でみんなでって事? それはそれでみんなが我慢できそうにないし、一気に襲われたら大変な事になるけど……」


「一気に襲われた場合はポーラが対応するでしょう。しかし、そうなると3日に1度は家に帰っていた私達も帰れなくなりそうですね」


「帰れる距離だからなんとかできてるけど、俺けっこうきついんですよね……」


「ユリト様はお帰りになって休まれてもいいのですよ」


「この状況で帰ったら、応援に来てる人達に何言われるかわからないからやめておきます。積極的に出れば出るだけ今度は兄さん達みたいな言い分の人が出て来るんですけどね……」


「前のように実力を見せる機会を作っている場合でもありませんし、その辺りはポーラにまかせておきましょう」


「ポーラ姉さん様様だよ……。それじゃいったん戻って報告しましょうか。タブスさんとか隊長さんに対策練ってもらわなきゃいけないもんね」


「そうでございますね」


 俺達が初めてナイトと遭遇してからすでに1か月半が経過していた。早ければ王都の冒険者が到着するかもしれない時期ではあるけど、ついたら終わってたなんて事もありうるので距離のある王都から応援が来てくれるか微妙な所だ。

 しかもできればBランク以上ともなれば尚更動いてくれるかどうか……。レーリックおじさんにも連絡したってポーラ姉さんもグレンさんも言ってたからそこに期待するしかないかもしれない。

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