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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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54 アシストデビュー

 オーランドさんが帰って、その日のうちに教会から何か連絡あるかな? って思ってたけど、まったくなかった。

 俺は手紙が立場ある人から来てるのかな? って思ってた。そうだったら、アレックさんもすぐに俺に連絡してくると思ったんだけど実はそれほど重要じゃないところからの手紙だったのかな。

 手紙なんて手段を使って連絡するなんて俺達じゃ考えられないから重要案件だと思うけど……。それとも貴族様ともなると町を超えた手紙のやり取りなんて普通なのだろうか……。普通は町中でも手紙のやりとりなんてしないのに……。お金のあるところは違うな。

 でも、これから連絡があるかもしれないけどね。


 ミュースさんともう会えないと思うとなんだか寂しい。ただちょっと毎日アレだった場合、俺は受け止めきれるのだろうかと不安に思っていたのは事実で……。安心したとかはまったくないんだけども、ミュースさんが来ないなんて! もう会えないなんて! って強い感情がないのもまた事実だった。


 ミュースさんが、事情により来れなくなった事はソフィーとシーラにも話した。2人揃って何やら安堵してたみたいだけどあれはいったいなんだったんだろうか?


 そんな訳で、次の日はいつものように行動していくはずだった。はずだったんだけど、ギルドでいきなり予定が狂った。とはいえ、もしかしたらいるかな? とは思っていた。

 昨日道を聞いてきたイケメン……アーサー君、本人の前でちゃんと名前を呼ぶように思い込ませておかないとアーサー君アーサー君……。たぶん、これで大丈夫! そのアーサー君一行が受付で説明を受けてるようだった。


「おはようございます、エレナさん。いつも通りお願いしますね」


「えぇ、処理しちゃうわね。それで昨日オーランドさんだけでギルドに来てたんだけどユリト君知ってる?」


「はい、依頼のついでに家に寄ってくれて話をしましたから」


「ほかのメンバーなら1人で来ても、役割分担とか私にケンカ売りにきたって事でわかるんだけど、オーランドさん1人だったから気になっちゃって」


 ケンカ売りにくるのはミュースさんか? そんな事してたのか……。簡単になら話してもいいかな? ミュースさん関係はがっつり話すとまずそうだけどね。


「スコットさんとミリアさんが結婚するそうでパーティ解散したそうですよ。それでスコットさんとミリアさんは王都に住むみたいですね。ミュースさんも優秀なので王都で引き抜かれたそうですよ」


 スコットさん達は事実だ。嘘は一切言ってない。ミュースさんは何が優秀なのか言ってない。もちろんシーフ技能だったすごい人だからこれで勘違いしてくれるはずだ! 王子から見て容姿が優秀だったから王子に引き抜かれたとか思わないよね。そういえば、性格の事どう思ってるのかな? いや、王都に近い町とはいえ帰るまでに数日はあるはずだし、それを理解したうえでもぞっこんなんだろうなぁ。


「ふーん、あの子なら余程事がなければ抜け出してきそうだけどね。良いのか悪いのか……」


「えっと、エレナさん?」


「あぁ、ごめんなさい。それじゃいってらっしゃい」


「すみません。ユリト君、エレナさんよろしいですか?」


 俺も挨拶して出て行こうと思ったら、別の職員さんから話しかけられた。あれ? この人アーサー君達の対応してた人じゃないかな? そう思ってアーサー君達の方を見たら、シーフの子がやっほーとか言って手を振ってた。俺も手を振り返しておく。


「どうかしたの? それにユリト君もどうなの?」


「えっと、はい、あの子達今日からここを拠点にして仕事をするみたいなんですけど、今アシストできる人が誰もいなくて……。それで彼らの希望もあってユリト君にお願いできないかと思いまして」


「ユリト君、なんで希望なんてされるのかな?」


 エレナさんの笑顔が怖いです! 知らない間に女引っかけたな? みたいな目で見ないでください! そもそもあのイケメンを相手に出来るわけじゃないですか!


「昨日、たまたまギルドの場所聞かれたので教えたんです。ついでに宿の場所も!」


「そう、それでどうする? 本来Eランクじゃアシストなんてできないけど、ユリト君なら近場は任せられるからね」


「いいんですか? アシストもそうですけどオークに関しても」


「どっちを選んでもいいわよ。オークだって今日明日なんて話じゃないもの」


「それなら、受けようと思います」


「アシストの依頼は最低でも大銀貨1枚から報酬でるからね。後で詳しい報告お願いね。それで上乗せがきまるから」


「わかりました。こういうの初めてだから楽しみです」


 これが初めての冒険者と一緒の行動になる。1年以上のぼっち冒険者がついにデビューです! ……アシストの位置ですけどね!


「女の子たちもみんな美少女だもんね」


「そっち目当てじゃないですから!」


「はいはい、いってらっしゃい」


 そういってエレナさんに送り出される……。と言っても、2つくらい隣でしかないわけですが……。


「おはよう。昨日ぶりだね」


 俺が挨拶するとみんなそれぞれに挨拶してくれた。ニコニコしてる子も挨拶してくれた。最悪言葉がしゃべれない子かもなんて思ってたけどそんなことはないみたいだ。しかし、話し方がゆっくりだな……。


「それで俺にアシスト頼みたいってことだけど、俺はEランクだけどそれでもいいの?」


「ユリトさんはEランクだけど知識は十分あるし、オークを1人で倒せるくらい力のある人だって聞きました。よろしければお願いできませんか?」


 アーサー君はやっぱり丁寧だ。この辺は後でもう少し気を抜いて話してもいいって言っておこうかな。歳だって近いしずっとそれじゃ疲れそうだしね。


「そっちがよければ問題ないよ。ただ、俺としても初めてだから多少の事は目をつぶってもらえると助かるよ」


「ベテランの方がいらっしゃらないなら仕方がありませんわ。あなたができる範囲の事で色々な事を教えてくださいね」


 この気の強そうな子はなんだか、普通に同じ台詞言われるとちょっとイラっときそうだけど、なんだろ……不思議とそんな感情が出てこないな。


「リンダは言い方気を付けようっていってるじゃん。キレる人はキレるよ? ごめんねユリト。悪気はないんだよ? ただ言葉の選び方が下手なだけでね。良い子なんだよ」


 そう言ってシーフっぽい子はリンダと呼ばれた少女に抱き付いた。仲はいいみたいだね。


「なら、アルタはどういえば良かったと思うのです?」


「ん~大きく間違った知識じゃなければ問題なし! とか言えばいいんじゃないかな?」


 それを聞いて、なるほど覚えておきましょう。とか言ってる。本当に言葉選びが下手なだけなのか……。見た目とかのキャラ的にはあの言い方で合ってると思うけどね。


「では、決まったようなのでユリト君にアシストをお願いします。普通ですと薬草採取から受けることが多いですがどうなさいますか?」


「全員ゴブリンの討伐経験がありますので、近くにゴブリンが出る場所があるのですよね? 討伐依頼を受けたいと思うのだがいかがだろうか」


 騎士風の子で、えっとビアンカって呼ばれてたっけ? その子がそんなことを言い出した。てか全員ゴブリン退治経験ありだと? 人の事言えないけどどんな子達だよ!


「薬草の採取の仕方とか、使い方とかは知ってる?」


「知らなくてもいいのではないか? 戦える力があるならそれを伸ばすべきだと思う」


 こういうところは、新人ぽいといえばぽいかな? 冒険者は戦えればそれでいい訳じゃないからね。


「ビアンカ、あなたは何を言ってるのかしら? 戦う力だけあっても生き残れませんわよ。依頼の途中で食料がなくなった時に近くの野草が食べられるかどうか知っていれば飢えを満たせます。手持ちの回復手段がなくなった時に近くに薬草があり、知識があれば手当ができます。そういう生き残る知識や経験も大事ですのよ」


「全部言われたけどその通りだね。冒険者は危険な仕事だから常にいい状態で戦える訳じゃない。少しでもいい状態を維持する事、逆に悪い状態でも生き残る事を考えないといけないから、それも含めた薬草採取なんだよ」


 リンダって子は知識はあるみたいだ。俺は本当にいるのだろうかと思ってしまった。


「そうなのか……。私が浅慮だった。許してほしい。では、薬草採取でいいのだろうか?」


「俺はそれでいいと思うよ。ただ、俺はあくまでアシストだから最終決定権は君たちが持ってる。もちろん、無茶は止めるけど出来る事を無理に止めようとは思わないよ」


 本来であれば、アシストの人がポンポン決めてしまうのだが、彼らはそこらの新人なんかとは比べ物にならないくらいしっかりしてる。だったら俺がすることは最低限の事でもいいかなって思った。


「僕はいいと思う。薬草の特徴も知らないし、使い方も知っておいた方がいいと思うんだ。みんなはどう?」


「経験するのは必要な事です。反対する理由がありませんわ」


「僕もそれでいいよー」


 最後のニコニコしてる子もコクコク頷いてた。満場一致みたいだね。


「それじゃあまずは依頼書持ってこようか」


 本来なら1人で行けばいいんだろうけど、とりあえずということでみんなでゾロゾロと移動して、依頼書を掲示板からとってきて、処理してもらった。


「それでは行きましょうか。ユリトさん、よろしくお願いします」


 みんなによろしくお願いしますと挨拶されるけど、このまま行くわけにはいかない。


「よろしくね。ただ、このまま行くわけには行かないから少し時間をもらえるかな?」


「僕たちは準備できてますけど、ユリトさんは今頼まれたばかりだから準備が必要ということでしょうか?」


「俺の準備は問題ないよ。俺達の準備が整ってないからそれをまずしないとね」


 俺は少し黙って見ててみる。予想通りにどういうことだ? って悩んでる。この後の行動はどうするのかな? あんまり長い時間考えてたらさすがに俺から声かけるけどね。ソフィーはすぐにわからない事は聞いてきたな……。もう少し自分で考えるって事ちゃんと言った方がいいのかな……。


「私達もユリトさんも準備はできているのに、準備が整ってないというのはどういうことですか?」


 問いかけてきたのはビアンカだった。他の子を見ると頷いたりして同意してる。ただ1人を除いては、


「……そういえば、私たちは自己紹介すらしていないのではない?」


 気が付いたのはリンダだった。この一行の頭を使うのは完全にリンダみたいだね。みんな、あ。と気が付いたようだ。アーサーと俺が自己紹介したから俺の名前は知ってる。だからその辺り忘れてたんだと思う。


「そういう事。それも含めて、お互いの情報共有からしないとね。名前と簡単な役割分担。みんながこの町の狩場の事をどれくらい知ってるか、とかね。それに最低でも今日は一緒に行動するんだ。アーサー君もずっと丁寧に話してるのも大変だろうしね」


 そんな訳で休憩スペースに移動した。自己紹介と打ち合わせをしましょうか。


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