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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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57 僕のお仲間だと思ったのに!

「それでいい考えっていうのはなんだ」


 ビアンカの声が怖い。下手な事をいうと斬りかかってきそうだ。実際そんな事にはならないと思うけどね。


「3人で組むのは2人採取の1人が見張りだからだね。だからここは発想を変えまして……。僕とユリトが2人で周辺の警戒をするから、みんなは2人ずつで組んで、どっちかが5束とったら交代とかでやればいいと思うよ。ユリトは僕が独り占めだけど気にしないでしょ?」


 それならばと、案がまとまり2人組で行動を開始する。最初の組み合わせはアーサーとジャンナ、リンダとビアンカだ。アーサーとジャンナは普通にやるだろうけど、リンダとビアンカは交代すべく必死でやりそうだ。それにしてもアルタは何を考えてこうしたんだろう?


「アルタはいいの?」


「平気平気。リンダとビアンカは焦り気味だけど、アーサー本人は誰か1人を選ぶんじゃなくてみんな一緒がいいって感じだしね。それに誰かが抜け駆けしたらたぶんその分他の皆の立場もあがる気がするからねー。そもそもアーサーの恋愛意識が低い。どうこう絡めて行くにはよっぽど大きい事がないとダメだと思うよ」


「例えばお姫様の命を救って結婚を申し込まれるとか?」


「そうそう、それでもアーサーは僕には仲間がいますのでとか言って断って、お姫様はなぜか武闘派か魔法に精通してて僕たちの仲間になるんだよ。だけど初めて結婚とかそういうのを意識したから段々僕たちの好意にも気がついたり、もしくはリンダとかビアンカ辺りが私もお慕いしています! とか言ってようやく男女の仲になっていくんだよ」


 俺はこの前あったことからちょっと言ってみただけなのに、アルタはやけにこうなるって話が具体的だなと思った。お姫様が武闘派とか魔法に精通して冒険者になるってどんな展開だ……。


「やけに話が具体的だね。こういう話考えるのが好きなの?」


「ユリトこそお姫様の命を救って結婚申し込みなんて言ってるじゃない。本当はわかってるんでしょ?」


「えっと……何が?」


 アルタは何かの確信を持っているみたいだけど、俺には何の事だかさっぱりわからない。俺の表情を見て、やがて諦めたような顔をした。


「あっちゃぁ……。なんとなく、なんとなくなんだけど、お仲間かと思ってたんだけど違うのかぁ……。残念。でも、それならなんでお姫様の件が出てきたの?」


「最近、仲の良かった人が王子を助けて惚れられて、けっきょく愛人になった」


 何が残念なのかさっぱりわからない。勝手に勘違いしてただけだしなぁ……。


「あー、身近でそんな事が起こったんだ……。事実は小説よりも奇なりってね。いや、定番の小説ネタだから違うか。それにしても暇」


 魔物の気配なんてものは皆無だった。ここじゃ変な人にいちゃもんつけられる可能性も……、かなり低いだろうしね。


「そうこう言ってる間に、向こうは交代したみたいだね。たくさん稼いで宿賃くらいはしっかり稼いでほしい所だね」


「そして僕は楽してご飯が食べらえる。実にいいポジションだね」


「それが狙いか……」


 少しはそういう気持ちがあるのかな? なんて疑ってはいたんだけどまさか自分から暴露するとは……。


「それ以外にもユリトと話がしたかったからだよ。ユリトなら僕の特殊な事情理解してくれると思ったんだけど、さっきの反応からして無理そうだからねぇ」


「アルタの考えてることなんてさっぱりわからないよ……」


「それにしても暇……。何かないかなぁ……」


「不謹慎だよ。でも、どうしてもというならこれでもやってなさい。貸してあげるから」


 職場放棄だとは思うけど、確かに暇なのだ。そんな訳でアルタに空間収納にいれてあったアレを渡す。


「何々……。ちょっと待って……。これって知恵の輪よね? こんなものこの世界にあった?」


「あれ? 知恵の輪知ってるの? 俺が錬金術で作ったんだけど、誰も知らなかったのに……」


「って、やっぱりユリトは転生者でしょ!? 僕を騙したの!?」


「転生者って何?」


「知恵の輪作っておいてまだとぼけるの!? 日本超便利だったとか緑茶がうまいとか米食べたいとかじゃないの!?」


「え? いやちょっと……」


「リアル魔法キター! とかケモミミいないじゃん! とかエルフどこだよ! とかドワーフどこいった! とか実は日本刀があります。かっこいい! とか異世界に近代兵器の銃持ち込むなよとかないの!? 銃は持ち込もうとして失敗したみたいだけど!」


「アルタ落ち着いて、ドウドウ」


「僕は馬じゃなーーーい!!」


「いい加減うるさいから静かに!」


「うっ……。わかったよ……。でも、ユリトだって悪いんだからね。私も転生者なんだからそんなに隠さなくてもいいじゃんよ……」


 さっきからアルタの言ってる意味がわからない……。確かに今までに聞いた言葉もあるけれどまったくわからない言葉も多い。……なぜか無性に銃という響きには惹かれるものがあるけどそれくらいだ。


「その……さっきからアルタの言ってる転生者って何? 本当に意味がわからないんだけど……」


「え? あの……正体隠したいとかじゃなくて純粋にわからないの? マジで?」


「わからないから教えてもらえるかな? 気にかかる言葉ではあるんだよねぇ」


「あーうん、わかった説明する。前世の記憶や知識を持ったまま生まれ変わった人間を転生者っていうの。それで僕はおそらく勇者様達と同じ世界にいた人間。だから米が食べたいって気持ちもわかるし、緑茶をおいしく感じる。勇者様知識の物は私にとっては懐かしの1品だったりするのだよ」


 俺達がこうして話してる間にも向こう側は何度も交代をしてるし、俺も警戒は怠ってない。たぶんアルタもそうだと思う。しかし、なんというか心当たりは色々あるね……。


「アルタの話はよくわからないはずなのに、なんかわかる気がするよ……。緑茶はおいしく感じるし、和風ってものにすっごい惹かれるんだ……。たまに和風っていって売ってる物に、これは違うだろ!? ってつっこみ入れたくなるし……。でも、全然前世の記憶とかはないんだよね。これも転生者ってのになるのかな?」


「うーん……どうだろうね。知識があれば十分その素質はありって事かな?」


「知識って言われても全然わからないんだけど……。あぁ、なぜか習ってないはずのそろばんが使えたりするのもそうなのかな?」


 アルタが頭を抱えた。 いったいどうしたんだろ?


「そんな微妙な知識で転生者名乗るな! チートのチの字もないじゃん! てか、もっとチートプリーズ! 勇者様はチートの塊みたいだし、僕も勇者様としてこの世界に来たかったよ」


「名乗った訳ではないんだけど……。でも、召喚されたかったの? 俺にはまったく理解できないけど……」


 俺からすればただの誘拐。家族や友人色々な関わりを持っていた人達から無理やり離されるなんて耐えられないけどな……。


「だって、この世界の勇者様物語聞く限り、ほとんど日本人でチートの塊でしょ? しかも、国からの保護も厚い。息苦しいだけのあんな場所よりこっちの方が何倍もいいよ。勇者様じゃないのは残念だったけど、転生者特典微チートならもらえたしねー」


「そもそもチートの意味がわからない……。何かの能力? それだとおかしいか……。そうなるとスキルの事をチートって言うのか?」


「あー。ここまで話してなんだけど、この話はここまで。たぶん前世ありだけど、ほとんど情報ないからユリトはきっとこの世界の人間なんだよ」


「アルタは自分の事どう思ってるの?」


「2度目の人生異世界でって感じ」


「……なるほどね。話がここまでなら後はそれいじってればいいと思うよ。それやりながらできるでしょ?」


「もちろん」


 アルタの話はよくわからない事が多かった。そもそもどうして俺を転生者とかいうのだと思ったんだろう? 転生者という言葉を知ってる人間なら俺の事をそう見える何かしらの特徴があるのかもしれない。

 でも、2度目の人生ってどんな気分なんだろう? すでに色々な失敗をしてるはずだから、少ない苦労で成長できたんだろうか? それとも逆に、色々知ってるけど違いが多くて大変なのだろうか? 

 普通、人生をやり直すって言ってもあくまで続きだ。気持ちの区切りをつけてるに過ぎない。それが物理的に出来てしまったら……。なんだか想像できなくて怖いや……。

 それに1度目という基準がある。異なる世界って意識がある。そうすると世界はどんな風に見えるんだろう? ……この世界の人間なんだよか。アルタはどこで生きてるんだろうね。


「ところで今更なんだけどアルタ……」


「何、ユリト」


「この状態なら俺1人で見張っててもまったく問題ない事に気が付いたよ」


「そうすると僕のこの優雅なポジションなくなるじゃん。それにアーサーと一緒にいるの諦めてるんだからこれくらいはね」


「さようですか」


 知恵の輪をカチャカチャやりながらすでに3個目、寝る前にいじっててそのまま空間収納に放り込んだのを忘れてたのがいくつかあったので解き終わったら渡してた。

 ビアンカとかリンダがこの状況みたら怒りそうだけど、その2人は少しでもアーサーとの時間を増やすべく。薬草採取を全力でやっている。普通、いくらここが薬草が多い場所だからってその早さで採れはしないだろう。

 さりげなくすごいのはそれに文句も言わずについてまわってるジャンナかもしれない。見た目と言葉使いとは裏腹に普通に彼女らについていくのだから……。


「それにしてもユリト。こっちの知恵の輪ってすごいね」


「すごい? カチャカチャやって解いて遊ぶだけじゃないの?」


「あれ? 気が付いてない?」


 なんの事を言われてるかさっぱりわからなかった。いやだって、本当にカチャカチャやって解いてるだけだしなぁ……。


「本当に気が付いてないんだ……。僕の微チートのおかげかな? さっきから知恵の輪カチャカチャやってるけど、これ解除スキル手に入るよ」


「はい?」


 スキル解除、シーフ系スキルで罠を解除したり、宝箱の開錠なんかもできるようになるスキルだ。悪用しちゃいけないスキルの1つだね。


「だからこれ、解除スキル覚えるよ。解き方わからなくて唸ってたら、急に解き方が浮かんできたりしなかった?」


「……浮かんできたね」


「うん、それ解除スキルだから」


 頭を抱えるしかなかった。こんなおもちゃだと思ってたものがスキル覚えるための道具になるとは! しかも、解除ってまずい。まず過ぎる。ソフィーに作らないように説明して、確認の儀受けて解除を覚えてないか確認して、アレックさんに全部渡さないと……。面倒事しか思い浮かばない。と、いう訳でして、


「没収! いや、回収! 教えてくれたのには感謝するけどさすがにこれでスキル覚えるなんてまずい。しかも解除とかなおまずい」


「えー、けちー。解除スキルのレベル上げって大変なんだ。少しくらい協力してくれてもいいじゃん」


「解除をこんな簡単に覚えられる方が問題なんだよ。みんながみんな鍵明けとかできる世界にしたいのか?」


「うわ、それは嫌過ぎる。ちぇ……。今回はあきらめてあげるよ」


「あきらめてくれてありがとうって言うべきなのか。そもそもこれは俺のなんだけどって呆れればいいのか……。でもここで気が付かせてくれたのはありがとうかな」


 気が付かずに広めてましたとかシャレにならないからなぁ……。それにしても微チートっていったいなんだろう……。聞いたら答えて……くれないだろうな。さっきここまでって言われた訳だしね。


「それで、これからどうするの? 僕としてそろそろ止めた方がいいと思うんだけど」


「確かに、交代をやたらとしてるからね。最後に1つだけ教えてほしいんだけどいい?」


「なに?」


「俺が転生者だって思った理由は教えてもらえないかな?」


「なんとなくだよ。なんとなくみんなと違う感じがして僕に近い感じがした。ただそれだけ。でも、小さい頃からけっこう浮いてたんじゃない?」


「確かに……。アーサー君を呼んでくるのはまかせるよ。俺は他の2人を呼んでくる」


「りょうかーい」


 2人で別々に呼びに走る。小さい頃から浮いてたか……。色々言われたけどけっきょくはどこか普通の子供っぽくないって感じではあったんだと思う。なんだか変な感じだね。


「ビアンカ、ジャンナ合流して帰るよ」


 合流して帰り、俺の初めてのアシスト仕事は終わった。

 それからみんなでご飯食べたりして楽しい時間を過ごせた。やらなきゃいけない事は増えたけどね。

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