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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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61 これからの少し前と始まり

 エレナさんの所に行って大泣きしてから2か月は立たないくらいの時間がたった。

 最初の頃は表面上をなんとか取り繕いながら周りと接していたけれど、なかなか心の整理ができなかった為、最低限の仕事以外は色々してた。


 教会で子供たちと遊んだり、マティスさんが何を思ったか


「ユリト! 1戦やろうぜ! ガキ共の勉強にもなるだろ!」


 とか言い出して強制戦闘訓練が始まった。最初は気配察知も使って避けながら剣を使ってやってたんだけど、


「それがお前の戦い方じゃないだろ!」


 との事で強めの攻撃してた。だから逃げながらマジックアロー撃ってたんだけど基本避ける。魔法を斬ったりもしてた。技術の1つというのは知ってたけど実際やられるとけっこうびっくりするものだ。

 決着がつかないのでプロテクションで転ばせたり押さえつけたりしてた。だけどやっぱり俺よりも強い冒険者だけあって、最後は全部に対処されてぶっ飛ばされて負けた。

 人間ってあんなに飛ぶんだって身をもって体験したよ。そのまま治癒院送りになりました。後でなんであんな事したのか聞いたら、


「なんかうだうだ考えてるみたいだったから活いれてやろうと思ってな! 予想以上に手間取ったから最後は加減間違えたけどな!」


 って笑ってた。加減間違って活どころか死にかけたよ……。エレナさんのお説教もほとんど笑いながら受け流したらしい。


 そのエレナさんは、あの日以来なんか言葉にはしにくいけど変わった。ガリックスさんが、これなら問題ないの。とか言ってた何が問題ないのだろうか?





 それはさておき、他にはアーサー君達にお願いして一時的に組ませてもらったりしてた。ゴブリン狩りに付き合ったり、南西の森で普通の森の歩き方とか教えたりした。南西の森に関しては情報収集ができて俺としても良かった。昔、父さんに連れてきてもらったけど、今の俺だとどれくらい通用するかがわかったのはよかった。

 アーサー君達の中で1番仲良くなったのはアルタだ。アーサー君は俺と話をしたいみたいなんだけど、ビアンカとリンダが話したがるのでけっきょくそっちで話をして、ジャンナは一緒になって話を聞いてた。そうするとアルタがこっちに来て俺と話をしてるってパターンが多かった。アルタ曰く


「ユリトは話しやすいんだよねー。ほら、あれがちょっとあるから僕のガードが緩んじゃうんだよ」


 なんて言ってた。ライバルが減ったか? なんてビアンカとリンダはちょっと期待してたみたいだけど、アルタからは俺に対してそういう感情はまったく感じなかった。

 アーサー君に対して向けてるのだから当たり前と言えば当たり前だ。俺としてもアルタは話しやすかった。年齢は下でも前世があるからか精神年齢が高いから話しやすいのだ。実際そう言ったら、


「年齢の話はしない」


 と、今まで見た事ないような冷たい表情で言われた。精神年齢すら女性の前では話してはいけない事を知った日だった。精神年齢高いってことはおばさんくさいって聞こえるらしい。そんなつもりは一切ないのだけど、聞き手がそう聞こえてしまうなら言わない方が得策というものだろう。


 そして、アーサー君達といると女性関係のトラブルが多い。美少女4人も連れてるのでよく絡まれるのだ。それでも俺が一緒に行動すると被害は減るらしい。最初の時みたいにトラブル起こしそうなのを転ばせたりしてるわけではなく、純粋に男の数が増えたからだと思う。大抵はアーサー君が出るより先にビアンカが鎮圧する。実力もこの町にいる冒険者の中でも頭一つ抜けてる。正直この町を出て行ける実力はすでにあると思う。

 それとは逆のトラブルももちろんある。それはつまり、アーサー君に寄ってくる女の子だ。アーサー君を引き抜こうとする人、一緒に組んでほしいという人、等々だ。これに関してはビアンカが率先して出るとトラブルがさらに大きくなるのが経験上わかっているという事でアーサー君が直接お断りをしてる。アルタがビアンカが率先して出てトラブルを大きくした話を誇張を交えて教えてくれた。

 後日、弓使いの女の子が1人増えてた。もちろん美少女であるし腕もある。運命を操っているのではないだろうかというくらい戦力も女の子も偏っている。ただ、一緒にいて羨ましいとは思えなかった。なんかすっごい大変そうだ。アーサー君が男になったら更に大変そうだし……。多少の年齢差でも考えの違いがあるなぁとか思ってアルタに話してみたら、


「ユリトはたぶん昔から大人びてた気がするけど……、そんな事なかった?」


 って言われた。言われてみればそうだった気がするが過ぎ去った日々のことは詳しく覚えてない。アーサー君達と一緒にいるのは本当に飽きなかった。





 アレックさんは、出来る限りの事をすると情報の整理とか、ソフィーが作ったポーションやポーションプラスの検証をしてくれた。品質に関しては俺の物と同じだという結果が出た時は嬉しいのか悲しいのかよくわからない気分になったけど、そんなもんかと納得もできたと思う。誰が来るかで対応を変えるため色々と考えてるという本当に頭が下がる。





 そしてソフィーだが、魔力制御は覚えたけどまだ制御が甘いため界石を作る事はできていない。ただ、覚えたってことはゆっくりでも成長で来てる証だ。いずれ問題なく作れるようになると思う。

 けっきょく解体は教えなかった。これは俺が意地悪したとかではなく錬金術師の勘からだ。ソフィーが光の界石を作れるようにこれは俺だけのものな気がする。もしかしたらできるのかもしれない。ただ、できなかった場合に使えるように意地になる可能性があるので教えなかったのだ。そもそも狩りに行かなければ必要ないものでもあるしね。





 俺は少しずつ自分の気持ちに整理をつけていった。ようするにAランクや英雄に憧れる冒険者みたいなものだったのだ。

 強い自分を夢見て、がんばっても届かずに夢破れていった冒険者……。魔力B+で外に出て行かない俺が同列に語るのは違うと思うけど、俺としては1番理解しやす例えだと思う。

 俺の場合、後ろの道がどれだけスタートラインから距離があったのかがわからず、先も見えず、周りに人もいないから自分の立ってる位置は特別なんだと思ってたんだと思う。

 だから、スタートラインについたソフィーが追い付いてくるのを見て、初めて自分のいる場所がスタートラインからそれほど遠くない事を自覚した。

レベルの違いに絶望した。自分の努力が虚しくなった。あっという間に追いついかれるのが悔しかった。

 でも、そういったもので壊れて、自分の中の優先順位を確立できたんだと思う。色々諦めがつき始めたとも言うかもしれない。

 俺はこの町で生きていく。それが俺の最優先事項。この気持ちの根っこはまったく見えない。アルタが言った事が本当ならこの根っこはユリトというものを突き破って別の所から来てるのかもしれない。





 そして、火の月、無の週、光の日

 ついにお迎えの馬車がやってきた。なぜか家にだ。迎えに来たのだから家でもおかしくないと思うだろうが、普通ならこういう時は領主の館に馬車が行き俺達が向かう形になる。とアレックさんが教えてくれた。だけど、アレックさんがいるために領主の所ではなく教会で会う事になっていたのだ。

 待たせるのは良くないということで、前日にお昼くらいには教会に来るように言われてた。なのにお昼よりも前の時間に馬車が家に来て混乱した。

出迎えた俺は、アレックさんのなんとも言えない微妙な顔が強く印象に残った。

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