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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
51/86

51 誕生日

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 光の月、光の週、光の日


 暴走の話をした次の日からソフィーの成長は目を見張るものがあった。それまでは、ギフト錬金術が使えるようになりたいと思ってここに来たけど、あっさり使えるようになってしまった。その為目標になるものがなく、上手くなろう程度のものだった。 でも、目標ができた。命を救うために高品質のポーションを作るという目標がだ。

 ポーションの質を高くするにはたくさん作る必要がある。たくさん作るためには魔力把握を覚えることが絶対だった訳だけど、3日で覚えて帰って来た。

 これは確認の儀もしてちゃんと確かめてアレックさんのお墨付きだ。

 

 それで作り始めたのだけど、俺としては泣きたくなるような状態だった。

 レベルが上なのは知っていた。だけどまさか、1本ずつしかまだ作れないとはいえ連続で16回ポーションを作れるとか思ってもみなかった。

 しかも、それで魔力が切れるのではなくて、これ以上魔力を消費すると体調に影響が出て来るかな? ってところで止めているのだ。

 いくら魔力を増やす装備をしているとはいえこの回数は多い。確実に魔力総量で俺は負けていた。かろうじて俺の魔力回復速度が速いのと先行していた分で師匠面できるけど、これだけ一気に大量の魔力を消費する事をしていれば、確実に魔力回復量上昇のスキルを手に入れる。

 俺はそう遠くない日に……。今のソフィーの成長を見てると今年中に追い抜かれていくかもしれない。

 だけど……だからこそ、瞑想や魔力吸収のスキルを覚えられるように俺の感覚を教えていく。 今なら師匠の言葉として素直に受け取ってくれるはずだから、悔しいし虚しいけどそんなものは心の奥に押し込めて教える。 それがみんなの為になると信じて……。 

 魔玉はソフィーでも使えるみたいなので使ってもらってる。更に成長が加速するかな?


 そしてアレックさんに頼んだ新しい人はまだ来ない。なんだかよくわからないけどものすごく苦労してるみたいだった。新しい人が来るのがいつになるのかさっぱりわからない。


 ミュースさんもあれから1か月くらいたつけどまだ来ない。護衛しながらだから時間がかかるのかもしれないし、こっちに来る移動手段の確保がしにくいのかもしれない。アレックさんは1か月で戻って来たけど、あれは自分用の馬車で最短時間で移動してるだろうし、比較にならない。まだしばらく待っていないといけないかな?





 そして今、俺は猛烈に悩んでいた。それは数日前の事、シーラが俺を呼び止めて、


「お嬢様の誕生日はどうなさいますか?」


 と聞いてきたのが始まりだった。そういえば最初の自己紹介で誕生日言ってた事を思い出したけど、どうなさいます? と聞かれるほどの事じゃないと思ってた。


「夕食を豪華にするくらいでいいんじゃないの?」


「お嬢様の12歳の誕生日なのですよ? プレゼントを用意したり、人を招待してのパーティなどするに決まっています」


「え? 決まってるの? そんな話聞いたことないけど……」


「常識だと思います」


 シーラがパーティするのが常識とか言い出した。そんな常識は知らない……。ってそうか、育ちが違えば常識も違うのか……。どうしたもんか……。


「シーラの常識がどこの常識かは聞かないけど、少なくてもこの町の人間に通用する常識じゃないよ?」


「……例えそうだとしても、パーティは開くべきかと」


「その資金は? 人は? 準備は? 俺は夕食を豪華にする程度しか考えてなかったから用意なんてしてないよ」


「……アレック様に頼めばなんとか」


「本気で言ってる?」


「……」


シーラが黙ってしまった。珍しく完全勝利です。ってそんな事はどうでもいいけど、さてどうしてものかな? シーラでさえこれならソフィーはソフィーで楽しみにしてる気がする。


「パーティって言っても誘う人ほとんどいないでしょ? だったら、アレックさんとかジュリさんに声かけてみんなで食事すればいいんじゃないかな? 準備はシーラ任せになると思うけど」


「お任せください。完璧に仕上げてみせます」


「それじゃ、お金は渡しておくからね。ただ、声はかけるけどアレックさんもジュリさんも来てくれるかどうかはわからないからね」


「わかりました。声かけはおまかせします。それと、ユリト様からも1つプレゼントの用意をお願いします」


「プレゼントねぇ……。考えておくよ」


 そんなことがあって、アレックさんとジュリさんに声をかけたけどジュリさんには断られた。アレックさんはいいよって言ってくれたんだけど、逆にアレックさんがいるからジュリさんは遠慮してしまったみたいだ。

 ついでに誕生日のプレゼントってどんなものがいいのか聞いてみた。


「誕生日は食事がいつもより豪華になるくらいって思ってるからどんなものがいいと言われてもちょっとわからないですね。お役に立てなくてごめんなさいね」


 ジュリさんの意見は俺と同じものだ。やっぱりそれが普通の意見ですよね。


「高価な物ならなんでも、という感じだったかな? ソフィアならユリト君が選べばなんでも喜んでくれるよ」


 まったく参考にならない意見をくれたアレックさん。どんなものを贈ればいいのかの指針がほしかったのに……。





 そんな訳で当日になっても悩んでいるのだった。だって、プレゼントなんてエレナさんにしたことがあるくらいだし、それだってこれがいい? あれがいい? ってやった結果だった訳で1人だとさっぱりわからない。

 アクセサリーならと思ってシーラにちょっと聞いてみたけど、やめてください。と止められた。

 理由を聞けば、信じられない事に今つけてるアクセサリーはほとんど魔力を増やす効果があり、効果の上書きがされない最上の組み合わせなのだという。普通のアクセサリーなら別に問題ないと思ったけど、今のアクセサリーをもらってから普通のアクセサリーは一切つけなくなったそうだ。

 だからといって、決めない訳にはいかない。候補はあるけど本当にこれでいいのかどうかまったくわからない。でも、もう時間もない。こ、これにしよう。


 散々迷ってギリギリになりながら、アレックさんを迎えに行った。さすがに町中だけの移動なら歩いて移動する。その事を聞いたソフィーとシーラは驚いてたけどね。 


「それでは、ソフィアの誕生日を祝って乾杯」


 アレックさんが音頭をとって乾杯をして、おめでとうと声をかける。用意されてる食べ物もいつもよりも種類も多いし見た目だけで豪華なのが分かる。分かるけどこれ張り切り過ぎじゃないだろうか? とても4人で食べきれる量には見えないのだけど……。

 アレックさんはシーラに料理の腕もなかなかのものだね。とか褒めてた。美味しいけど……美味しいけどやっぱり量が……。 


「さて、私はあまり遅くなるのもよくないのでね。 帰らせてもらうよ。 それとこれをソフィアに渡しておこう」


 まだまだ残ってるけど、料理を一通り味を見たアレックさんはもう帰るみたいだ。もっと食べて減らしていってほしいのだけど……。そんなアレックさんが取り出したのは杖だった。


「ソフィアが錬金術に熱心なのは知っているけどね。光属性の魔法使いでもあるし、魔法使いとしての杖も1本持っておくべきだと思ってね」


「は、はい! ありがとうございます!」


「ア、アレックさん。 なんかその杖から妙な感覚があるんですけど……」


 ソフィーに渡された杖……。正確に言うならその杖に使われてる魔石からなにか感じる。今までこんなものは見た事がなかった。


「ユリト君は質のいい魔石を見たのは初めてかな? まぁ、それなりに良い物だと思ってくれればいいよ」


「ありがとうございます!」


 なんか、ものすっごい高い気がする。これの後で渡す物がこれか? なんかすっごい嫌だ……。


「それでは帰ろうと思うけど、ユリト君がどんな物を選んだか興味があるね。良ければ今ソフィアに渡してくれないかな」


「早く帰らないといけないんじゃないんですか?」


「遅くなるのが良くないだけだよ。遅くならないように手早く渡してほしいな」


 アレックさんが楽しんでる! 俺の様子で楽しむ気満々だ! うぅ……、あんな高い物の後にこれってどうなのさ。渡す物の種類の中では高い物だったけどそれでも元が元だからな……。


「えーっと、ソフィー。アレックさんの後だからあれだけど許してほしい」


 俺は今日買ってきた物をソフィーに渡した。正直、反応を見るのが怖い。怖すぎる。


「これ……リボンです?」


 そう、俺が選んだのはリボンだ。ソフィーはいつも頭の後ろに大きなリボンをつけていて、アクセサリーの中では唯一色々交換してるものだ。ただ、同じようなものだとあまりにも安直ではないかと思い、細いリボンを2本用意してみた。


「いつも後ろに大きいリボンだから、横にリボンつけるような髪型もいいんじゃないかなって思って買ってみたんだけど……」


 もう、自信がないため最後の方はだんだん声が小さくなってしまった。だってまったくわからないんだもの……。


「お師匠様! ありがとうございます! 明日はこっちをつけてみますね」


 嬉しそうにしてくれたので良しとしよう! 本当はどう思ってるとか考えちゃダメだ! シーラから視線を感じるけど見たくもない!


「なるほど、まずは高い物と考える我々とは違うね。楽しませてもらったよ。それではね。あぁ、見送りはいらないよ」


 そう言われても、見送りは必要だと思い立とうとしたらまた止められたのでシーラだけ見送りに行った。この状況で2人だけになるのはちょっと何を話していいのかわからない。


「お師匠様はこっちの方が好きです?」


 そう言って俺が渡したリボンを見せた。好き嫌いとかじゃなくて、色々変えてみるのも楽しいんじゃないかなって思っただけなんだけどね。


「ほら、ソフィーはアクセサリー変えないだろ? だったら、少し髪型を変えたりするのもいいんじゃないかなぁって思ってそれにしたんだよ」


「そうなんですか……。 気に入った髪型があったら教えてくださいです」


「え? あ、うん。 わかった」


 なんだろう? なんか妙な感じがした。何年か前にもこんな感じを感じた事があった気がする。何の時だ? 思い出せない……。


 なんだかんだで、ソフィーも満足したみたいだし、この誕生日も成功したって事だと思う。

 ちなみにあの大量の料理はソフィーとシーラが2人で食べきった。あの量であれば自分たちで食べきれる自信があった量なんですね。納得しました。



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