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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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55 説明しましょう!

「それじゃまずは俺から、名前はユリト。好きに呼んでもらっていい。ランクはEで、1年くらいずっと1人で冒険者をやってる。普段はオーク狩りをしてて攻撃手段は……あー、マジックアローだ。シーフもできると思う。後は、冒険者以外にポーション作りもしてる。そんなもんかな?」


 攻撃手段がマジックアローと言うのは初対面の相手には言いにくい。初期の攻撃魔法でそれを使い続けることなんてないからね。不思議そうな顔はされたけど、俺がオークを普段倒してるって言ったからか侮るような視線はない。その視線がないだけでびっくりだよ。


「それでは次は僕が、改めましてアーサーです。一応リーダーをしてます。ポジションとしては前衛のアタッカーになります。よろしくお願いしますね」


 アーサー君の武器は両手剣だ。納得のポジションだと思う。でもなんとなく……なんとなくなんだけど簡単な魔法だったら使えそうな気がする。そんな事までわかるスキルあったっけかな?


「それじゃ次は僕ね! 僕の名前はアルタ。武器は短剣で接近戦も投げて中距離くらいもできるよ。でも、本業はシーフだよ。好きに呼んでね。よろしく!」


 やっぱりシーフだったか。でも、新人のうちからシーフって選択が渋いな……。シーフってけっこう最初は別の事したかったけど、適性の問題でこっちに移ったって人多いのにな。


「では、次は私が。名前はリンダですわ。風属性を中心に使う魔法使いです。みんなリンダと呼びますからそう呼んでください。よろしくお願いしますわ」


 杖を持ってたから魔法使いだとは思ったけど、風属性を中心か……。複数属性持ちって事かな。羨ましい。


「次は私だな。名はビアンカだ。見ての通り壁役だな。ビアンカでいい。よろしく頼む」


 鎧はしっかり着込んでるし、盾に片手剣見事に壁役だね。そして性格も固いなぁ。


「最後はー、私ですねー。私はー、ジャンナってー、言いますー。話し方がー、こんななのでー、普段はー、しゃべらないようにー、してますー。よろしくー、おねがいー、しますねー」


 なるほど、これは知らない人だとこのしゃべり方はきつそうだ。戦闘中は大丈夫だろうか? 


「ジャンナは普段こんな感じですけど、戦闘とかは普通に話しますから大丈夫ですよ。初めてだと信じられないと思いますけどね。ちなみに光属性持ちです」


 アーサー君がフォローしてくれて、自己紹介は終わった。シーフがアルタ、前衛が壁のビアンカとアタッカーのアーサー君、後衛が攻撃担当リンダと回復担当ジャンナか……。


「すでにバランスがいいし、このまま十分いけそうな組み合わせだね……。みんなは同じ町の出身なの?」


 この雑談はいらないといえばいらない。そんな事話す必要あるんですか? みたいに言われたらさっさと切り上げるつもりだった。でも、みんな顔を見合わせてから話し始めた。


「僕とジャンナは幼馴染なんです。移動してる最中の町で3人とはあったんです」


「そして僕とリンダが幼馴染なんだよ。それでリンダとビアンカがちょっとケンカになっちゃって、そこに入ってきて止めてくれたのがアーサーなの」


「え? じゃぁ、この町に来るまでの間でそんなに仲良くなったの?」


「そういう事になりますわね」


 どっちかと言えば全員が幼馴染で、共通の師匠がいてその人に役割分担決められてしごかれてたとかの方が説得力がありそうな組み合わせであり仲の良さに見えたんだけど……意外だ。


「ちなみに一緒にいる理由聞いてもいい?」


 なんとなく、うん、なんとなくって事にしておくけどわかると思う。イケメンだもんね! 性格も良さそうだもんね!


「そ、そんな恥ずかしい事言わせないでください!」


「そうだ! それは関係ないだろ!」


「むしろ、その態度でアウトだと思うけどな。ちなみに僕はアーサーが気に入って一緒にいるんだよ」


「抜け駆けですの!?」


「抜け駆けか!?」


 抜け駆けもなにもバレバレじゃないですか。とか今言ったら思いっきり睨まれそうなので黙ってる。男は黙って嵐を待つべし。現実逃避ともいう。


「僕はみんなと一緒にいられたらいいなって思うよ」


 そしてアーサー君は笑顔で殺しにかかってくる。その笑顔は危険です。ほら、その笑顔見た女性職員がポーってなってるよ。エレナさんに頭叩かれて強制再起動させられてるけどね。エレナさんは相変わらずお強いです。


「そうですわね。みんな一緒でいいですわね」


「そうだな。みんな一緒でいいな」


 ビアンカとリンダはアーサーが絡むと行動が似るらしい。たぶんそれが面白くてアルタは突っついてるな。ジャンナはニコニコしてる。この子はブレないな。


「みんなの仲がいいのはわかった。短い間だけどよろしく頼むよ。ちなみに、アーサー君なんかは特にだけど言葉使い気にしなくていいからね。歳も1つしか離れてないし、疲れちゃうでしょ?」


「そうです……そうだね。ユリトさんこれからよろしく」


「あぁ、よろしく」


 それに続いてみんなで、よろしくーと声をかけてくれた。あぁ……、こういうのいいよね。なんかこう仲間がいるっていう感じがとってもいい。


「それじゃ狩場についての話をしようか。多少は聞いた?」


「いえ、アシストしてくださる方が実地で教えてくれるからとそういったお話は聞いていませんわ」


 俺自身が受けてないからなんともいえないけど、そういうものなのかな? それじゃあ説明しようかね。


「それじゃあ説明するね。この町の狩場は主に5つのエリアで構成されてる。しかも、特徴がわかりやすいから初心者向けになってる。まずは今回行く町の南東方向、ここは薬草が多く生える。北東は野ウサギが多く生息してる。北西はダンジョンの名残を残すゴブリンだけの森。南西は色々な物がちらほらある場所だから人気のない場所になる。そして、北の街道を半日以上歩いていくと野営できる場所があるんだけど、その周辺の森がオークの住処になる。これがこの町の基本的な狩場情報になるかな」


「目的に沿った狩場があるんですのね」


「目的の狩場にはそれ以外の要素があんまりないってのもいいところだね。それだけだと冒険者としての能力がイマイチになりかねないから、南西の森でゴブリンやらウルフやら色々な種類のいる所にも入ったりするんだけどね」


「確かに初心者向けですわね。しかも充実したサポート体制。この町を目指せと言われたのもわかる気がしますわ」


 みんなに向けて話してはいるのだけど、基本リンダが受け答えをしていた。役割分担なんだろうね。ビアンカとジャンナはこういうの無理っぽそうだし、アルタはシーフだし、意外とこの手の情報はすでに仕入れてる気がする。アーサー君も受け答えできると思うけど、まとめ役だろうしこんなもんなのかな?


「それで今日は薬草採取に行くわけだけど、採取とか解体で使うナイフと薬草いれておける袋は持って来てる?」


「ナイフは持ってますが個別に入れる袋はもっていませんわね。みんなはどうです?」


「ナイフはありますが、アーサー達の空間収納に入れておけばいいと思って私は持ってないぞ」


「僕は持ってるよ」


「僕とジャンナとリンダがある程度の空間収納持ってますから、必要ないと思ったのですが必要ですか?」


 ナイフはあるけど、後は空間収納に入れておけばいいやって事か。気持ちはわかるけど、魔石にしても薬草にしても1つずつ出すのめんどくさいんだよね。最近はちゃんと魔石も袋に入れてるもん。そしてアルタは抜け目ない。


「空間収納に入れておけばいいって思うのはいいんだけど、お金は財布にいれないでそのまま入れてる? 細々したものを1つずつ取り出すの大変じゃない?」


「……確かに昔、お金をそのままバラバラに入れてお金取り出すの苦労しました。魔石にしても薬草にしてもバラバラに入れるよりも袋にまとめておいた方が楽そうだね」


「そういう事、とはいえ懐事情もあるだろうし絶対必要ってものでもないからその辺の判断はみんなにまかせるよ。あくまでも楽になるだけだからね」


「まだ余裕はあったと思うけどリンダはどう思う?」


「そうですわね……。今全員分買う必要もないでしょうし……。2枚ほど買っておきましょうか」


「それじゃ、袋を買いに行ってから南東の薬草採取に行く。ユリトさんそれでいいかな?」


「薬草の採り方と使い方は現地で教えるからそれでいいよ」


「はい、それじゃみんな行こうか」


 おー。と声を揃えて返事をしてみんなで移動する。移動はやっぱり視線を集めた。俺もエレナさんと一緒にいる事があるからそれなりにこういう視線も知ってるけど慣れないものだ。

 でも、彼らはみんな気にしてないように見える。鈍感なのかそれとも常にこういう視線に晒されてるから耐性がすでに出来上がっているのか……。そしてやっぱり俺が浮く。見た目もそうだし、元々の仲の良さも違うから浮きまくってるに違いない。

 たまに、なんか1人場違いがいる邪魔とか言われる。ちょっと泣きたくなった。早く町を出て薬草の採取地に行きたいな。



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