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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
71/86

70 作ってみた

 帰って来た日はマジックポーションを作ることはできなかった。魔力を使いすぎてポーション作るのに精いっぱいだった為だ。

 この後の日程では戦闘訓練とかもしてくれるらしい。あと何回倒れたらいいのでしょうか? 何日も寝込むことがないことを祈りたい。


 次の日早速マジックポーションを作る事にした。今日は引きこもって錬金術使って色々と作るのだ。

 マジックポーションを普通に作ると非常にめんどくさい。材料は魔力水と魔力草だけなのでポーション作りと同じだ。だけど薬草の場合は細かくちぎってすり潰して、最後に魔力水と合わせて作るのに対して、魔力草は魔力抜けを防ぐ為にちぎってすり潰してという作業を魔力水の中で行わないといけない。

 しかも、魔力水に溶け込んだ魔力草の魔力が空気中に抜けてしまうため手早く製品に出来る状態に持っていき、瓶詰めしなければならないので普通の店ではやるのが大変なのだ。

 専用の設備もあるにはあるけど赤字垂れ流しになる可能性が高いので、採算がしっかりとれる場所じゃないと作るのは厳しいのだ。


 錬金術だとどうなるのか? 実は試したことがない。実物が手に入って作ろうとした事はあるのだ。でも、魔力がだいぶ抜けていて、量も少なかったために錬金術が反応してくれなかったのだ。

 製作難易度はポーションと同じか少し上くらいだと思う。作れるのがわかってて、素材のせいで作れないというのは非常に歯がゆい思いをしたものだ。


 今回は質はもっともいいものだと思う。これを使うとマジックポーション1本作るのにどれくらい数が必要なのか……。調剤で作ると品質がバラバラで人によっては2本、3本って使って効果をあげるからちょっと心配ではある。

 とりあえず桶を用意して魔力水でいっぱいにする。そして、クロノバックから取り出した魔力草をとりあえず1本入れておく。……、うん。これ1本で作れそうだね。


「錬金開始」


 特に問題なくマジックポーションが1本できた。容器の形はポーションと同じだ。間違えないようにしないといけない。液の色が違うから大丈夫だとは思うけれどね。それでできたのは喜ばしいのだけど、それ以上に驚いたことがあった。それは魔力草がまだ半分ほど残っているのだ。


「どういうこと?」


 とりあえず放っておくわけにもいかないので、もう1本作ってから考える。まさか魔力草1本からマジックポーション2本作れるとは思ってもいなかった。

 でも理由なんて1つしか思いつかないよね……。おそらくは魔力草が持ってる魔力が必要な材料で、今回はそれが魔力草半分でまかなえたって事になると思う。今回は半分だったけど、ちょっとだけ残ったりすることもあるんだよね……。とりあえずクロノバックがあるからいいか。後はこのマジックポーションの効果とかそういった物を調べてもらわないといけないよね。アレックさんに相談しよう。

 こうしてこの日は、色々作って寝た。こういう日を使って備蓄していかないと、ポーラ姉さんの指導でポーションの納品しそこねそうなんだよね。もちろん暴走の時に少しでも多くの人を救えるようにするのが1番ですけどね。





 ポーラ姉さんの戦闘訓練はあっけなく終了した。だってなにやってもダメなんだもの……。さすがに戦闘方面の才能のなさにはびっくりしてたようだ。やっぱり暗殺スタイルしかないね! 

 その代り攻撃回避をひたすらするだけの訓練はやることになった。何があっても死なないようにするためらしい。かなり大変です。


 アレックさんの所へ行ったのは、年が明けて、第8勇者188年、無の月、闇の週、無の日になってからだった。


「こんにちはアレックさん。お願いがあってきたんですけど」


「こんにちはユリト君。いったいどうしたのかな?」


「マジックポーション作ったんで効果とか保存期間の検証お願いしたいんですけど」


 俺はそう言って、アレックさんに検証に使うためのマジックポーションを10本ほど渡したのだが受け取ってもらえなかった。


「もらわなくても大丈夫だよ。少し待っててね」


 そうしてアレックさんが出て行ってしまった。やることもないので瞑想しながらのんびりと待つ。しばらくすると戻ってきたアレックさんの手には何枚かの手紙が握られていた。


「待たせたね。これを読んでもらえるかな」


 アレックさんが苦笑いしながら手紙を見せてくれた。渡された手紙を見て俺は頭を抱えたくなった。手紙を書いたのはレーリックおじさんみたいだけど内容が王宮に備蓄されてるポーションの検証結果をまとめたものだった。レーリックおじさんが1番情報漏えいしてる気がするよ……。


「これがあればポーションの検証しなくてもいいですね。もしかしてアレックさんもこれ知ってました?」


 俺の手の中にある手紙を見せながらアレックさんに聞くと首を振った。


「ポーションがあるのは知っていたよ。ただそれが本当に使えるものかどうかは知らなかったし、ユリト君の物と同じかもわからなかったから検証は必要だったよ。ポーションプラスに至っては王宮にもないものだから尚更ね。ポーションしか比較できるものがないけど、今ユリト君が作るポーションと王宮にあるポーションが同じ性能のものだってわかったのは収穫だったかな」


「つまり、マジックポーションも限界まで作りこめばそこに書いてある通りの効果を発揮しそうってことですよね。ポーション同様効果の落ちないマジックポーション。しかも、どんどん効果が落ちる初期の状態で維持されるから世に出てるものとは比べ物にならないくらいの回復量を……。これどうするんですか……」


「しばらくは完全に自分用にするべきかな。後は、こっそり教会に売ってもらいたいかな。暴走が起これば治癒院の人間がかり出されるだろうからね。魔力切れなのに無茶をいう人間もいてね……。その為に用意できるならしてもらいたい。どうかな?」


「正直手が足りないですよ……。ポーラ姉さんは俺が死なないように鍛えようとしてますし、オークの様子見もあってポーション作ってて、さらに追加となると……。俺働き過ぎじゃないですか?」


「こういう事はどこまでやれば終わりというものじゃないからね。それにここまで来てしまえばオークの様子見に関してはもう別の冒険者にまかせてもいいと思うけれどね。その辺りはギルドの人間と話してみる必要があるかな?」


 確かに、どれだけ用意しても足りない時は足りないし、もしかしたら今の量でも余るかもしれない。起こるだろうって認識になってるなら俺が積極的に動く必要もないのかもしれない。

 そう考えるとなんかやらなきゃいけない事が減った気になる。オークに関してはちゃんとガリックスさんと話しておくべきかな? そうすれば別にことにも時間を使えるしね。


「確かにそうですよね……。ガリックスさんとも話をしてみます」


「それがいい。これは町が背負うべき事だからユリト君1人でやる必要はどこにもないからね。そんな訳だからマジックポーション期待してるよ」


「最後のそれで台無しですよ」


 笑顔で要望を言い仕事を増やそうとするアレックさん。備えておきたいのはわかるけど、もう少しタイミングと言い方があるんじゃないのかなぁと思った。

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