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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
45/86

45 その道具の使い方

「ただいまー」


「ただいま帰りましたです」


「おかえりなさいませ」


 やっぱり出迎えてくれた。 きっと気配察知とか使えるに違いない。 そうじゃなきゃ説明がつかないよ!


「シーラお昼の支度ってどうなってる? その辺なにも言わずに出ちゃったから、いざとなれば外で食べて来るけど」


「用意してあります。 クロノボックスもありますから問題ありません」


「クロノボックス?」


 聞いた事のない名前が出てきた。 いや、そもそもそんなものが家にあったのか? それとも持って来たのだろうか? 


「キッチンにありましたが、気づいておられなかったのですか?」


「そもそもクロノボックスってのが何か知らないんだけど……」


「なるほど。 それでは、説明させていただきます。 クロノボックスとは、中に入れた物の時間を止めて入れたままの状態を維持する魔道具です。 ただ大型化するのは難しいらしく、大きくても1mほどの高さだそうです。 この家に備え付けられていた物は50cmほどの物なのでよくある大きさになります」


「そんな話聞いたことなかったよ……」


「色々と制限のあるものですので利用箇所が限られますし、基本高価なものですから知らないのも無理はないと思います」


 それにしたって、貸し出す時にそれの説明があってもいいと思うんだけどなぁ。 入れた物をそのままの状態で保存できるって便利だし。 でもそれなら制限の1つや2つくらいあるよね。 あれ? でもこれ使えばポーションの長期保存が可能なんじゃ? いや、制限にひっかかるのかな?


「ポーションなんかには使えないの?」


「ある程度の魔力を持っている物を入れると変質してしまうそうです。 そのため、ポーションなどは入れるとすべてダメになるそうですよ。 ちなみに生き物が入っていますと、ねずみほどの大きさがあれば効果が発揮されず、小さい生き物は扉を閉めるとすぐに死んでしまうそうです」


「なるほどね……。 ちなみに買うとしたらいくらかわかる」


「この家にあるタイプと同じ物ですと……金貨200枚くらいはかかるかと」


「それは無理だ」


 錬金術用の傷む素材入れにどうかな? って思ったけども高い! 高すぎるよ!


「それに、作れる方が限られておりますので王都からの輸送になります。 そうなりますとさらに費用はかかりますし、下手をすれば支払うだけ支払って途中で奪われるなどでお金だけ消費される事になります」


「補てんなしなの!?」


「ありませんね」


 うん、絶対無理だ。 諦めよう。 そうしよう。 ギフト錬金術様、えいや! で作れませんか? 自分で振って無茶ぶりだと思ったよ。 


「お師匠様、お師匠様」


「どうかした?」


「お昼を早く食べたいです!」


「え? ソフィーはそんなにお腹すいたの? 遅い朝食で買い食いもしたのに?」


「どれも軽めでしたから、ちゃんと食べたいです!」


「では、ダイニングルームへどうぞ、用意します」


「俺は買ってきたものを、錬金部屋に置いてくるよ。 ソフィーは剣どうするの?」


「護身用ですし、持ち歩くです」


「そ、そうなんだ。 それじゃ、先に行ってて」


 ソフィーは、はいです! と元気よく答えてシーラの後についていった。 本当に軽い食事だったのか、それとも実はハラペコお嬢様なのか……俺にはまだ判断がつかない。 

 そして、剣は常に持ち歩くと言う事だろうか? どんな家のお嬢様だよ! てか本当に護身程度の剣の腕なのかすら怪しい。 

 ……俺は考えるのに疲れたので、荷物を置きに錬金部屋に行き、その後おいしくお昼をいただきました。


 食べ終わった後はまた夕食までの時間外で色々な物を見てきた。 今回は特定の物を買う訳でなかったので、ソフィーの興味の引くままあっちこっち見て回った。 正直すごい疲れた。 ちゃんと見ていないとどこかにすぐ行ってしまうし、いつの間にか商品持ってこれがほしいとか言い出すし、本当に疲れた。 ちなみにいくつかの食べ物以外はすべて購入は却下した。 





 夜、ソフィーのポーションが作り終わった。 錬金術に関してはたぶんこれといって教えることがないと思う。 だから、今からやるのは違う知識になる。


「それじゃ、ポーション作り終わったから錬金講座番外編を始めます」


「番外編ってもう本編はないです?」


「今のところ、俺の知識じゃ教える事ほとんどないからね。 後はお互いに手さぐりでやっていくしかないよ。 さて、それじゃ今回話すのは魔力水についてだね」


「どうして普通の水じゃダメなんです?」


「それは、ギフトじゃなくて学問の方になるんだけどね。 魔力水の魔力で薬草の力を引き出して擬似的に回復魔法を使ってる感じなんだよ。 だから、魔力水じゃないとダメな訳だね。 薬なら水と薬草ともう1つ入れて傷薬になるけど、錬金術じゃ傷薬は作れないし、作る必要もないからね」


「ポーションと傷薬って何が違うです?」


「え……あ、うん。 ポーションはすぐにその傷が回復して、傷薬は自然回復を助けるものだから、傷に塗っておくんだよ。 ポーションみたいに効果が落ちたりもしないしね」


 ちょっと驚いてしまった。 ポーションと傷薬の違いくらいなら子供でも知ってると思っていた。 俺が薬屋の息子だから知ってただけなんだろうか? それともお嬢様と庶民の差か……。 わからんなぁ。


「塗るんです? びちゃびちゃになってしまわないです?」


「え……傷薬をもしかして見た事ないの?」


「はい、ちょっとのケガなら自分で魔法使ってしまうです」


 ソフィーってそういえば光魔法持ってるから自分で治療可能だったか……。 道理で全然知らない訳だ……。


「ポーションみたいな液体じゃないんだよ。 傷薬は……なんていえばいいんだろ? 粘り? とろみ? まぁそういうのがあるからね」


「なるほどです。 でも、なんで傷薬は効果が落ちないんです?」


「ポーションの効果が落ちる理由は魔力が抜けてしまうからだよ。 魔力が抜けると薬草の効能もなぜか抜けちゃうから、まったく役に立たない物になってしまうわけだね。 その点傷薬は、最初から魔力がないから効果はいつまでも続くわけだ。 ……ただ、環境によってはかびたり腐ったりするけどね」


「お師匠様は色々な事知ってるですね!」


「いや、薬に関係する事くらいだよ。 でも、最近はポーションばっかりだから解毒とか薬関係の技術の腕は落ちてるよなぁ……」


 それでなくても冒険者までやってた訳で、実家にいる時はたまに練習してたけどこっちじゃまったくできないしなぁ。 材料も機材もないし……。


「まぁいいや、それじゃまずは、魔石の入った袋から伸びたひもは外側にかけておく。 そうすれば、取り出す時わざわざ水に手を入れなくていいからね。 で、水をためる。 大体8から9割の間くらいね。 多すぎると何かの拍子にこぼすからね」


「はいです!」


 それで、俺とソフィーは一緒に樽へと水をためる。 そういえば、ウォーター使うのにも魔力使うけどいいのだろうか? まぁ、元々の使用魔力量が少ないしいっか。


「それじゃ、こんなもんだね。 お疲れ様」


「お疲れ様です! この後は何をするんです?」


「ソフィーは特にやる事ないから休んでいいよ。 俺はポーションとか鉄のインゴット眺めたりするけどね」


「見学しちゃダメです?」


「明日に差しさわりないくらいまでならいいよ。 特にこれといってないけどね」


「あのきれいな錬金術みたいです!」


 俺にとっては見慣れたものでも、ソフィーにとってはってことだね。 そんな風に思いながら、ポーション用の素材と鉄のインゴット用意して、どうせならと先に鉄のインゴットの方をやってしまおうと思う。


「そっちからやるです?」


「まあね。 それじゃ……錬金開始」


 パッと散った花弁の中にはさっきより短くなった鉄のインゴットとなんだかよくわからないものが存在していた。


「お師匠様。 これなんです?」


「なんだろうねぇ……」


 馬蹄の形をした鉄の両端がとても小さな輪で繋がっていた。 その間に馬蹄の幅よりも小さい輪が通っていた。 とりあえずガチャガチャ動かしてみる……。


「これ……この輪っかをはずせばいいのかな?」


「でもこれ、はずれるんです? そもそもなんではずすんです?」


「いや、さっぱりわからん。 とりあえずポーション作っちゃうからソフィー持ってて」


「あ、はいです」


 俺はさっきの物をソフィーに渡して、ポーションを作ってしまう事にした。 ソフィーはガチャガチャやりながら、はずれるです? ひっかかるです。 とかいいながらやってる。 遊んでるのはいいんだけど、俺作っちゃうよ?


「錬金開始」


 ポンポンと俺がポーション作り終わってもソフィーはまだガチャガチャやってた。


「ソフィー終わったぞ」


「え!? 見損ねたです……」


「まぁまだまだ機会はいくらでもあるからね。 じゃあそれ返してもらってもいいかな?」


「はいです。 でも、これはずれないですよ?」


「そうみたいだね」


 俺も輪っかをガチャガチャ動かしたり、馬蹄を折りたたんでみたり色々してから、ふと思い浮かんだとおりに動かして見ると、


「うん……はずれたね。 輪っか」


「はずれましたね。 お師匠様」


 見事に輪っかがはずれた。 あぁなるほど、確かにこれは知恵の輪な訳だ。 ……知恵の輪? これの名前かな? よくわからないし、そうしておこう。 しかしなんでこんなものが錬金術の製作物なんだろうね? そんな事を考えながら、カチャカチャっと輪っかを元の位置に戻した。


「これの名前は知恵の輪らしい。 明日アレックさんに提出しないとね」


「知恵の輪って言うです? よくわからないものです……。 こんな物もアレック様に見せるのです?」


「アレックさんなら何か知ってるかなぁって思ってね。 とりあえず、もう1個作っておこうかな。 錬金開始」


 出来たには出来たのだけど、なんか形が違う……。 でもこれも知恵の輪らしいし……用途は一緒かな?


「お師匠様、なんか形が違うです」


「確かに違うねぇ……。 でも用途は一緒みたいだしね。」


 俺はカチャカチャガチャガチャやりながら、それも外して元に戻した。 明日の話は長引きそうだなぁ。

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