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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第1章、薬屋さんの息子は錬金術師
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7 報告とランチ

 そんな訳でギルド前に到着しました。

 帰り道はこれといって何もおきず、野ウサギも出てこなかった。遅めのお昼は野ウサギで決まりだ。

 でも、スライムは2匹見つけたので核はおいしく頂戴いたしました。


 中に入ると、登録に来た時よりは人がいる。お酒はおいてないけど飲み物の提供はある。そこで情報交換とか話とかしてるみたいだ。

 エレナさんはこっちに向かって手招きしてる。父さんと来てた時もなんだかんだで、エレナさんが担当してくれてた。 

 うん、担当してくれてたんだよ。ナンパ男をどかせるためだったり、ナンパ除けに呼び寄せていたんじゃないと信じたい。


「ユリト君おつかれさま。成果はどうだった?」


「依頼は問題なくできてるはずです。薬草の確認お願いします」


 薬草10束入った袋を取り出しエレナさんに渡す。さっと確認して


「問題なさそうね。カードもくれる? 処理しちゃうから」


「カードはいいけど確認が適当過ぎません?」


「薬草くらいパッと見れなきゃ受付嬢なんて勤まらないよ。それに薬屋さんの息子が薬の事で手を抜くはずないでしょ?」


「それはそうですけどね」


 薬は命を左右する事が多いのだ。品質が悪いなら悪いなりの薬を作る必要もあるけれど、いいものが作れるならばそれにこしたことはない。


「はい、処理が終わったからカード返すわね。それで、銀貨1枚と新人支援の銀貨1枚の計2枚が今回の報酬ね。確認して」


 通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨と変わっていって、10枚で上の貨幣と交換できる。金貨が何百枚、何千枚って取引になると、そこからは専用のカードが必要になるらしい。

 まぁ金貨すら普通の生活ではほとんど見かけないしね。

 で、新人支援というのは文字通りだ。最初は個人で町中の雑用をして寝床と食事を確保しつつ、武器や防具を手に入れる。しかし、中々お金が貯まらない。

 その為、登録から1か月くらいは依頼額と同額を支援金として渡すのだ。 ギルドとしてもさっさとゴブリン退治を受けられるようになってほしいと思っているらしい。

 ちなみに、大部屋で食事なしが1人銀貨1枚が最低ランクと聞いた。食事なんかを考えると1日最低でも銀貨2枚ほしい所だ。 

 もっと抑えられるけど、体が資本の冒険者が食事を抜くのはよくないと思う。


「銀貨2枚確認しました。ありがとうございます。それと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」


「ん? 何かな? 変な事じゃなければ何でも聞いて」


「南西の森に何かあったんですか? あそこの北で薬草集めてたら、守護者の人達がいて話をしたんですけど……」


 ミュースさんに抱き付かれたとかは言わないでおく。迂闊にしゃべると話が長くなる。絶対にだ!


「あ~守護者にあったのね。……まぁ、後にしよっか。南西の森についてね」


 何を後にするのでしょうか? 俺、気になります。いや、気にしたらダメだ。


「今、南の街道でちらほらゴブリンの襲撃があるの。だけど、ゴブリンの割に組織立って動いてるように見えるって事でね。それで、ちょうどよく町に来てたから頼んだのよ。あの子がいるからこの手の調査は問題ないしね」


「ミュースさんの能力なら十分に調査してきてくれそうですね。そうすると向こうに近づくのはやめた方がいいのかなぁ……」


「ん~森に入らなければ大丈夫じゃないかな。襲撃を受けるのは街道の方だから北の方なら出てこないんじゃない?。 でも、なんであの方向なの? 薬草なら南東だと思うけど」


 その質問はもっともだ。でも、俺は冒険者ってだけじゃない。


「南東の薬草は新人が採取する場所だから、そこを荒らすのはよくないなぁと思うのと、質のいい状態で取れる薬草って向こうは全然ないんですよね」


「冒険者は、数が揃えばいいから質は気にしないものね。質を見るなら人があんまりいない所の方がいいか。やっぱり薬屋さんの息子ね」


「そんなことないです。それでは帰りますね。またです。」


「ユリト君ちょっと待って、ミュースに何かされなかった?」


「何もされてませんよ。それでは」


「ちょ、ちょっとユリト君! その反応本当はなにかされたんじゃ、ってまちなさーーーい」


 笑顔で、サッと挨拶してギルドを出た。ここで捕まったらきっとめんどうな事になる。 




「捕まったらお昼食べられないかもしれないしね。」


 そんな独り言をつぶやく。まだまだ育ち盛りだからお腹が減るのだ。うん、お昼早く食べたいです。そういう訳で、早足で移動する。

 けっして現実逃避ではない。明日ひどい目に遭いそうだけど、きっとちょっと怖そうな笑顔で許してくれるはずだ。そう信じていないとギルドに行けなくなってしまう。

 

 そんな事より今はお昼である。目指すはギルドより北側にあるランチ亭だ。味よし、量よし、値段もそこそこ、いいお店だ。 

 実は色々な町に支店を持ち、異世界から召喚された勇者様の仲間が立ち上げた由緒正しいお店で、店名も異世界で昼食を意味する言葉らしい。


「いらっしゃいませ。お1人様でしょうか?」


 お店に入るとすぐに店員さんが来た。1人だと伝えると、カウンターでもいいか聞かれ、いいと伝えると席に案内してくれた。

 他のお店だと、いらっしゃ~い。適当に座って~。という感じだけどここはしっかり案内してくれる。勇者様曰く、おもてなしの心だそうだ。


「注文の品が決まったら呼んでくださいね」


「あ、野ウサギのしょうが焼き定食ください」


「野ウサギのしょうが焼き定食ですね。かしこまりました」


 ランチ亭には何度か来てるし、野ウサギの気分だからささっと注文した。勇者様はとても強いけど、元々いた世界の知識を使ってこの世界に様々な恩恵を与えてくれている。

 しょうが焼きもそんな知識の中の1つらしい。俺からすればもう生まれた時にはあったものだからよくわからない。 

 でも、しょうがの使い方も、醤油の作り方も、味噌の作り方も教えてくれたのは勇者様らしい。特にランチ亭は、勇者様が再現した異世界料理多い。

 しかし、勇者様にも絶対に不可能なものがあった。それは、食材そのものだ。だから、ランチ亭全店舗には必ず書いてある言葉がある。


『米を食わせろ』


 歴代の勇者様たち、魂の叫びらしい。一体どれほどうまい食材なのか? この世界の人間共通の謎である。しかし食事する場所でこれはどうなのだろうか? 


「お待たせいたしました。野ウサギのしょうが焼き定食になります」


「ありがとう、お姉さん」


 お姉さんはにっこり笑って、仕事に戻っていった。


「それでは、いただきます」


 野ウサギのしょうが焼き定食は、柔らかい白いパンに野菜のスープ、主役の野ウサギのしょうが焼きに、プリンまでついてくる。

 箸を使って、野ウサギのしょうが焼きをぱくり


「うん! おいしいね!」


野ウサギのしょうが焼き定食。お値段、大銅貨8枚なり。

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