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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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63 話し合いの結果

「アレックなんとかこう……。頭の固い連中がそれなりに納得できる理由か、土産ないか?」


 気合を入れなおしたけど、話の方向がなんか想像と違うぞ? ここはどうやって俺を連れて行くかって話になるんじゃないの?


「あの、俺をなんとか連れて行こうって方向の話じゃないんですか?」


「ん? あぁ、そう言われてるぞ。先代国王が動けば断るまいって向こうは思ってるしな。わしとしては先日の1件の関係者だから謝罪したいというのもあったし、また権力をかさに動こうとするのが気に入らなくてな。ユリト君はここに居たいのだろ? だから最初から連れて行くつもりはなかったんだね。なかったんだが、君があまりにも面白いから個人的に連れて行きたくなってしまった訳だ」


「あ、えっとその……ありがとうございます」


 貴族や王族からするとどうかわからないけど、俺の感覚からするとすっごいまともな感覚を持ってる人だと思った。いや待て、騙されるな。子供8人ってまともな感覚なわけがない。

 ふとアーサー君思い出したが、それはそれだ。それはおいとくとしても、ものすごいありがたい事に変わりはない。


「理由なら、彼の町から離れたがらない心情はある意味で強烈な鎖です。むりやりそれをどうにかするのは彼に与える影響が怖くてやりたくないというのではダメですか?」


「それだと、とりあえずやってみてダメなら諦めようとか言われるからダメだな」


「それなら、代わりの人材というのはどうでしょうか?」


 アレックさんがソフィーの方を見る。実は座ってから、誰でも見れば緊張してるねってわかるくらい緊張してる。今もアレックさんに視線もらってビクっとかなってるし。


「ほうほう、代わりの人材か。2人とも連れてきていただけなかったのですか? とかかふざけた事抜かしそう奴等はいるが納得させやすいな。だが、代わりは本当に務まるのか? 下手な人材だと多方面から、その人材も我々も陰口たたかれるぞ。しかもギフト錬金術だ。そうそう都合よく用意できるものなのか?」


 確かに、代わりにさせるために人材を用意するなら時間が足りなかったと思う。けれどあらかじめ別の目的で、下地のできてる子がいたのだから問題ない。


「父上は私の友人のパウル・アグティノは覚えてますか?」


 ソフィーもシーラも反応する。その人とどんな関係なのか……。想像はつくけどね。


「アグティノの家のせがれか……。そういえば去年あたりに……」


「そこにいるソフィアはパウルの娘になります。アグティノ家は元々ギフト錬金術で大きくなった家です。ですからパウルから娘の為にギフト錬金術の情報があったら教えてほしいと言われておりました。それで情報は送っていたのですが、情報だけではなんともならず使える本人に会ってみたいと言っていました。残念ながら彼は亡くなってしまいましたが、彼の意志でもあった娘を使える人間に直接会わせたいという思いをくんで、私が保護者となり年明けからユリト君に預けてギフト錬金術の習得に努めてきたのです」


 ……そういう経緯だったのか。とはいえ詳しい話がわからないからソフィーの立場がどんなものなのかさっぱりわからないけどね。


「それで現状どの程度使えるのだ?」


 俺を見ながらそう聞いてくるので答えた。ソフィーに聞いても緊張でまともに話せない気がするしね。


「魔力制御が甘いので一部まだ作れない物はありますけど、そこさえできれば俺とほぼ同等の事ができます。しかもレベルは俺より遥かに高いので生産能力はソフィーの方が高いです。すでに追い越されてる可能性も十分あります」


「それほどか! なら問題ないな。だがソフィアと言ったな? お主はどう思ってるのか聞かせてもらえるか?」


「は、はい! お師匠様はこの町を離れるのは嫌だと泣いてしまうくらい嫌がっていました。で、ですから私が代わりに行きたいと思います! 話を聞くだけじゃどうしていいかわからなかったギフト錬金術をここまで使えるようにしてくれたのはお師匠様です。そ、そのご恩返しができればと思います」


 ここまで言ってくれると本当にありがたいのだけど、いつもと口調が違う。普段からこうやって話してほしかった……。というか人前で泣いたとか言わないで! 恥ずかしいですよ!


「ふむ、ユリト君泣くほど嫌だったのか。うんうん、泣いちゃうくらいか。子供らしいところもあるじゃないか」


「そこを引っ張らないでください。むしろ放っておいてください。それよりもソフィーの意思確認の方が重要だと思います」


「そうだな。んーこのまま戻るとおそらく家には帰れなくなると思うが構わないか? ギフト錬金術の有用性を実証し、他の者にも伝える事ができれば爵位を与える事はできると思うがな」


「か、構いません! でも、私が他の人に伝えていいのでしょうか? お師匠様がそれをするべきではないのでしょうか?」


「俺はもうやりたくないよ。最初の方だけ教えて後はみんなに抜かされていくような師匠はやりたくない」


「ユリト君がレベルを上げればなんの問題もないのではないか? 私が言えば修練場も使えるだろうしね」


 レーリックおじさんは俺の事を無理やり誘うつもりはないけど連れて行きたいみたいだね。絶対嫌だけど。


「それでもお断りします。ただ、ソフィーがギフト錬金術が有用だと実証できたら、ギフト錬金術持ちには修練場解放してもらいたいです。俺は魔力ランクBで何度も気絶しながら魔力増やしましたけど、それだと普通は心折れて使おうとしないはずですから」


「魔力確保の為のレベル上げか。色々と条件をつけて使えるようにするのもいいかもしれんな。とはいえ、あそこは湧きが甘いから予約制になっているし色々考えてみる必要はあるかもしれないな。もちろんそれは全てソフィアの肩にかかっているわけだ。がんばるように」


「は、はい!」


 ソフィーの目がなんとなく使命感に燃えているような気がした。


「父上、話が進んでいるようですがソフィアを連れて行き、ユリト君が残る事が決定でよろしいですか?」


「ユリト君はいつでも一緒に行く側になってもらって構わないがそれで十分だろう。後は教会に頼んでギフト錬金術持ちのリストをもらえれば完璧だな」


「それに関してはすでに準備できています。教会としてもあのポーションの有用性は理解しています。ただ、教会としては成人していない子供に自分より歳の離れた年上の人間にものを教える事や平民であることなど考慮して、リストは作ってありましたが利用していない状態でした。国が主導してくれるならありがたいです。教会はどちらかといえば一般人に寄り添う組織ですから」


「国も本来そういうものだと思うのだがなぁ。どうしてもまとめ役のまとめ役やらないとならないからな。めんどくさい事だ」


 王様経験者のめんどくさい発言で場がなんともいえない空気になった。もうみんなどう反応していいのやら……。


「あー、うむ。今回はそこにいるソフィアを王都に連れて行き、教会からギフト錬金術持ちの情報を提供してもらえた事を成果として王都に帰還する事とする。以上解散!」


「レーリックおじさん……。解散しちゃダメだと思うんですけど」


「父上、要件がすんだのなら領主館に行くのでしょ? 出発日時はどうなっているのですか?」


「明日1日休んで明後日出発だな。もうわしがいなくてもいいだろうにいないと文句いうのはやめてもらいたいのだがな。アレックとソフィアは同行して日程の確認やらを向こうでしようか」


「レーリックおじさん、シーラも連れて行ってくれない? ソフィー付のメイドさんだから話きいておかないといけないから」


「そういう事なら同行を許可しよう。支度は明日1日でなんとかするようにそれでは行くか」


 この後玄関で履くのに手間取ったりして混んだけどなんとかみんな領主館の方へと向かって行った。なんだかんだでこの家に1人になるのって久しぶりな気がする。


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