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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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64 情報をさらりと流すのはやめてください

 けっきょくその日ソフィーとシーラが帰ってくることはなかった。

 帰って来たのは次の日のお昼過ぎだった。なぜかレーリックおじさんと一緒にしかも歩きで帰って来た。護衛は挑戦者とスコットさんだけ……。いったいどうしてこうなった。

 ソフィーとシーラはこれまでの間に準備してあったので、明日行くための準備をしている。この後荷物を持って領主館に行くとの事。その時に馬車を呼ぶらしい。うちには止めるところないし、長時間止めっぱなしは迷惑だけど送るだけ送って帰ってもよかったと思うんだけどな。


「わしとて冒険者の端くれ。この程度の距離馬車など使っていられるか」


「え? 冒険者なんですか?」


「元々三男で、王位なんて回ってこないと高を括って武術も魔法も手を付けて冒険者もやっておったのよ。それがまさか流行病で兄たちが死んでしまったために、ろくに教育されてないわしが王になったのだよ。いやぁ、大変だった。冒険者で稼いで嫁増やしてたからもう大変だったわ。ハハハ!」


「まともに護衛つけない理由はわかりましたけど、護衛してる騎士も騎士だと思うのですが……」


「そこはほれ、わしの騎士だしな」


 納得した。すっごい納得した! いやまてこんな話がしたいわけじゃない。そもそもなんで来たのかを聞きたいのだ。


「それでなんでまた来たんですか? 話がしたいだけっていうのも歓迎しますが、さすがにそうじゃないでしょ?」


「ほれ、昨日謝る事は謝ったがそこまでだっただろ? だからその続きをしようかと思ってな」


「それはレーリックおじさんが気にする事じゃないし、そもそも1番の被害者はミュースさんなんだからこっちに話振られても……」


「恋仲だったわけではないのか?」


 王宮内では俺とミュースさんはどんな関係だったとされているのだろうか? 気になる、非常に気になる。


「スコットさん。何か知ってます?」


「メイド達の噂で王子に取り入った女ということになっていてね。こちらで、ミュースが好きな人の所に行こうとしてたって話をしたんだよ。そうしたらいつの間にか恋人と引き裂かれた悲劇のヒロイン扱いでびっくりしたよ」


「話がどんどん大きくなっていった訳ですね……」


 話の最初はスコットさんらしいけど、それ以後はご覧の有様らしい。女の子の話ってすごいからなぁ……。アーサー君達と一緒にいるとものすごくそう思う。


「ふむ……。恋愛は金銭でどうにかするものではないと思ってはいるのだが、それでも迷惑をかけた事への謝罪も含めて何かしようとは思っておったのだがなぁ。実際にはどういう仲だったのだ?」


「ミュースさんが押せ押せで、俺は嫌じゃないから受け入れてて、一緒に暮らしてたら間違いなく一緒になってたと思います。って感じでしょうか」


「それはわしも経験がある。追いかけるのが楽しいのだが追いかけられるというのもまた一興でな。なにか希望があれば聞くぞ? 一緒になるのが嫌だったという訳ではないのだろ?」


「嫌だなんて思ってたらそもそも受け入れませんしね。希望と言われましても、ミュースさんが健やかに暮らせるようにしてほしいくらいですか? 後つけるとしてもソフィーをよろしくお願いします。くらいしか思いつかないのですけど……」


「その程度はもちろんやる。何かあればこっちで保護してしまうしな。君自身に対してのものだな。実は褒美も出す予定があってな」


「褒美ってどういうことです?」


 どこがどうなって褒美になるのかさっぱりわからない。俺何かしたっけ?


「ギフト錬金術復活への糸口を見つけてくれた事への褒美だよ。国としてではなく、わしを含むグループからの褒美ではあるがな」


 褒美の理由はわかったけど、なんで今なんだろうか? 情報ならすでにアレックさんが持ってる訳で、昨日の話でも確かソフィーの父親にはその情報渡してたんだよね? だったら、レーリックおじさんも情報をもらっていて、グループ? にも情報がいくと思うんだけどな。


「なんで今更なんですか? それに復活への糸口っていうことは復活させたいんですか?」


「今更の理由はアレックのせいなのと、検証ができなかったからだな。アレックが情報を渡す代わりに君への接触を禁止したんだよ。わしとしても子供に負担をかけるのは良くないと接触禁止にした。それで情報だけで検証をしようと思ったのだが、ソフィアは情報だけではうまくいかず、こちらが確保していた人物も情報だけでは使用できなかった。では、本人に直接と思っても接触禁止で動けず。手詰まりで止まった訳だ」


「手詰まりだったのにソフィーがここに来て一気に成長した。だから褒美ってことですか? ……それ初期教育は俺に頼むって事になりませんか?」


「状況によってはそうなるなぁ。そうならないようにソフィアにがんばってもらうしかないな。もし頼むことになってもこちらに送り込むから安心してほしい」


「送り込まないでくださいよ……。そもそもどうして復活させたいんですか? 死にギフトですよ?」


 もちろん俺はギフト錬金術がすごいものだって思ってるし、俺の作ったポーションを知ってる人は認識を改めてると思う。だけど、俺のポーションが出来てから動き出したならアレックさんの情報を元にグループを組んだになると思うんだけど、それ以前から組んでいたように聞こえたのだ。そうすると理由がさっぱりわからない。


「一般では死にギフトと呼ばれているのは知っている。だが王宮には君が作ってる様なポーションが備蓄されているのだよ。ずっと昔からな」


 俺の動きが止まった。ずっと昔からポーションが備蓄されてる。それにも驚いた。驚いたけどそれ以上に、


「レーリック先代国王様にお聞きしたいのですが、そのような情報を平民に教えてもいいものなのでしょうか?」


 そう、情報自体を教えてしまったことが驚きだった。思わず先代国王様とか言ってしまった。嫌だって下手すれば国家機密だったりしませんか?


「ん? おぉ! 今のはノーカンだノーカン。ハハハ。命令だぞ」


「はい!」


 命令だぞの迫力が半端じゃなかった。これが王様の威圧感かと初めて王様だったと認識できた。やっと理解できたわけである。今更とか言わない! 会った事もない見た事もない人を判断しろって方が無理だ。

 そこらのおっさんが俺は王様だったんだぞーって言ってる様な感覚だったのだ! 周りの様子をみれば違うだろと思うかもしれない。だがしかし、知り合いに友達、騎士の人達もどっちかと言えば固いイメージのある騎士という印象が薄い人達だったのだ。

 ……いい訳は色々あるけど、やっぱりただのおじさんにしか見えてなかったというのが1番の理由だった。


「それで先代国王様、理由は知りませんがギフト錬金術の有用性は知っていたということでよろしいですか?」


 理由は知らないということでさっきの話は聞いてませんよー。とアピールしてみた。態度が固いのは仕方がないと思う。


「ユリト君、そんな固い態度じゃなくてよいのだよ。もっとフレンドリーに行こうじゃないか」


 しばし沈黙が訪れる。確かに今更かもしれない。でも今ならまだ修正ができると思いたい。ここで一歩踏み出せば戻れなくなる。それを理解しながらもどうせ明日王都に戻ればそれまでの関係だしという思いもある。だったら気にしないでもいいよね。正直普段の様子のレーリックおじさんに固い態度をとり続けるのは大変なのだ。


「わかりましたよ。レーリックおじさん。それで復活させたがってたって事ですよね」


「王宮にはポーション、ハイポーション、エクストラポーションと昔のギフト錬金術使用者の作った物がが未だに残っていてその効果はずっと続いていてな。これだけ有用なものならばと復活させたいと思うだろ? もう廃れたものとしておくにはあまりにも勿体ないからな。そうして長い事色々と調べておったのだよ。ギフト錬金術の担い手がいなくなったその時からな」


 さらりとまたノーカンとか言ってた事を持ち出さないでほしかった! それにしてもずっと調べてたのか? いったいどれだけの間しらべていたんだろう。というかその間備蓄されてるポーションがまだ有効ってどんだけ持つんだよ……。


「とはいえ、長い期間がすぎ、次々と手を引いていって今ではほんの少しだけになってしまった。そこに出てきたのがユリト君、君だった訳だ。これでもしかしたら! と思ったがまだまだ子供だったからね。アレックに十分にフォローするように言っておいたんだが色々あったみたいだなぁ」


「昔から俺の事知ってたんですか?」


「いや、全然知らん。昨日アレックから今までの事を聞いただけだ。こちらとしても調べれば君を特定するのも簡単だったと思うが、接触禁止だったからな。フォローするようにしか言えなかった訳だ」


「そうだったんですか……。でもそもそもなんでギフト錬金術の担い手っていなくなったんですかね」


「ん? あぁそれな。皆殺しにされたからだな」


「え?」


 どうしてだろうなぁ。とかそんな答えが返って来るかと思ってたのにまさかの皆殺しそれは驚きますよ。いえ、本当にどういうこと?


「担い手がいなくなった時からと言っただろ? だから当時の資料が残っていてね。学問錬金術師の1人が嫉妬から集会をしてる所に魔法を撃ちこんで皆殺しらしい。その後発動できるものがいなくなったらしいな」


「ギフト錬金術があればいいって訳じゃないってことですかね?」


「もしかしたら1度使ってるところを見るのが習得条件なのかもしれんな。そうするとユリト君がなぜ使えるのかわからんが」


 思いがけず、ギフト錬金術衰退の歴史を聞くことになった。なんとなく沈黙がおりた。それをやぶったのはスコットさんだった。


「発言よろしいでしょうか? それでユリト君への褒美はどうなさるのでしょうか?」


「「あ」」


 2人そろって言うってことはレーリックおじさんも忘れてたのかよ! 俺も忘れてたけどね!


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