59 最後のお仕事
土の月、土の週、火の日
ソフィーが代われるようにがんばると言ってから1週間。
一緒にいたいと言っていたソフィーが1晩たったら代わると言ったことに対して俺は何があったのか全く想像が出来なかった。でも、話を聞くことでこじれるのが嫌で何も聞かずにいた。
そんなソフィーが、俺が帰ってくると飛びつかん勢いでやってきた。
「お師匠様! 出来ました! ポーション出来ました!」
「ソ、ソフィー落ち着いて。ポーションで何が出来るようになったの?」
「ポーション10本まとめて作れるようになったです!」
ピシっとなにかひびの入ったような音が聞こえた気がした。それはともかく、もう少しでと思っていたのにまさかこんなに早く出来るようになるなんて思ってもいなかった。
「す、すごいねソフィー。まさかこんなに早く出来るようになるなんて思ってもみなかったよ」
「がんばりましたです!」
ピョンピョン跳ね回る姿がどこか遠く感じるのはなぜだろう? でも、魔力かなり使ってるんじゃないだろうか?
「ソフィー、元気にしてるみたいだけど魔力は平気?」
「……実はちょっと怪しいです」
「すぐに休みなさい」
「あぅ……わかったです」
とぼとぼ歩いて行くソフィーに言うべきことを言ってなかったのを思い出し声をかける。
「ソフィー、おめでとう。本当に後少しだね」
「は、はい! ありがとうございますです! お部屋で休んできますです!」
さてと……、夜はポーションプラス作れるか確認して、界石も一応確認しておくべきかな。魔力制御がないと属性魔力を送り込めないからできない気がするけど、何かありそうな気がするんだよね……。本当に成長が早いよ。
夜、錬金部屋は緊張感に包まれていた。その雰囲気を作ってるのは俺なのか。ソフィーなのか。それともシーラか。全員かもしれない。あんまりいい空気ではないけどやらなければならない。
「それじゃまずはスライムの核からだね。見てどう感じる?」
ジーと観察するソフィー、顔色を見るとあまりいい感じを受けてないのかもしれない。
「少し……あと少しだけ、足りない気がしますです……」
ソフィーは落ち込んでしまったけど、落ち込むのは次の界石がまったく作れなかった時にしてほしい。これ以上落ち込むのかな……。そうしてたら手がつけられなくなりそうだ。
「ソフィーとりあえず次に行くよ。こっちの曇った水晶を観察してみて。俺はこっちの方が先に作れたから試してみようか。ただ、魔力制御が必要だと思うからダメだった場合はしばらく魔力制御の訓練だよ」
「はい、なんとかできるようにがんばります」
そしてまたジーっと観察する。表情が嬉しそうやら悲しそうやら変わる。何があったんだろう? いや、何かありそうな気がしたから魔力制御覚えてないのに水晶を見せたんだったっけ。
実は今まで界石を作ってるところをソフィーに見せた事がない。魔力制御ができないと作れないと思ってたのもあるが、アレックさんが人に見せないようにと言われてたのを今でも一応守っているのだ。
「えっと……、できるけどできなさそうです?」
「それじゃ出来る事やってみようか。やってみて」
「ユリト様はお嬢様の言った意味がわかったのですか?」
シーラが珍しく声をかけてきた。そもそも、最近はこの部屋に入ること自体が珍しいと思うけどね。
「錬金術師の勘なんて、自分がわかる感覚だから人がとやかく言うものじゃないよ。それにこの曇った水晶から俺は4種類作る事ができる。ならどれかだけ作れるのかもしれないよ」
「なるほど、止めてしまい申し訳ありませんでした」
なんとなく、当たりが柔らかくなった気がするんだよね……。ソフィーが俺から離れる事を決めたからか? よくわからない。
「それじゃソフィーやってごらん」
「はいです! 錬金開始です」
始めてから少しビクっとしてから、光よ。とつぶやいた。光? 俺の疑問など無視して光属性の魔力は吸い込まれ界石が出来上がった。また自分の中で音が聞こえた気がした。
「お師匠様できました! これはなんです?」
「あ、えっと、これはアレックさんが言うには界石って言う空間の魔力の質を上げるものらしいよ。効果範囲が微妙で次に作るための材料にしかならないけどね。それにしても光か……。ソフィーが光属性持ちだからか?」
「これ材料なんです?」
「ソフィーも使ってる魔玉の材料になるんだよ。それで他の属性は作れそうかい?」
「それはできなそうです……。ごめんなさいです……」
やっぱりできないか……。でもこれで魔力制御が苦手とか言ってられなくなって、目標持って練習して習得するのかな……。目の前に目標がわかりやすくあると成長のするのが早いのは普通なのかソフィーだからか……。
ポーション作るのに使ってた魔力で界石作っていけばすぐにポーションプラスに届きそうだよね。それにしても、この光属性の界石……。魔玉に追加できそうだな。
「他の属性の界石を作るためには魔力制御ができないと無理っぽいから、魔力制御できるようにがんばってね。そうすれば界石と透明な水晶使って魔玉の元作れるようになるから、自力で魔玉作れるようになるよ。さて、この光の界石はもらうよ」
「わかりましたです。でも、それをどうするです?」
「こうするのさ。錬金開始」
魔玉と光の界石で錬金術を使い出来上がった物は、魔玉を支える小さな水晶が1つ増えていた。これだけでもけっこう魔力持っていかれるな……。この後ポーション作るのが億劫だ。
「小さい水晶が増えたです?」
「効果がどうなったかはわからないけど、たぶん効果が上がってると思うよ。俺じゃ光の界石は作れないから、光の界石作り置きしてもらえると助かるよ」
「わかりました! がんばって作るです!」
「界石はけっこう魔力使うと思うから張り切り過ぎて倒れないようにね」
「はい!」
「お嬢様、もう1度スライムの核を確認してみてはいかがでしょうか? 今製作したもので作れるようになったかもしれません」
「お師匠様はどう思うです?」
俺は考えてみた。さっきソフィーは後少しって言ってた。その後少しの感覚は俺にはわからない。でもそれがこの界石を作った1歩で届いた可能性もあるにはあると思う。
「試すだけ試してみたらどうかな? ダメでも界石作ってれば十分届くはずだしね」
「はいです!」
ジーと観察すると今度は驚いてから嬉しそうにした。あぁついにここにきたんだなって思った。
「よ、用意するです!」
そう言うと、薬草や魔力水、スライムの核を用意する。そして、師匠としての終わりを告げる言葉が紡がれる。
「錬金開始です」
実行された錬金術は問題なく結果を出した。ソフィーはこれでポーションプラスを作れる人間になったのだ。決定的な亀裂の入る音がした。
「お師匠様! 出来ました! 出来ましたです!」
「うん、おめでとうソフィー。後は魔力制御できれば俺と同じだね。ソフィーならあっという間に追い越していくかな? 王都に行くなら素材もきっと多いだろうし、学問錬金術のギルドの協力が得られれば作れる物も増えると思う。まぁ今後の事はいいか、とにかく今日はお疲れ様。それと改めておめでとう。パーティはさすがに無理だけど明日は豪勢に食事しようか? シーラお金預けておくからよろしくお願いするよ」
俺はシーラに金貨1枚渡しておく。これだけあればなんでもできるだろう。俺は今どんな表情をしているのだろうか? ただ優しい表情を浮かべてるだけだとありがたい。心は静かだ。今はまだ静かだ。
「おまかせください」
「お祝いです! お祝いです!」
喜ぶソフィーの姿を見るのが辛い。だから俺は逃げた。
「今日はもう十分な結果が出たから休んでいいんじゃないか? 俺はちょっと考える事があるから外に出て来るよ。今夜は帰ってこないかもしれないけど心配しないでね」
「え? お師匠様?」
俺はそのまま家を出て行った。
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