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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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48 不穏な気配……なのかなぁ?

 家に帰ってから、ソフィーとシーラにはどう伝えていいのかまったくわからなかったのでありのまま伝えることにした。


 俺に大分前から好意を持ってる冒険者の女性が、パーティーが解散するのに伴って一緒に暮らしたいと言うので了解した。


 伝えた内容としてはこんな感じだ。 ソフィーはなにやらびっくりして、シーラからはすっごい睨まれた。 けっきょく一時保留のアレックさんの判断を仰ぐとシーラが決定した。 俺に拒否権はなかった。

 で、後日アレックさんに判断を仰ぐと、許可がおりた。 むしろ、この町としても助かるし、ソフィーの身の回りの警護の意味でも助かるとの事だった。 

 シーラが1番気にしてた身元についてはまったく問題なかった。 むしろ、前から俺に近づく人物ということで調査してあったらしい。 何気に俺、重要人物ですね。 なんて冗談を言ったつもりが、重要人物だからちゃんと理解しておくように。 とか釘を刺された。 

 そんなこんなで受け入れ準備はできたもののいつ来るかはさっぱりわからないので、今まで通りの生活をしながら待つことになった。





 今凝ってやってることは2つある。 その1つがプロテクションの使い道だ。 

 正直、これが防御魔法とは考えたくない強度だった。 マジックアローもそうだけど、魔力を多く込めると効果が高くなる。 だからプロテクションも多く魔力を込めてみたんだけど、通常発動と同じ面積だと強度の変化がほとんど見られないくらいだった。

 

 アレックさんに殴ってもらった手のひらくらいの面積だと確かに硬くなった。 なったけど、俺が壊す気で殴れば普通に割れた。 魔力を込めても、パリーンがピキピキピキ、パリーンとなる程度の強度しかなかった。 


 硬くじゃなくて、柔らかく受け止めるとか考えたけどそれはできなかった。 大きさを変えたり、設置場所はいじれるんだけどね……。 形は四角ならなんでもいいみたいだった。 

 これを防御としてソフィーに教えたのはたぶん多少とはいえ身を守る手段があるという安心感を与えるためだったと思う。 それ以外の理由で教えるにはあまりにも強度不足だったよ。


「もっとも小さくして指2本分の程度の面積、強度は微妙。 さてこれを使うにはどうすればいいのか?」


 そんな訳で、実験台はオークさんです。 俺は学んだのだ。 ゴブリンじゃ実験台にならないと! だってまさか小石みたいに設置したひし形プロテクションを踏んずけて痛さで飛び上がり、隣のゴブリンに飛びかかられたと勘違いして殴り殺されるとか想像できなかったよ。 ちなみにオークはやってみたけど、普通に踏み潰して終わりだった。


 まず思いついたのが、枚数を重ねる事。 ただこれは思いついただけで実行はしてない。 だって、結果の予想は簡単につくし、1枚でマジックアロー1本と同じ消費するものを使いたくない。 そして何より、重ねたところでおそらくオークの攻撃の場合、避けるための時間稼ぎ程度にしかならない気がする。 そもそも俺の戦闘の仕方と合わないので却下。


 なら、どう使うのか。 俺の答えは展開する場所はある程度自由が効くから罠というか不意打ちに使う方法だ。 俺の場合展開できるのが半径10mほどの広さがある。 だから、移動中のオークの足元に小さく展開してみると、


「ブホ!?」


 思いっきり転んだ。 いくら力の強いオークとはいえ、ただ歩いてるだけならプロテクションが壊れる事はないだろうと思ってのことだったのだが壊れた。 壊れたけど結果はなんとか出してくれたって感じだ。 

 そして、転んだオークの背中に腕1本分くらいの面積のプロテクションを配置してみると、


「ブホ? ブブホーー!」


 いくらプロテクションの強度が低いとはいえ、ある程度の抑えにはなるみたいだ。 しかし、背骨を抑えるように展開してたので体を左右には動かせるみたいだ。 


 そのせいで抑えが効かなくなって割れた。 抑え込むには2枚を十字に展開しないとダメっぽいかな? ただし、魔力消費量には目をつぶらないといけないけどね。 

 あまり使いたくはないけど対人戦想定のものだ。 まぁ匍匐前進なら簡単に逃げられるから本当に一時凌ぎしかできないだろうけどね。

 こんな目にあったオークは警戒心バリバリで周りを見回している。 しかし、それでは俺を見つけることはできないのだ。 理由は簡単で木の上にいるのだ。 


 さてとどめを刺そうかな? なんて考えてたらオークが走って逃げ出した。 予想外の行動だったけど反射的にマジックアローを叩き込み、追撃の1撃を入れて倒した。


「反射的に倒すって、どんだけだよ……」


 普通は、普段とらないような行動に戸惑ったり、びっくりしたりして固まる場面だと思うんだけど、自然と倒す方を選ぶとか……それだけオークを倒してきたって事かな? 

 それにしても、今の行動が気になる。 今までなら、警戒してなにもないと安心したように行動を再開するだけだったのに今のは逃げた。 あの個体が特別なのか? それともオーク自体がそうなのか? 確認する必要があるね。


 数匹のオークで試した結果、オークの行動自体が少し変わってるみたいだ。 プロテクションの押さえつけをして警戒心を煽ると大抵が逃げる事を選択した。 

 ただ、これは未知の攻撃だったからかも? と思い、わざとオークが逃げらえる程度のダメージを与えて、魔力切れっぽい演技をしたら、それでも逃げ出した。 

 普通ならいくらダメージがあるとはいえ、獲物を見逃すようなマネはしない。 それなのに自分の生存の確立を上げる方法を選んだ。 これはギルドに報告しないといけないね。 下手すればこれが暴走の兆候の可能性も否定できないんだからね。


 プロテクションの使い方の練習をしてたら、なにやらきな臭くなってきたけど、難しい判断は上の人がすればいいと思う。 

 まだ、攻撃を止めるんじゃなくて振り上げる腕を邪魔してみるとか、攻撃のとっかかりを邪魔するとかやってみたいとは思ってたけど、オークの行動の検証でだいぶ魔力使ったし、また今度だね。 





 町に帰って来た俺は、普段ならこのまま家に帰るのだけど冒険者ギルドへ向かった。 こういう報告は早くしておかないと何が起こるかわかったものじゃないのだ。 

 ただ、この時間は忙しいのでのんびり話してる暇はないので簡単に報告して、明日詳細にってことになると思う。 


 それでエレナさんの列に並んだわけだけど長い……。 他の列よりも長いし、進みも遅い。 毎日のようにこの時間に来る冒険者は大変だね……。

 俺は大人しく列が進むのを待つ。 たとえ、後から入って来た人が別の列に並び、帰って行ったとしても待つ。 帰りたくなってきたよ……。


「ユリト君がこの時間に来るのは珍しいわね」


「大人気のエレナさんの所に並ぶのはやっぱりきつかったので、次回からこの時間に来た時は別の人への報告も許可してほしいです」


「却下」


 満面の笑みで却下された。 俺としてはため息しかでないが、周りはエレナさんの笑顔に魅了されてため息ついてた。 あ、ファンクラブの人が親指立ててる。 あなたたちにとってはご褒美ですよね!


「わかりました。 なるべく来ないようにします。 で、換金は明日でいいので報告だけして帰ります。 オークの行動が変わってます。 警戒心煽ってみても、ダメージ与えてから魔力切れの演技しても、逃げ出しました。 オークが生存優先で行動してるように見えました」


 その言葉に、ランクの高い人たちが反応した。 この行動の意味を知ってるって事かな?


「わかりました。 緊急性は高くない情報ですが、重要な情報提供ありがとうございます。 明日、サブマスターと面会してもらう事になりますので必ず来てください。 時間はいつもくらいで大丈夫ですか?」


 完全に受付嬢モードの対応にエレナさんが入ったってことは、やっぱり暴走の前兆になるのかもしれない。


「わかりました。 明日必ず来ます。 それではまた明日」


「お疲れさまでした」


 報告が終わり家に帰って来て、部屋に入った。 オークの行動検証もあって、魔力を使いすぎた。 魔力切れを起こすような使い方じゃないけど、夜のポーション分の魔力確保が微妙なところなので瞑想をして魔力の回復に努める。 

 ただ、どうしても暴走の事が頭をよぎるため集中しきれないので、もう1つ凝ってる事をやろうと思う。 それは知恵の輪だ。 俺の部屋には、色々な形の物がたくさん置いてある。 

 錬金術で作っても魔力消費はそこそこだし、作るたびに形が違う。 それで作り過ぎた物を1つ1つ解いてる最中だ。 

 こうガチャガチャやりながら解くのは楽しいし、苦労して解くとなんかうれしいのである。 

 作り過ぎたと言ったがどれくらいかといえば、最初に買った鉄のインゴットはすでに使い切り、追加で買ってきてしまった。 数は30過ぎた辺りから数えるのがめんどくさくなって数えてない。 


 ただ、もしオークの行動が暴走の前触れだとしたら、ポーションやポーションプラスの増産も考えなきゃいけない。 ゴブリンの上位種がでた暴走でもあれだけの被害になったんだから、オークだとそれ以上になる可能性がある。 

 明日話を聞いて色々考えなきゃね。

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