52 やってきたあの人は……
感想返しへの負担が予想以上の為、感想をいただいても返事ができません。
感想を書かれる時は、その事を理解の上でよろしくお願いします。
土の月、光の週、光の日
ソフィーの誕生日から2か月たった。あれからリボンはたまに使ってくれる。 髪型も色々試してるみたいだ。髪型いじると意見を聞かれるのはちょっと大変だけどね。
そして、錬金術の成長が止まらない。俺は8歳で初めてポーションを作って2年以上かけて今の状態にまで持って行った。ソフィーはすでにその一歩手前まで来ている。
今年中に抜かれるかもしれない? バカいうな。確実に抜かれる。ただ、俺は界石を作れるようになって初めてポーションプラスが作れるようになった。
ソフィーのポーションは十分に成長してきてるけど、錬金術が十分に成長してるかどうかはわからないのだ。 出来ればポーションプラスも作れるようになってほしい。
ソフィーが作ったポーションも長期保存できることはわかっているけど、回復量まで一緒かわからない。俺のポーションが基準になっている以上、その辺も調べてからじゃないと売れない。
出来ればポーションを売るよりも錬金術の成長を優先させてほしいけど、ここでは難しいかなって思う。まぁ売る売らないも、錬金術を優先するもしないも、ソフィー次第だしその時になったら考えればいい。今から考えたくなんてない。
ミュースさんはまだ来ない。さすがに心配になってきた。今頃何をしているんだろうか……。
オーク狩りを終えて俺は帰って来た。今日もお疲れ様とか思いながら帰ろうとした時に声をかけられた。
「すみません。 少しよろしいでしょうか?」
声をかけてきた方を見るとびっくりした。声をかけてきた少年にも驚いたし、そのまわりにもだ。そこにいたのは金髪碧眼のさわやかイケメン君と美少女4人だ。
「えっと俺に用事かな?」
「用事というか道を教えていただきたいんです。僕たちは新人冒険者なのですが、まずはこのナーリタの町で力をつけた方がいいと言われて送ってもらったんです。あなたは冒険者ですよね? よろしければ冒険者ギルドの場所を教えていただけませんか?」
俺は話はちゃんと聞いていたけど信じられない気持ちでいっぱいだった。彼が冒険者なのがおかしいとかそんな事は言わない。なんか彼のまわりはキラキラしてるように見えるのだ。いや、実際見えるわけじゃない。でも、見える気がする。これがさわやかイケメンの特殊能力だとでもいうのか!
しかも、挨拶がしっかりしてる。こんな子そうそういないぞ……。
「ギルドならこの道まっすぐ行って中央広場手前の右側だから迷う事はないと思うよ。この時間だと混んでるだろうから、そんなキレイな子達を連れて入るのはやめた方がいいと思うけれどね」
「それは女だからと舐められると言いたいのですか?」
内心の動揺を抑えながら場所を教えて忠告しただけなのに、ものすごい睨まれております! 三つ編みで赤い髪、しっかりと鎧を着こみ片手剣と盾を持った背の高い美人さんだ。恥ずかしがってる子もいるけど睨んでくる子の迫力がすごい。でも、やっぱり新人ぽくない。騎士見習いって感じに見える。
「舐めるなんて言ってないよ 冒険者は男の方が多いのは知ってるでしょ? だから、キレイな子を連れてると羨ましがるだけならまだしも、ちょっかい出してくるのがいるんだよ。わざわざ慣れてもいない場所で騒ぎを起こす必要はないでしょ?」
「……やはり舐められてる気がする」
「ビアンカ。この人は僕たちを心配してくれてるだけだって」
恥ずかしがって、僕もキレイなのかな。なんて言ってたショートで青い髪、どっちかといえば可愛い感じの小柄な子だ。シーフっぽいかな? 小柄でシーフか……。ミュースさんどうしてるかな……。
「そうだよビアンカ。親切で言ってくれてるんだからそんな怖い顔しないで、キレイな顔が台無しだよ」
「え、あ、その……申し訳ありません」
「いや、気にしないで」
さわやかイケメンすごいな! 一瞬でこの子の態度変えさせたよ! さりげなくキレイな顔がとか言ってるし、恐るべしイケメン。俺はがんばってキレイって言ってるのにさらりと言うんだもんなぁ。
「移動で疲れてるだろうし、今日はこのまま宿に行ったらどうかな? それで、明日はゆっくりして朝の混雑した時間を避けて行くのがいいと思うよ」
「ちょっかい出されないようにですの?」
今度話しかけてきた子はロングの茶髪、キレイで成長は普通って感じの子だ。 気が強そうかな?
「初めてきた場所だよ。まずは受付でギルドの事、町の事、依頼はどんなものがあるか、どんな魔物がいるか。そういう情報を集めるべきだよ。忙しい時間なんかに行ったらまわりの迷惑になるよ」
「確かに一理ありますわね」
新人冒険者が一理あると言えるとは……。情報の大切さを分かってるって事だね。なんというか新人らしくない新人冒険者の組み合わせだなぁ。
「それじゃあ、今日は宿をとってゆっくり休もうか。申し訳ないんですけれど、宿の場所は教えていただけますか?」
イケメン君から宿の質問をされたけど、そう来るのは予想通り。って事で教えてあげよう。
「何か所かあるけど、新人なら冒険者ギルドの横にある3件のどこかだね。ギルドの近くから、広い場所でみんなで雑魚寝の最安の宿。大体6人くらいで使う大部屋のみの宿。個室もあって普通の宿っぽい宿。だね」
「わかりやすい場所にあるんですね。ありがとうございます。あぁ、申し遅れました。僕の名前はアーサーです。またお世話になる事があるかもしれません。その時はよろしくお願いします」
「了解。俺はユリトだ。俺なんかより頼りになる人はいくらでもいるから、色々な人の話聞くといいと思うよ」
「はい、わかりました。それでは失礼しますね。みんな行こうか」
そう言ってイケメン君達は行った。こうやって離れていくのを見てると周りを客観的に見れるようになる。さっきから思ってたけどやっぱり視線がすごいな。男女共にすっごい見てる。あれだけの美少年と美少女が揃ってたらそうもなるかな……。その中に自分が混じって話をしていた。うわぁ……。平凡な俺が浮くわ。すっごい浮くわ。ちょっとへこみますよ。
ちなみに、もう1人銀髪のニコニコ美少女がいたのだが一切しゃべらなかった。ニコニコしてるだけで一切しゃべらない。案外これは怖いんだなと思った。本当に何考えてるのか、さっぱりわからないんだもの。
そして家に帰って来たんだけど、玄関横でどっしりと座ってる人がいた。普通なら通報です。知り合いだから許されるけど……知らない人が見たらやっぱり通報されるよね。
「お久しぶりです、オーランドさん。なんでそんな所に座ってるんですか? 不審者扱いで警備隊がきてもおかしくありませんよ?」
「おう、久しぶりだなユリト。教会に手紙届けて、お前の家の場所聞いて来たんだがな。メイドさんに追い出された。やっぱり女ってのは怖いな」
力の強い弱いではない何かがあって女性は怖いですよね。でも、今頷くと嫌な予感がするので、無視する。それにしても俺のお客さん追い出すってどういう事だろうね。
「それはなんというか、ごめんなさい。俺がいれば問題なくはいれると思いますから、いつまでも座ってないでください。でも、なんでオーランドさんが? ミュースさんが来るならまったくおかしくないんですけど……」
「あー、あのな……。先に言っておくとミュースは健康そのもの、ケガもない。何か不幸があった訳じゃない。ある意味不幸だとは思うけどな。だけど、こっちに……いや、動くに動けない状況になっちまってな。その関係で教会のアレックとかいう人に手紙を届けに来て、お前にも色々説明してやらなきゃなぁと思って来たんだよ」
「それどういう状況ですか?」
ミュースさん自身は無事だけど、状況のせいで動けない。まではわかるけど、それが関係してなんでアレックさんが出て来るんだ……?
「その辺の話は長くなるから中に入ってからでもいいか?」
「それはもちろんです。どうぞ」
俺はオーランドさんを伴って家に帰った。さて、いったい何があったんだろうね。




