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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第1章、薬屋さんの息子は錬金術師
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6 その人達は……

「ユリト君、なんか色々ごめんね」


 見た目が、同い歳か少し上くらいに見える少女に押し倒された俺に、苦笑しながら謝ってくれるスコットさん。


 見た目や雰囲気から物語の勇者様っぽいと言われる盾のスコットさん。

 斧で敵を叩き斬る気さくなオーランドさん。

 水魔法の使い手にして姿を隠すギフトをもつのんびりしてるミリアさん。

 無口系チビッ子シーフのミュースさん。

 Dランク冒険者パーティ「守護者」の方々だ。つまり知り合い。人さらいとか犯罪者の方々ではなかったのだ。


「はぁ……本当に慌てたよ。 初クエストで、人さらいとかの犯罪に巻き込まれたのかと思った」


 押し倒されてなんともカッコがつかない状態で、押し倒したミュースさんに恨みがましく言ってみたが聞いちゃいなかった。

 ぎゅっと抱き付いて離れない。視線で他の3人に助けを求めてみた。


「ほらほらミュース、いい加減にして離れないとユリトに嫌われるぞ?」


 オーランドさんがそんな事を言いながら、首根っこ掴んで持ち上げた。 嫌われるに反応したらしく大人しく持ち上げられた。


「…………ユリト」


 立ち上がった俺と視線が合う。無表情のはずなのに、私の事嫌いになった? なってないよね? ってうるうるした目で見られてる気がする。

 もう一度言おう。無表情なのだ。うるうるした目で見られてる気になるってどういう事だ。


「ミュースさん、嫌いになってないから安心して。ただ、もっと普通に近づいてきてほしかったけどね」


「ん」


 どうやら安心できたようだ。返事のトーンが高い気がする。


「いっつも思うが、ユリトは何をどうとってその返しに辿り着くんだ? ただ名前呼ばれて見られただけなのに」


「いつも同じ質問されて、いつもなんとなくわかるんだよ。 って返してるんだからいい加減覚えようよ」


「いしんでんしん」


 オーランドさんはいつもの質問をしてきたので、いつもの返しで返す。ミュースさんもいつものように返す。

 以心伝心の意味はわからない。最初にこの質問をされた時に、以心伝心かなぁ。と答えた。特に考えずフッと出てきた単語の意味が分からないのは今に始まったことではない。

 それはおいといてミュースはミュースで以心伝心という言葉が気に入ったようで使っている。


「いつもの流れの挨拶になってるけど、ミュースにミリア。ちゃんと謝らないとダメだよ? ユリト君はさっきものすごい慌ててたし、怖がらせたんだからね」


 いつもの流れでなぁなぁになりそうだったのを、きっちりと斬り捨て道を正した。さすがスコットさん。パーティのおとう……じゃない、リーダーだ。

 こういうことはキチンと片付ける。普通ならうざがられるはずなのに、スコットさんにかかると、なんかちゃんと言う事聞かないといけない気になるのだ。

 イケメンだからか? 爽やか系イケメンだからだな。ちょっとスコットさん、こっち見て、変な事考えてないよね? って目で見ないでください。


「ごめん……」


「ごめんねぇ~なんかノリで」


「ミリア……」


「なんつぅ言い草だ! ハハハハハ!」


 ミリアさんの謝罪? にスコットさんは眉間を揉み、オーランドさんは笑った。ミュースさんはしょんぼりしてる。

 ノリって……。それにミュースさんがしょんぼりしてるのを見るとこう、いいようのない罪悪感が生まれてくる。20歳の女性なのに女の子をいじめた気分になる。いじめた事なんてないよ! ホントだよ!


「もう謝ってもらったからいいよ。でも、なんであんなことしたのか、説明はしてほしいかな」


「確かにそうだね。ミュースが急にユリトがいるから行ってくるって言って、ミリアがそれなら私もって行ってしまった訳だけど、どうしてこうなったのかな?」


 スコットさんも説明を求めてきた。どうやらミュースさんが独断で行こうとして、ミリアさんがくっついてきたらしい。

 そして、さすが本職シーフ様。俺よりも探知領域が広いらしい。

 同じ魔法かどうかはわからないけどもね。でも、ミュースさんは特別能力が高いって前に言ってたっけ。


「ちょっと驚かせたかった」


 ミュースさん、ものすごい簡単でわかりやすい動機ありがとうございます。でも、もう少し詳しくお聞かせ願いたい。


「普通に会うのもいいけれど、ちょっと驚かせてみない? って提案したのよ~。それに1人しか反応がないって言ってたから、隠れて仕事ぶりを観察もできるからってね~」


「つまりミリアが犯人って訳だ。まぁ、ミュースがそんな回りくどい事するとは思えなかったしな」


「オーちゃん、犯人なんてひどいわ~。共犯者よ」


「ミリア、君も悪いことにかわりはないからね」


 うんうん、スコットさんの言うとおりである。


「でも、私も驚いた」


 そう言いながらミュースさんが俺を見る。ん? 俺?


「確かに~、急にこっち見て、バッと逃げるんだもんね~」


「ん、それに後ろに飛ばなかった。なんで?」


 手の内をばらしていいものか? とか思ったけど、守護者の皆を信頼してる。それにこの疑問を解いておく事で、なにかの危機に対応できるかもしれない。

 そもそも、俺の個人情報とか父さんがばらしまくっていると思い出した。元冒険者のくせに、自分の情報じゃないからって晒さないでほしい。


「俺の持ってる気功ってスキルのおかげだよ。気功自体には感知する能力はないけれど、視力、聴力、感触とかそういったものが敏感になるからわかったんだよ。ミリアさんの場合は、草を踏む音が聞こえたんだ。後ろに飛ばなかったのは、なんだかよくわからないけど、後ろは危険な気がしたからかな?」


 俺の話を聞いて、スコットさんは、ふむ、なるほど。 とか、言ってるけどほかの3人は唖然としてた。 なぜ?


「草を踏む音が聞こえるとかどうにもならないですよ~」


「無意識の情報分析……。残念」


「その歳で気功って、お前はどこの修行僧だよ……」


 3人とも理由が別々だった。 


「俺は自分が出来る事やってるだけだけどなぁ」


「いやいや、色々おかしいって詳しい話を聞かせろ。俺も気功覚えられるなら覚えてぇしな」


 確かに気功覚えると色々便利だし覚えたいのはわかるけど、でもなぁ……。


「オーランドそこまでだ。そもそも俺達は依頼を受けてここにきてるんだ。 ユリト君と久しぶりに会えたのは嬉しいが今はここまでだ」


「ユリトも連れていけば問題ない」


「ミュースさん!? 何言ってますか!」


 Dランクの方々が受けてる依頼にFランクが混ざるって駄目でしょうよ!


「色々問題があるからダメだ。できる限りここの森の情報を集めるように言われてるんだ。そろそろ再開するよ」


「ムムム……」


 ミュースさんがむくれてる。というか情報集め……? なにかあるのかな?


「あのスコットさん。 俺はここで採取とかしてても大丈夫なんでしょうか?」


「ん? あぁ……これ以上森に近づかなければ問題ないと思うよ。ここならゴブリンが出てきても逃げられるからね」


 スコットさんは、俺がゴブリンを倒せることを知ってるはず……。それでも逃げる状況になりえるって事?


「わかった。危なそうならしっかり逃げるね」


「冒険者は引き際を見定めるのも大切だ。気を付けてね。それとお願いがあるんだけどいいかな?」


「なんですか?」


 俺に頼み事って、なにかギルドに言伝でも頼みたいのかな?


「俺達は夕暮れ亭って宿に泊まってるんだ。良ければ今夜食事でもどうかな? このままだとミュースがむくれて仕事に支障がでそうだし、オーランドも色々聞きたがってるしね」


 さすがスコットさん。 仲間のフォローも完璧です。


「おぉ! そうだな! それならゆっくりじっくり聞き出せる。必ず来いよ!」


「今晩は楽しい食事になりそうですね~」


「ユリトが来るならがんばる」


 いや、来なくてもがんばってくださいよ。でも、せっかくのお誘いだし行こうかな。誘ってもらえるって嬉しいよね。


「それじゃあ今夜夕暮れ亭に行きますね。 いつ頃行けばいいですか?」


「私が迎えに行く」


 ミュースさん、返答早すぎです。


「そういうことみたいだから、家でミュースを待っててもらえるかな?」


 俺が、わかった。と答えるとそれぞれが挨拶をしてくれて、パーティ守護者は森へと向かっていった。


 色々話して時間がたってるから今日はもう帰ろうかな。今から帰っても遅いお昼になりそうだ。

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