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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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72 始まりを告げた者

 その日は町に着けなかった。まぁ当然といえば当然だけどね。いつもの時間に帰ってこないからとポーラ姉さんが様子を見に来てくれた。おかげで次の日は馬車を引っ張るのを手伝ってもらえて楽だった。しかもナイト倒したのもあってか久しぶりにレベルもあがった。


 馬車をひっぱったお礼に魔道具をもらった。とはいえこれ、売れなくて困ってた在庫なのでお礼にならないと丸い人……。マルイさんに言われたんだけど、これから馬をまた買ったりしてお金は必要になるだろうし、お金をもらってもすでに十分あるためお金が増えても使い道が無くて困ると言って魔道具でいいことにした。

 ポーラ姉さんなんかは、欲がないわね。なんて言ってたけど錬金術持ちの魔力増やす魔道具なので俺にとっては最高な品物だった。ちゃんと干渉しないやつだったしね! ちなみに足首につけるタイプのアクセサリーだった。


 そしてここからが本番の冒険者ギルドである。ポーラ姉さんは先に帰ってもらった。グレンさんも心配してるだろうからね。


「ここも久しぶりだな……。何年振りか……」


「この町の出身だって言ってましたもんね。俺の証言だけでも十分信じてもらえるとは思ってますけど、やっぱり複数の情報源があった方がいいと思いますから、皆さんもよろしくお願いしますね」


「あぁ、わかってる」


 4人の冒険者は依頼の達成報告も含めて、俺とジルベルトさんは報告がメインだ。いつも通りエレナさんの所に行く。


「こんにちは、エレナさん。……どうかしました?」


「え、えぇこんにちは。そっちにいるのはジル?」


「そう言えばエレナは冒険者ギルドに就職したっけな。久しぶりだな」


「あれ? 知り合いですか?」


 確かに見た目にたような年齢に見えるし、冒険者と受付嬢なら接点はできやすい。でも、エレナさんが素に違い状態で名前呼ぶ人なんて見た事ないぞ。


「エレナとは幼馴染なんだ。まさかまだ受付にいるとは……。既婚者は受付できないんじゃなかったのか?」


「どうせまだ未婚ですよ。行き遅れですよ。そういうジルこそどうしたのよ。1人なの?」


「あいつらが死んでもう大分たつよ。パーティも抜けて来たからこっちに戻って来たんだよ。うちの両親の事は知ってるか?」


「そう、冒険者だもんね……。おじさんとおばさんは、まだ元気でやってるから後で顔見せてきなさいよ。それで今日はどうしたの?」


 ジルベルトさんが答えようとしたけど、別の受付嬢がかなり慌ててエレナさんに話しかけた。この別の受付嬢はさっきの4人の報告を聞いてたはずだ。でもなんでまた真っ先にエレナさんの所に来るのやら。そんな事を考えてたら、真剣な顔でエレナさんが問いかけてきた。


「ジル、ユリト君。向こうの4人の報告は確かなの?」


「あぁ、確かだ。今日はその報告に来た」


「とりあえずこの魔石渡しておきますね。後で武器や防具を出します」


 俺はナイトの魔石だけ渡した。ここで全部出して周りに無秩序に情報を流すのはまずいからだ。まとめた情報をギルドがしっかり発表しないで変な情報が飛び交ったらたまったものじゃない。とはいえナイトが街道に出てきたってだけで、まずいってポーラ姉さんが言ってたっけ……。


「案内します。ついてきてください。ムーラは向こうの4人を別室へ。よろしくね」


「俺達は一緒でいいのか?」


「ユリト君はこのギルドでも重要な冒険者なの。どっちかと言えばジルの方がおまけよ」


「俺はこれでもBランクなんだがな」


「それだけの実績があるのよ。ランクを無視した実績がね」


 ジルベルトさんは納得してたけど、絶対に間違って納得してる。ジルベルトさんは俺がナイトを1撃で吹き飛ばしたのを見てるから、実力の事を指してると思っているだろう。.

 でもエレナさんのいう実績は、情報収集やらポーション関係だ。誤解されてめんどうが起こるといやだから後で言っておかないとダメかな。そんな事を考えながらついていき、部屋に通された。


「それじゃユリト君。物を出してもらっていい?」


「わかりました」


 俺は武器と防具を出して、アーチャーと他のオークの魔石も出しておく。ちなみにこの魔石は俺とジルベルトさんとでもらった。助けてもらわなかったら死んでたし、まだお金に余裕はあるから大丈夫だと言ってた。


「……上位種が出たって言ってたけど、何が出たの?」


「ナイトとアーチャーだ。ウォーリアーじゃないからな」


「それが街道に出たの……?」


 ジルベルトさんが頷くと、エレナさんが頭を抱えた。それはそうだろう。

 ポーラ姉さんの話ではオーク、ウォーリアー、アーチャー、メイジ、ナイト、ジェネラル、キングと上がっていくらしい。ナイトが出てきた時点で、それより下の存在がいる可能性が高い。そして確実にジェネラル以上が今回の暴走に関わっているのだ。

 ポーラ姉さんは、キングが出るだろうから楽しみにしててね。なんて言ってたが人の生き死にがかかってるのに楽しみもなにもないんだけどな……。そんな思いが表情から伝わったのか軽率だったと謝ってくれた。長い事冒険者をやってて、歳もそれなりにとってると自分の都合だけで考える事が増えるのだそうだ。それを押し通す強さもあるからなおさらだと思った。


「なんで今まで気が付かないのよ……。それならウォーリアーの1匹だって見つかっててもいいじゃない……」


「なんかすみません……。でも、ナイトが出た事よりそっちで頭抱えたんですか?」


「そうよ。いえ、ナイトが出て来るってのは予想されてし、それ以上も予想はしてたんだけど、まさかいきなり街道にそのレベルのオークなんて考えてなかったのよ」


「ポーラさんが言うにはキングが出るって言ってたぞ」


 ジルベルトさんの言葉を聞いて、エレナさんは眉をひそめた。それはそうだろう。キングなんか出てきたら普通なら王都から応援を呼ばなければならない。


「……元Sランクの人の言う事だし、ちゃんと伝えておくわ」


「よろしく頼む。でも規模が大きくなりそうで、普通なら尋常じゃない被害が出そうな状況で下手すれば騎士団案件だ。その状況で元とはいえSランクがこの町にいるとは幸運だったな」


「幸運は幸運だけど、すべてユリト君が引き寄せたものよ。とはいえ、基本は後方支援してて手に余るのが見つかったら手を出すって釘をさされてるわ」


「積極的に参加はしてくれないと?」


「いつまでも老人に頼るなですって、しかも今は冒険者資格返納してるから、こっちとしても強く言えなくてね。長生きしそうなんだからもっと積極的に行動してくれると嬉しいんだけどね」


 ポーラ姉さんの言い分は若者の成長機会を奪うわけにはいかない。エレナさんは危険は早く排除したい。俺としてはエレナさんの意見に賛成したいけど、なにを言っても無駄なので自分たちができることをやっていくしかない。


「愚痴ってもしかたがないわね。情報提供ありがとうございます。後日清算しますのでよろしくお願いします。それでジルはこれからどうするの?」


「あの場所なら陣の設営があるだろ? その準備が終わるまではユリトの家で世話になる事になった。多少なまってるからそれを叩き直してもらわないといけないしな」


「ジルのBランクが今のところ1番高いランクになるから腑抜けた戦いされたら困るものね。ユリト君よろしくお願いね」


「鍛えなおすのはポーラ姉さんがやってくれると思いますけどお願いされました」


 この後、ガリックスさんが来て詳しい話を聞いてきたので、ジルベルトさんから戦闘の開始から終わりまでの説明があり、そこに俺が途中から補足をいれていった。俺がナイトを倒した話を聞いて驚いてたが、魔力を6割以上もっていかれてギリギリだったのだからなんとか倒せる程度だ。それでも俺も強くなったもんだよね。レベル上がったしほんの少しは楽になったらいいな。


 そして、冒険者ギルドや警備隊、領主から情報が出されて本格的な暴走への対応に追われる事になった。

 今までの備蓄があるため、俺は森での討伐班だ。しかも遊撃として1人で飛び回る事になるらしい。さてさてどうなることやらね。


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